JAD-127「町への帰還、新たな気配」
「手紙と録音メディアがこれ、と。両方ある意味は?」
「細かい数値なんかは、音声より記録になってるほうがいいだろうからな」
数日をのんびりと過ごし、ついでに開拓周りを手伝った私たち。
思ったよりも早く、町からの援軍が到着した。
どうやら、第二陣という形で後追いしてきた集団らしい。
途中で町に戻る報告人員と出会い、速度を上げて、ということのようだ。
そして私は、町への報告とデータの輸送を頼まれる。
「なるほどね。実入りのある依頼だったわ」
「それはよかった。では頼む」
すでに知り合いになった何人かとあいさつを交わし、機体へ。
視線を感じつつ、トラックの荷台へと乗り込み、出発だ。
行き来のために作られた道を、できるだけの高速で疾走。
多少の振動やらは、石の力を使って軽減だ。
『レーテ、何してます?』
「ん? 前に手に入れた重力軽減のシートで荷物を浮かせて、荷台をつかんだ状態で浮いてるわ」
『……道理で。曲がるときは合図しますよ』
了解、と小さく答え、制御に集中する。
これも訓練といえば訓練。
自分の機体や武装以外の物に力を注ぎ、さらに機体の制御も行う。
目覚めた直後の私なら、たぶん無理だっただろうことだ。
でも、似たようなことは記憶の中のゲームで、やっている。
例えば、備え付けの砲台をJAMで操作し、発射するというのが近い。
JAMサイズの乗り物なんてのもあったし。
(やっぱり、教育用の何かだったのかしらね)
今思えば、このゲームプレイヤーだった記憶もどこまで本当か。
最初から私は私で、戦闘経験等を危険なく学習させるためのプログラム。
そう考えた方がしっくりくるのだけど、証拠はもうない。
『10秒後に右に曲がりますよ』
「っと、了解」
考え事をしていて、危うく事故を起こすところだった。
荷台ごとドリフトするトラックなんて危なくてしかたないわよね。
力の強さを切り替え、車体の進む方向へと修正。
滑るように曲がっていき、通常ならありえない速度だ。
『なんだか癖になりそうな走りです』
「あははは。運び屋をやるときにはいいかもね」
その後も何回かそういったことを繰り返し、走り続ける。
途中、野営は挟みつつ、行きの三分の一程度の時間で走り抜けた計算になる。
「見えた……」
建物に、妙に安心する自分がいる。
人の気配、痕跡を気にするところがあるんだろうか?
自分のことながら、よくわからない部分だ。
『無線で声をかけて、前の宿に行きますか?』
「ええ、そうね。そこで降りて、報告に行きましょ」
前に泊まっていた宿へと乗りつけ、まずは部屋を確保。
そうして、仕事をもらった場所へ報告へと向かうと……少しあわただしい。
「活気ある場所でしたけど、なんだか騒がしいですね」
「ええ、そうね。襲撃でもあったのかしら」
何の、とは言わずに、そんなことを口にした。
気にならないといえばウソだが、まずは報告。
カウンターに向かい、預かり物を告げる。
「わざわざありがとうございます。なるほど、食料以外は受け入れに問題なし、と」
「そうね。肉だけなら、狩りでもなんとかなりそうだけど」
そんなこんなで、一通りの報告を終えたところで、まだ騒がしい後ろをちらり。
普段、色んな人を相手にしてるだろう受付だからか、それだけで察したようだ。
「新しく有望な鉱床が見つかったらしいですよ。なんでも、鉄系がほぼインゴットに近い品質で出るとか。他にも色んな鉱石が色々と」
「それ、過去の備蓄倉庫が見つかったとかじゃないの?」
「だとしたら、保管能力がおかしいですよ。さすがに錆びて朽ち果ててます」
普通なら、と続く言葉に頷きを返す。
確かに、普通に考えたらその可能性が高いのだ。
となると、前に見つけた倉庫のような場所がここにもあったということだろうか?
礼を告げて、カタリナと外に出る。
向かう先は、リンダか関係者がいるだろう酒場だ。
「まだ少し、ここでやることがあるみたいね」
「レーテが首を突っ込みたいだけでは?」
鋭い突っ込みに呻きつつ、しばらくぶりの酒場に顔を出すのだった。




