表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

118/278

JAD-117「一家に一台・前」


「消耗は予定より少ないですね……」


「そんなに狙いを定めなくていいもの、その分は消耗してないんだと思うわ」


 野営の準備をし、休憩に入った私たち。

 周囲には風と、木々の揺れる音。

 そして、川の流れが音を立てている。


 今は、そこに私たちの雑談や、虫の音も混じって案外騒がしい。


「ま、よっぽど戦い続けない限りは、大丈夫でしょう」


「そうですね。旅立った時を考えると、ずいぶんと進化してますよ」


 見上げた先で、夕日に照らされるブリリヤントハートはどこか誇らしげだった。

 最初は、ただ殴るぐらいしかできなかった。

 それが、いつしか色々と……世の中、わからないものだ。


「よう、食いもんは足りてるか」


「あら、ありがと。ええ、おかげさまで」


 名前も聞いていない、探索者の男。

 強面ながら、こちらを侮る様子はなかった。


「あんたがやってくれたおかげで、だいぶ楽ができた。明日からの施設探索は任せてくれ」


「そんなこと言って、儲け話は譲らないわよ?」


 おどけて言えば、聞こえていた周囲も巻き込んで笑いが満ちる。

 酔うには少々薄い、ジュースレベルのアルコールを乾杯として飲み交わす。


 その後も、日が暮れるまでは談笑が続き、そしてあっさりと夜は過ぎる。

 獣が襲い掛かってくることもなく、拍子抜けだ。


 そして、朝が来る。


「点呼よーし! では探索を行う。第一目標は電源の確保、次に生産設備の復旧と確保だ!」


 野太い男たちの声を聞きながら、トラックは脇に寄せつつ、建物に近づく。

 今日は最初から、ブリリヤントハートに搭乗中だ。


「生体反応はどう?」


「今のところは……外には結構いますけど。中にはわからないですね。どうも通りが悪いです」


 言われ、自分でも確認してみるが確かに、反応がないというより、鈍い。

 生い茂っている植物のせいか、それとも建物がそういう素材なのか。


「気配が感じにくいわ。いきなり飛び出てくるかも」


『了解。もとより警戒は続け…っと、さっそくか』


 会話の途中で銃声。

 歩兵として進んでいた探索者が、発砲したのだ。


 見れば、大きなトカゲのようなものが倒れている。


『でかいな。毒がなければ、食ってもいいぐらいのでかさだ』


「わずかだけど石の気配を感じる……そいつ、ミュータントね」


 おそらく、多少牙が鋭いとか、特殊な毒を使うとか。

 あるいは、隠れるように周囲に溶け込むであるとか。

 そんな力を持った存在が、ああいうタイプのミュータントだ。


「温度感知を加えて進みましょう」


「なるほど、わかりました。モニターに反映します」


 すぐに、まるで熱源感知のカメラで見たような光景も加わる。

 長く続けると目が疲れそうだけど、今のところは大丈夫。


 スピーカーを外に向け、無線がつながらない場合に備える。

 ついでに、見えた相手を知らせることにした。


「右前20メートルぐらいに2匹、前方天井に何かいるわ」


『何? 確かに、おかしいな。撃てっ! よし、当たったぞ』


 音を立て、何者かが落ちていく。

 多くは先ほどのようなトカゲもどきだった。


 逆に言うと、この建物は彼らの楽園になっているのかもしれない。


『迎え撃つための場所を確保するぞ。今日のところは、電源設備は運が良ければ、とする』


「じゃあ前に出るわ。生身より当然こっちでしょ」


 言いながら前に進めば、トカゲもどきたちが動揺するのがわかる。

 そりゃあ、私たちでいえば家が動くようなものだものね。


「サブをアクアマリンに切り替え。弱冷凍弾、用意」


「問題ありません。いつでも」


 相手がミュータントでも、トカゲということなら冷やすのが有効だ。

 あちこちに青い光を打ち込み、相手を無力化していく。

 そばにいるほかのJAMも、その相手を仕留めて回ってくれる。


「悪いわね、細かいのをやらせて」


『なあに、楽なもんさ』


 そんな掛け合いを続け、そろそろ三桁のトカゲもどきを倒せそうな量になってきた。

 予想以上に、たっぷりと繁殖しているようだ。


『止まってくれ。情報通りなら、この向こうが電源設備だ。結局、こもる場所はなかったな』


 家具の類は朽ちており、めぼしい手掛かりは見当たらない。

 それでも建物全体としては無事なあたり、早くから植物が食い込んでるのかもしれない。


 それに、残っている機械はここが発電関係であることを示している。

 表面は汚れているが、中身はかなり状態はよさそうである。

 長い間、放置されたのに、だ。


「さあて、何が出るかしらね」


「何事もない方がいいんですけど……」


 あきれたようなカタリナの声を聞きつつ、ほかのJAMと協力して巨大な扉を開いていく。

 そうして見えてきた空間にあったのは……。


『あれはなんだ?』


「巨人……いえ、JAMかしら……」


 巨木と見間違えそうなほどの何かが、いた。

 その巨体を、半分ほど川に沈めるような形で。

 力を感じる何かが、時間を超えて鎮座していたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ