JAD-118「一家に一台・後」
JAM、それに搭載される動力源は、夢の動力源だ。
クリーンで、出力さえ守ればほぼ無限。
何せ、燃料は自然になぜか回復する……石英などの結晶が秘めた力なのだから。
(かつては、戦艦の動力源として砲撃タイプのJAMが陣取っていたことも……)
「レーテ? 急に黙ってどうしたんです?」
カタリナの声に、正気が戻ってくるのを感じた。
今、私は何を考えていた?
(JAMの動力源としての、有効性……)
私が動きを止めていたことで、周囲の面々も止まっているのがわかる。
あたりを警戒しているようだけど、不思議とあのトカゲたちはいないようだ。
ここは建物のほぼ端っこ、外に近い。
だからこそ、川が通っているんだと思う……けど。
「同じ、ではないけど似たようなのを見たことがあるわ。これ、発電施設そのものじゃないかしら」
『なんだと? これが? いや、確かに壊れてはいないのか……』
大きな大きな、機械。
ビルよりは小さいが、家よりは大きい、そんな感じ。
「ほら、もともとはコンテナの輸送動力だったりしたわけよ。なら、発電所が動いてくれるなら楽じゃない?」
『そういうことか……なるほどな。川に浸かるようになってるのも、冷却やらなんやら、便利だからか』
そう、最初にすぐわからなかったのは、推定JAMが下半身を川に沈めていたからだ。
案外、そうやって水に沈む設計だったのかもしれない。
徐々に近づきながら、状況を探る。
「熱源あり、生きてますね」
「そりゃあね、私も石の力を感じるわ。無人機……よね?」
一応、わかってはいるけどそう口にする。
高度なAIではない、機械制御。
複雑なことや、高出力は生み出せないが十分だろう。
『あったぞ。操作パネルだ。ここから制御できるんじゃないか?』
探索者の1人が、肝心の物を見つける。
私も含め、みんながそこに集まり、状況を見守る。
タブレットを取り出した男は、慣れた手つきで何事かを操作し……小気味よい音が響いた。
私はその音を聞きながら、機体をJAMもどきに背を向けさせる。
『だよな、俺もそう思う』
「お約束ってやつよね」
同じ考えに至ったらしい歩兵とJAMたち。
彼らと一緒に向いた先で……気配が近づいてきた。
ここに入ってこなかったトカゲもどきだ。
なぜか、誘われるように入ってくる。
「餌の時間じゃないわよ!」
言いながら、どんどんと冷凍弾を放ち、相手の動きを封じる。
結果として、障害物が増えて相手の動きが制限されるのを狙ったのだ。
狙い通り、狭い道に集まってくるトカゲもどき。
弾丸を通常弾に切り替え、テンポよく仕留めていく。
『さすが火力が違うなあ!』
「このぐらいはね。制御、まだなの?」
『もう少しだ。コントロールは確保したが、何ができるかがよくわからん!』
言いながらも、気が付けばJAMもどきが立てていた音が小さくなる。
ということは、何かに電力を使い続けていた?
「レーテ、あっちに空間があるようです」
「そう、なら当たりはあっちね。ちょっと開けてくるわ」
『おう、任せた!』
トカゲもどきの数も少なくなったところで、移動。
JAMもどきとトカゲもどきが来た通路とちょうど中間付近、そこにある扉。
そこを勢いよく開けば……ヒット。
『どうした、何があった!』
「工場よ。正確には、銃器を生産するように指示された状態の工場、ね」
いつしかトカゲもどきは尽き、戦いは終わっていた。
そうして、皆でのぞき込んだ部屋は……とても長い時間が経っているとは思えなかった。
「清掃や整備の電力も維持できたんですね……すごい」
「耐久年数テストはばっちりね。ずっと稼働してたんだもの」
時代を超えてきたような光景に感動しつつ、機体を下がらせる。
そして、外へと出てJAMもどきの脇に立った。
「長い間、頑張ったのね」
ふと、そんな言葉をかけたくなったのだ。
こけだらけの腰付近に、そっと手を触れさせる。
意外と金属質が残った表面に指が触れると、力を感じた。
不思議と私は、その力に声を感じた気がしたのだ。




