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JAD-010「変わる者、変わらない者」



「よかったんですか、レーテ」


「あまり面倒ごとを増やすのも、よくないから」


 ブリリヤントハートのコックピット内、2人だけの会話。

 長い時間を過ごしても、いまだにこれだけでどこかワクワクしてしまうのは、どうなのだろう。


 ロボを自分で操作し、何かするという夢。

 それが、現実となり生きるための手段になっているということ。


(ま、リタイアが出来ないわけだけども)


 並走する形のトラック映像にちらりと視線をやりつつ、警戒を再開する。


 タンセに戻った私は、別の街との交易に向かうというカインについていくことにしたのだ。

 休まなくてもいいのか?と言われたけれど……。


「言えないわよね。道中、カタリナに任せて結構寝てたから大丈夫、とは」


「それに加えて、よさそうな武器も拾った、とは確かに言い出しにくい……ですかね」


 儲け話には鮮度という物がある。

 それこそ、あとでと思っていたら先を越されたり。

 そこで悔しい思いをするのは、その話を知ったから、である。


 つまりは、私が保管用のケースと、恐らく大戦前後の武器を拾ったことを知らなければいいのだ。

 機会を見て、たまには行ってみないかと誘うぐらいでいい……と思う。

 トラックはカインの店に預け、最初からJAMで同行する形となった。


『もうすぐキャンプ予定地になる。先行して頼めるか?』


「こちらラストピース、了解」


 敢えて、あだ名で答える。

 通信が傍受されている可能性と、その際の相手の萎縮を狙った形だ。

 誰が呼んだか、よくわからないあだ名だけれども。


 困った時に、頼ればなんとかなることが多い、そんな評価らしい。

 ぴたりとはまる、最後の1ピースってこと……なのかな?


「最後の良心、みたいなことにならないようにしないとねえ」


 言いながら、ブースターを少し吹かして滑るように前方へと加速。

 基本的には砂煙が上がるから、JAMがいるというのは遠くからでもわかるとは思うけども。


 もうすぐ目的地、安全な場所、そんな時に人は油断する。

 だからこそ、襲われやすいというのは古今東西一緒。


「護衛がいてもいなくても、ってやつはどこにでもいるのよねえ」


「どうしますか?」


 一応、先行してキャンプ地に良く使われる場所に行くだけでも仕事としてはOK。

 とはいえ、実際に襲われたいわけではないので……。


「飛ぶわ。こちらラストピース、上空からも確認します」


 推進力の向きを変え、真下からとする。

 ぐぐっとGの向きも変わり、機体が浮き上がっていく。


「さてっと……変な偽装は……ないか」


「つまらなそうに言っては駄目ですよ」


 何もないのが一番ではあるのだが、返り討ちに出来ればそれはそれで美味しい。

 よっぽど、それこそ軍のような集団に襲われない限りは、何とかできるとは思う。

 この体と機体は、確かにまだ強くなる余地はあるけど、中身は歴戦なのだ。


(ゲームでは、だけどね)


 そこだけは心の中でつぶやき、ぐるりと機体を回転させる。

 今のところ、物陰に隠れたトラックといったものは見当たらない。


 合流するべく高度を下げていく私の視界には、赤があった。

 広い広い、遠くまで見渡せる世界で、夕焼けは全てを染め上げている。


「現実、か」


 自分の呟きながら、男の声だったようにも、女の子の声だったようにも聞こえた。


 キャンプに合流し、食事と雑談。

 なんでも隣町で新しい鉱山が稼働したらしく、その買い付けついでなんだとか。


「元鉱山が、大きく隆起してきたらしい」


「新しく? 珍しいわね」


 この世界では、地球では考えられないことが起きる。

 それが、突然の大地の隆起だ。


 ある日突然、地震のような揺れと共に、大地が山になる。

 元々は平地だったり、荒れ地だったり、今回のように鉱山跡だったりする。

 大事なのは、そこは新しい山であり、採掘結果が未定ということだ。


(質量保存の法則だとか、色々考えることはあるけど……)


 ゲーム時代でも、解説自体は無かった事象だ。

 深く考えるだけ、無駄なのかもしれない。


 気が付けば、時間は過ぎていく。

 見張りは別に立てるとのことだったけど、自分から立候補した。


「さてっと……やるなら、明け方かな」


 実際、夜に襲ってくる野盗なんてのもいるらしいけど、個人的には明け方が一番狙いやすい。

 もうすぐ終わり、何も来なかった、そんな感情と、疲労が一番ピークの時だ。


 夜を、他の見張りと一緒に過ごし、遠くの空が白地んできたころ。


「金属反応大」


「警告の後、威嚇射撃開始。目覚ましを高らかに響かせなさい!」


 言いながら、片手の銃を上空へ。

 攻撃以外にも、使い方はあるのだ。


 加減して撃ち放った光線が、まるで照明弾のように上空で光を放ち始めるのだった。



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