JAD-126「区切りの時間」
「助かった。数だけはいそうだからな。飛びこまれたら歩兵が危ないところだ」
「確かに、あの大きさは厄介よね……で、心当たりはある?」
数が多く、大きいといっても結局は獣かミュータント。
鋼の弾丸、そしてJAMの放つエネルギー弾の前には沈黙するしかない。
周囲の警戒を続ける面々を見ながら、話し合いの始まりだ。
「ある程度予想はしていたんだがな、死骸を埋めずに流して処理したのだ」
「ああー……なるほど」
「縄張り争いしていたんですかね……」
本当は、焼くなり処理をしたり、深い場所に埋めるのが正しい。
ところが、まだまだ環境が整っていない現状では流すのが楽だったわけだ。
結果、下流に逃げていたか追いやられていた大蛇たちに伝わり……と。
オオトカゲも、こちらの人数が減ったことを察したんだろう。
「生産はどんどん続いてるから、補充は大丈夫だ。来るとわかっていれば、なんとかな」
「いくつかは捌いたら、手伝うわ。薪を燃やすのももったいないでしょ」
川で倒した相手はそのまま流れてしまったが、地上にいた分は残っている。
すまなそうにする相手に手を振りながら、機体へ乗り込み……いい気分ではないが、作業開始。
「握りつぶさないようにっていう訓練にはいいのよね」
「あまりやりたくないことではありますね」
ピクリとも動かない、大蛇とオオトカゲだったものを集める。
ほかのJAMも同様に、開けた場所にどんどんと、だ。
一通り集まったところで……。
「サブをルビーにチェンジ」
「了解。どのぐらい燃やします?」
「んー、早い方が良いでしょ。一気に行くわ」
周囲に燃やすことを告げ、ライフルをまっすぐ構え……トリガー。
火炎放射器とは違う、独特の赤い光が注ぎ、あっという間に燃え出す。
威力よりも範囲を、として調整したので山がどんどんと赤くなっていく。
「人に向けるようなことがないといいのだけど」
『おいおい、物騒なことを言うなよ。もっとも、戦いとなれば避けられないが』
通信が入ったままで聞かれたことに気が付き、自嘲気味に笑みが浮かぶのがわかる。
何人も、なんだかんだと手にかけていて、今さらといえば今さらか。
「それもそうね。そういえば、肉は食べられそうなの?」
『確認してるが、まあまあだな。ないよりはまし、か。食いきれないというのが正しい』
「大きいですものね、どちらも」
外でも男たちがうなずいているのがわかる。
JAMに乗っているから、大きいな、ですむけど生身で相対すると……うん。
牛や豚なんて目じゃない大きさである。
「脂乗りはよさそうね。よく燃えてる」
『もし風向きが変わるようなら言ってくれよ。嗅ぎ続けるのはつらい』
もっともな話である。
そのあたりに気を付けつつ、一通り燃やしきった。
改めて残っていた面々と情報交換という名の交流だ。
周辺の開拓と、陣地構築、武装の配置が彼らの役目である。
実際、この場所は砦、前線基地としてはすでに立派なものだ。
「支援が届いたら、徐々に集落として拡張してくよ」
「見込みはありそうだものね。良いことだと思うわ」
開墾をすすめれば、畑としても十分やっていけそうな土地に見える。
問題は獣たちだろうけど、それもここの銃器があるなら話は別だ。
どこか満足した気持ちを胸に、今日はこの場所で夜を過ごすことに。
お客さん扱いとして、施設の中で寝る許可をもらった。
空いている部屋に、寝具を持ち込み寝る準備。
「なんだか、あれこれが夢のようです」
「まあ、なかなかない体験ではあったわね」
巨大な水晶鉱脈、洞窟におそらく星外文明の建物。
私が学者なら、特に建物のほうは気になったと思う。
ただ、今の私は日々を生きるだけの探索者だ。
あえて言うなら、自分たちの脅威になるかどうかが一番の問題。
「レーテは何か来ると思います?」
「なんとも。ただ……」
ただ?と顔を向けてくるカタリナに、見せつけるようにライフルを握って見せる。
生身でも石の力、星の力を放てる特別な銃。
言い換えれば、力の象徴だ。
「黙ってやられるつもりはない。それは確実ね。強気に、はねのけて見せるわ」
それでこそ、なんて言われてしまう私だった。




