JAD-119「拠点確保」
「こういうの、ちょっとワクワクするのよね」
「私にはあまり……何か問題がないか、不安のほうが強いですよ」
発電設備そのものだったJAMを確保。
そして、その電力で行われていた銃器と工場を確保。
今は、それ以外の場所を精査している状態だ。
私は……志願したのもあって、外の掃除をしている。
JAMでやっているせいもあるけど、なんだか豪快に物を壊してるみたいで不思議な感じだ。
普段ダメだって思ってることを、やってしまってる感じ。
『こっちは異常なしだ、どうだ?』
「こっちも今のところは大丈夫。もっと怒ってくるかと思ったんだけどね」
施設周囲は、植物に覆われていた。
当然のことで、時間はそれだけ残酷だ。
そんな場所を、ひたすらに切り裂き、吹き飛ばし、施設周囲に空間を作る。
この辺りを縄張りにしていた獣やミュータントが来るかと思ったのだけど……。
『そりゃ、こんだけ派手にやってりゃ、逃げるだろう』
「それもそうね……」
あえて、音を立てて大げさに片づけ。
落ち葉は吹き飛び、木々もめぼしい物は切り倒されている。
ジャングルに埋もれたような場所が、いつしか広場にあるかのように。
こうしてみると、本当に丈夫な建物だ。
「どのぐらいに作られたと思う?」
「騒動後、だと思います。平和な時期に建てられたにしては、雑というか、実用性重視というか」
確かに、彼女の言うとおりだ。
いくらJAMを発電のために使うといっても、使い方がある。
メンテナンスもそうだし、川から動物が侵入することだってあっただろう。
建物の中に、川を通すというのは普段考えられない。
「私もそう思うわ。だとしたら、管理者はどこに行ってしまったのか……」
考えても仕方ないのだけど、そんなことを思ってしまう。
探せば、周囲にはほかの施設とかも見つかると思う。
そんな拠点だったはずのここが、自然に沈んでいる。
「自然が怖いのか、そうなるだけの何かが怖いのか……」
一際太い木を、切り倒したところで通信。
内部のクリアリングが一通り終わったとのことだ。
「何が見つかりましたかね?」
「厄介なのはないといいのだけどね」
冗談のように口にしながら、建物外の陣地へと向かう。
ほかの面々も戻ってきているようで、思い思いに休憩中だ。
「どうだった? って結構持ち出したのね」
「ああ。ひとまずな。銃器は在庫が一定量になるまで、生産と維持を続ける仕組みだったらしい」
在庫を持ち出したら、自動的に作られ始めたとのことだ。
そのあたりも、コントロール設備から今後調整できるだろうとのこと。
「予備で保管されていた浄水器ぐらいだな……他は大体朽ちていたよ」
「それだけ昔のってことね。JAMもどきがよく無事だったものね……」
あの電源代わりのJAMもどきは、あの場所に置きっぱなしにする予定らしい。
下手に動かして、どこか傷んでいたら使えなくなるから、だそうだ。
十分な検査とメンテナンスをしてから、考えるらしい。
まあ、これまで動いていたのだ。
ここから一か月二か月ぐらいならたぶん……うん、大丈夫だろう。
「しばらく周辺の掃除というか、整地をしたら戻る形でいいだろうか?」
「私は構わないわよ。同行するのが仕事なんだし」
報酬は日払いだから、気にする人は気にするのかな?
私は、というか私たちはそんな気にしないが。
むしろ、普段遭遇できない物に遭遇出来てラッキーというところだ。
「助かる。頼ってばかりだが、変な損害を受けるのもばからしいからな」
「あら、ほかの人が儲けそこなっちゃうもの、そのあたりは優しくいくわよ」
笑って答えれば、相手も笑い出す。
それは周囲にいた探索者たちにも移ったようで、にぎやかな声が響き渡るのだった。