JAD-115「見つからない記憶」
「かつての街道、その再現か……うまくいくのかしらね」
「町を作りながら、ルートを確保となると……実質新規ルートなんですよね? 大丈夫なんでしょうか」
こればっかりは、実際にやってみないとわからないところである。
文明崩壊前は、地上どころか空も、さまざまな行き来があった。
町と町をつなぐ道があれば、休憩所ができる。
あるいは、途中にまた町ができる。
そうして発展したものが、いろんな理由で崩壊したのが今だ。
「そうね。戦争だったり、ミュータントに襲われたり、色んな理由で人類は半分以下になってるはずよ」
かつての大国、その中でも一部の地域は生き延びた。
が、そうでない国々は文明崩壊に飲み込まれ……。
(本当に、そうなのかしら?)
ふと、そんな疑問が浮かぶ。
戦争があり、JAMをはじめとして石の力を使いすぎた場所は自然が荒廃したままだ。
けれど、そこまであちこちで戦争が起こるものだろうか?
ミュータントの襲撃にしても、そこまで全世界的に……。
「ねえ、カタリナの記録には崩壊前後に何があったか、正確な情報はある?」
「正直、ほとんどないですね。崩壊後の記録が主ですよ」
彼女の答えを聞き、妄想のような考えが浮かんでくる。
それは……星の外から、何者かに星全体が襲われたのではないか、というもの。
そこまでのことが起きたかはともかく、JAMの動力部分等は、いかにも外を感じさせる。
(ま、考えても仕方がないか)
もし、もしも目の前にそんな存在が出てきたならば。
ゲームのような進化を遂げる機体で、強気に当たるだけである。
「何かの拍子に、資料が手に入ると面白そうね。そろそろ行きましょうか」
「はい、約束の時間も近づいてますね」
酒場で、ルート確保のための間引き依頼を受けた私たち。
予定日が今日で、時間はもう1時間もないほど。
宿を一応引き払い、トラックごと合流地点へと向かう。
「何人かは見覚えがあるような、ないような」
「色々お仕事、受けてましたもんね」
集まっている面々は、ほとんどが探索者な様子。
中には、軍人っぽい人もいるけど……問いただすものでもない。
依頼人から説明を受け、隊列を組んで町を出る。
しばらくは、のどかというか何も起きない時間が続く。
「この先の岩山までは、資源採取に行き来があるみたいですね」
「鉱山跡じゃなく、新規の鉱山ね。ふむふむ……」
運転はカタリナに任せ、助手席で情報を確認する。
岩山からさらに西に行ったところに、小さな川があるようだ。
面倒な相手が住み着いてないといいけど……。
「何か、ぴりって来たわね。銃座に行くわ」
一言告げて、荷台側から銃座へ。
照準器をのぞき込みつつ、感じた方向へスコープを向け……。
「9時の方向、何かいるわね。迎撃は?」
『向かってくるようなら頼む』
「了解。大きな鳥ね……明らかに向かってきてる。そこっ!」
まだ小さく見える相手の姿。
みるみる大きくなるのを考えると、大人もつかまりそうな大きさだ。
吸い込まれるように弾丸が向かい、ヒット。
少し離れた場所に落ちたのを、バイクに乗った人が確認に向かった。
『お見事。たまにああいうのが真上から襲ってくるんだ』
「見つけ次第、迎撃しておくわね」
私たち以外にも、迎撃できる戦力はあるはず。
それでも、探知できる範囲は私たちより狭いようだ。
少しばかりの優越感を感じながら、警戒を続ける。
太陽が真上に来る頃には、鉱山である岩山に到着。
「休憩の後、目的の方向へ出発だそうです」
「なるほどね、休むにはちょうどいいわ」
鉱山のそばには、村というか砦があった。
休憩所でもあり、獣やミュータントから身を守るためでもあるんだろう。
どことなく、開拓最前線を思い出す光景に、心が躍る自分がいた。




