表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

131/278

JAD-130「はじける欲望」


 驚くほどの純度で鉱石が掘れるという場所。

 狂騒曲のような現場には、理由があった。


 それは、おそらく遥か昔にここで座礁したか逃げ込んだかした、超大型輸送船。

 脱出することなく、そのまま眠りについた巨人、その巨体だったのだ。


 見つかったものは、コンテナとして積み込まれていたであろう資材たち。

 だから、不自然なほどに掘れるものが偏っていた。

 まるで、巨人のはらわたのよう。


(そんな船なら、護衛の1つや2つ、あるわよねっ!)


「新規反応多数! 罠ですか!?」


「罠ってほどじゃ……ないわねっ!」


 一度飛び上がり、斜めに滑り降りるように現場へ。

 ちょうど船だとしたら中央付近、どの方面にもすぐに出られるような距離。


 そんな場所にあった区画に、彼らは眠っていたのだ。


「避けなさいっ!」


 何が起きたかわからず、茫然としたままの重機。

 つかみ取るようにして移動させれば、そのあとに着弾する脅威。


 巣穴を掘りあてたかのように、何かがはい出てくる。

 長い間眠っていたであろう、船の護衛戦力だ。


「これまで出番はなかったみたいですね。元気満タンな様子です」


「でしょうねっ! アンタらっ! ぼうっとしてないで撃つか逃げる!」


 周囲に無線で叫び、まずは近くにいる相手に一撃。

 少なくとも、車程度なら吹き飛びそうな攻撃が吸い込まれ……受け止めたっ!?


 慌てつつも、場所を移動しながらさらに連射。

 しかし、あたりはするが相手は壊れない。


「解析!」


「やってます! 衝撃は通ってる……この反応、吸収してます! 軽減か無効化かは別にして!」


 (吸収、吸収か……厄介ね)


 理屈としては知っているし、記憶では遭遇したこともある。

 ある意味、手品みたいな技術だ。


 石の力、星の力を使って生み出したものは消えない。

 正確には、火であれば燃えた結果はなくならないし、燃える原因さえあれば燃え続ける。

 石の力は燃料だと思えばいい。


 であれば、その燃料を奪ってしまうとどうなるか?


「炎は消え、土は崩れ、雷は霧散する……なるほど」


「感心してる場合です? 結構激しいですけど」


 カタリナの言うように、巣穴という名のコンテナから復活してきた相手は、暴れている。

 周囲にひたすらに銃弾を放っているわけで……けが人は出てるな、うん。


 おそらく、動かしているAIあたりが、周囲を異常事態と判断、脅威の排除にかかってるんだろう。

 その激しい攻撃に、ろくに反撃できていない。


「どうもこうも、やるしかないわね」


 無限に吸収できるとも思えず、ひとまず岩陰からどんどんと撃ち込み……うん、揺れてはいる。

 無人機だろう、下半身はいわゆる戦車のようで、上は武装交換用にか人型。

 そんな昔に見た覚えのある機体が10はいるし、奥にもまだいそうだ。


「衝撃は伝わってるみたいだから、そっちの方面でって……避難状況は?」


「そそくさと逃げてるのがほとんどですよ。器用なもんです」


 儲け話に敏感であるからには、撤退も早くないと生き残れない。

 そんな現状を目の当たりにする。


 とはいえ、好都合だ。


「実体弾に切り替え!」


「うう、また赤字ですよ」


 あとから力を補充できる石の力と違い、火薬利用の実体弾は消耗品だ。

 当然、撃てば撃つだけ費用がかさむ。


「ま、ほかで稼ぎましょ。これで、どうだ!」


 文明崩壊前後、多くの技術は石、星の力が前提となっていた。

 エコであり、クリーンエネルギーであり、永久機関に近いとさえ思われた力。


 それは兵器にも影響を大きく与えており、その結果が石の力によるエネルギー弾だ。

 となれば、それに対抗する手段が産まれ……それが目の前にある。


「つまり、実体弾の出番は少なかったってことよね」


 つぶやきの先で、間接部位に直撃を受けた相手が、姿勢を崩すのが見える。

 周囲にも呼びかけ、一転して実体弾による蹂躙が始まった。


 これには理由があり、とても簡単なことだ。

 石の力が便利であるほど、世の中はそれに置き換わっていく。


 つまり、実体弾は一時期大きくすたれたのだ。

 コスト的にも、運用面でも、勝てなかった。

 その結果が、これだ。


 コンテナらしき場所から、何も出てこなくなったのはそれから1時間近く経過してからであった。


「欲望が湧き出てきて、はじけたって感じね。さて、探りますか」


「こっちも欲望まみれですよね。いや、いいんですけど」


 微妙な表情のカタリナに笑いつつ、機体を潜り込ませる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ