JAD-121「天然か、そうでないか」
私の乗るブリリヤントハートを含め、多くの機体は動力源の核は1つだ。
中に、いくつ宝石を投入できるかは違ってくるが。
当然、こんなことも研究される。
複数の核を利用した、動力源を増やす方法。
「成功例がメテオブレイカー……それだけってこともないわね」
「そうなりますね。これは分離可能な形を目指したようです」
その日の分の調査が終わり、各自解散となった夕暮れ。
開けたままのコックピットに差し込む陽光。
そんな時間の流れを視界で感じつつ、コピーしたデータを確認中だ。
単純な装備バリエーションのように見えて、この武装の意味は……。
「単独での長期間運用、あるいは対多数戦闘のプランよね……」
「格納スペースや、出力の余剰具合からしても間違いないです。石英類の搭載はもとより、浄水装置なんかのオプションも隠されてますよ」
細かいオプションの多さに、内心うめき声をあげる。
それだけ、昔の人はこのプランに全部を詰め込んだのだ。
オールインワン、言葉としては魅力的だが、ロマンすぎる。
戦闘となれば、破損はつきものでそうなれば……今さらか。
それにしたって、単機での長期間、敵地での作戦行動を念頭にした武装。
これではまるで、星の外へ出た時のためのよう。
「一機ぐらいは確保しておきたいわね」
「はい、間違いなく。普通は使い切れないでしょうけど、レーテなら……」
「どこかに生産設備か、保管されてるのが残っていれば……たぶん、作るのはきついでしょうし」
ふと、武装を用意してくれた工場ならあるいは、とも思う。
しかし、どれだけのお金や物資が消えることやら。
そんなことを思いながら、一緒にコピーしたデータ類を漁っていく。
売りさばくのは禁止だが、自身で使う分には大丈夫という契約。
「考えたんだけど、あの川も変よね。いくら燃料を補給し続ける役目といっても、ただの川じゃ……」
「そう思って、探ってあります。上流に、たぶん鉱山がありますね。そこから力が溶け出してるんでしょう」
JAMに限らず、宝石を使う動力源、その燃料的なものは石英に代表される結晶内部のエネルギーだ。
言い換えると、不思議な電力、だろうか?
それは、そのままでも復活してくるが、特定の場所に置いておくと早く復活してくる。
その様子は、まるで太陽エネルギーのようでもある。
(星をめぐる力……スターストリームってとこかしら)
「少し、行ってみようかしらね。ちょうど、しばらくはここに滞在する組と戻る組で別れるみたいだし」
つまり、仕事も一区切りだ。
戻ってもいいし、ここで再雇用されてもいい。
逆に、自分の好きなように動いてもいい、ということだ。
「じゃあ、トラックは預ける形で、探索者らしくちょっとうろついてくると」
「引き止められそうな気もするけど……それはそれ、ね」
結局、予想通りに引き止められたけど、押し通した。
私たちがそう簡単にはやられないだろう、という評価も理由だったのかもしれない。
町に一度戻る人たちを見送り、私もトラックを空きスペースに置かしてもらう。
万一、一か月とか戻らなければ自由に処分していいという書面も残し。
名残惜しそうな視線を感じつつ、機体に乗り込んだ。
そのまま川の上流、北側へと機体をふわりと飛翔させる。
「ドラゴンみたいな反応はなし、です」
「こんな近くであったら困るわよ、さすがに」
眉をひそめつつ、ゆっくりと移動。
川はしばらく続き、森もうっそうと生い茂っている。
見落としがないように、車両程度の速度で進む。
もちろん、地上の森を行くのと比べれば雲泥の差だ。
そうして数時間後、見えてきた山々。
木々が生い茂る中、一部だけ地肌が見えている。
「あそこかしら?」
「川を見る限りは、それっぽいですね」
鉱床が露出しているように見える場所へ、ゆっくりと降下。
隙間には、根性のある植物が無理やり生えているが……。
「驚きだわ。これ、みんな水晶ね」
「まさか、これ全部ですか?」
降り立ってみると、その異常さがよくわかる。
白さを感じる地面、その全体がキラキラと輝いている。
もちろん、土とかで汚れ、結構埋まった感じだけど、それでもわかる輝き。
「もともとあったにしては、見事すぎるけど……まさかね」
頭をよぎる、記憶の隅にある一つの噂。
ゲームのような記憶でもあり、この世界で聞いたこともある噂。
今も世界で、宝石は成長しているという話。
それも、稀に突然の成長を果たす、そんな話だ。
「探索、します?」
「しないわけにはいかないわね」
現実味の無い光景に驚きつつ、機体を進ませる。