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JAD-011「彼女の願い」


「派手に行く! 隠ぺい解除!」


 叫びつつ、一番反応の大きい箇所へと機体を加速させる。

 護衛というか、武器を持った歩兵になれる人はカインたちの中にもいる。

 私がすべきことは、相手の目を引き付けること。


 夜間行動用のライトを全て点灯させ、まるで動く広告のように目立たせる。


 相手は、警告からの威嚇射撃にもかかわらず、こちらに撃ち込んできた……敵だ。

 であれば、後は如何に被害を少なくし、片付けるか。


「来た来た!」


「ミサイル弾複数! ロックされています!」


 それが狙い、とは口に出さなくてもカタリナもわかっている。

 ジグザグに機体を揺らしつつ、丘になっている部分から飛び上がり……即座に横に軌道修正。


 私を狙ったであろう、実体弾が空を切った。

 素早くセンサーとレーダーを確認、ちょうどよくこちらに大きな反応が固まっている。


「正直すぎるのよっ!」


 手早く、こちらも実体弾のライフルを3点バースト。

 それはまだ暗い荒れ地に、染みのように存在する巨体へと吸い込まれた。


 影が、火を噴く。


「推定JAM1機、中破以上確認!」


「隊商と相手を分断する!」


 高速で移動しつつ、後ろを振り向かせる。

 ブリリヤントハートの右手には実体弾のライフル、左手には光線銃。

 まさにゲームやアニメのようだけど、現実に操作できるのだから問題ない。


 今日の動力は、汎用性のあるダイヤ。

 キーワードを呟くまでもない出力で、隊商側にいるトラックであろう影に光線を放つ。

 確かな熱量を持った光が、相手に着弾するかどうかを確認する前に、機体を反転させた。


「ごめーん、待った?」


「たぶん、こっちをとらえきれてないんだと思いますよ」


 聞こえるはずもないボケへと、真面目につっこんでくるカタリナ。

 律儀な彼女に苦笑しつつ、機体を再び揺らし始める。

 思い出したかのように、撃ち込んでくる推定JAMは2機。


(3機編成だったのか……たまたまか)


 狙いの精度からすると、大したことはない相手、そう感じる。

 油断が命取りの世界ではあるけれど、自分が格上であるという自負も必要だ。

 何故だか、気迫といった物が伝わる……ジュエルアーマード同士の戦いは、そんな世界なのだ。


 機体を地面すれすれまで降ろし、砂煙をお共に相手へと突撃。

 お世辞にも相手は高機動とは言えないようで、旋回速度も並。

 ぐるぐると周囲を引っ掻き回してやれば、無防備な横腹が見えた。


「狩らせてもらうわ!」


 こうなる前は、どうしてパイロットが叫ぶのか、疑問に思う時もあった。

 でも、それには理由があるのだと、私は学んだ。

 自分が命を奪う、その自覚のためにあえて口にするときもあるのだと。


「敵性JAMへの着弾確認、沈黙しました」


 恐らくはパイロットが死亡、その事実がじわりと、お腹に溜まる。

 念のために、それぞれの足に実体弾を撃ち込めば、そのまま倒れ込んだ。


「このあたりが縄張りなのか……たまたまか」


 警戒はしつつ、カインたちの援護へ。

 幸いにも、JAM以外の戦力は薄いようで、状況はほぼ終わっていた。


 残りもまた、こちらが銃口を向ければ投降して来た。


 こちらに被害は少なく、少々コンテナに傷がついたぐらいだ。

 最初に強く当たっていったのが幸いしたらしい。


「で? どうするの?」


『運転手は他にもいる。目的地まで縛って押し込んどくさ』


 スピーカーから聞こえる声は、この土地に生きるということを感じさせた。

 なかなかにしたたかで、貰う物は貰うという判断をしたようだ。


 文句があるはずもなく、残骸を運ぶ手伝いをすることにした。

 武装などは使えそうなJAMを、複数運んできた時にはどよめきもあった。


「また名前が売れますね」


「その辺、よくわからないよねえ。結局、勝つか負けるかだし……」


 仕事を得るのに、役に立つと言えば役に立つ。

 けれど、ゲームのようにステータスがあるわけでもなく、順位があるわけでもない。

 もしかしたら、お偉いさん同士ではそういう順位みたいなのがあるのかもしれないけど。


 誰にも負けない、というつもりもないけれど、そうそう負けるつもりもない。

 生き残り、自分の目的を達成するためにも。


「往復して戻ったら、ちょっと機体の改良に入ろうかなと思うのだけど」


「それはいいですね。トラックも火力をあげたいです。連携して戦えたらいいですよね」


 いや、そうなったら機体側の制御が……と思うものの、何とも言えない。

 カタリナ自身は、どうもそれだけの能力はあるようだし。

 本人の証言や、発見の状況からすると……かなりのポテンシャルを持っているはずなのである。


「目指せ、贅沢三昧ですよ!」


「育て方、間違えたかしら?」


(人間らしくて、個人的には好きだけどね……)


 夜明けの日差しを浴びながら、カインたちとともに街へと進むのだった。


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