JAD-104「集合体」
クラゲ型のミュータントに、目のようなものはない。
だというのに……その瞬間私は、確実ににらまれた。
「ずいぶんっ、元気が残って……るっ!」
「普段は海中にいるはずなのに雷とかっ、どうなってるんですかっ!」
さっきの閃光から、そうじゃないかと思ってたけど大当たり。
大クラゲは、その触手の先に光の玉を宿したと思えば、周囲に力を振りまいた。
映像で見た作品のように、長く残る雷だ。
避けた場所を、その力が貫き焦げ付かせる。
でもこれは、ただの雷じゃない!
「だけど、あんな中にいたままならっ!」
相手には悪いけれど、力の流れも、その核も丸見えだ。
半透明の体は、大きさは違ってもクラゲだと主張している。
水槽ごと、核だろう部分に射撃を集中。
砕け散る音を立てながら、確かに暴力は吸い込まれ……その力を発揮した。
「有効打を確認!……!? まだ動く!?」
「ミュータントは頑丈って相場が決まってるけどっ!」
確かに核を貫いたはずなのだけど、相手はさらに暴れて水槽を飛び出した。
そのまま、壁に向かっていくらかの触手を伸ばし、モニターがホワイトアウトする。
「っっ!! 一体何を……って、外?」
「一気に外壁まで貫きましたよ、今の」
もし、最初にあれを打ち込まれていたら、まずかったと思う。
そんな一撃が外に向けて放たれ、空母に大穴が開いた。
驚く私たちの視線の先では、大クラゲが触手で器用に体を動かし、外へと飛び出していく。
まさかの行動に、追撃を忘れてしまったぐらいだ。
「レーテ?」
「え? あ、ああ……追いかけるべきよね」
明らかに艦内の照明は少なくなっている。
どこまであれで賄っていたかはわからないけれど……。
(さっきの大クラゲ、核が無事だったような?)
確かに貫いたはずの核が、しっかり存在していたように思う。
あれは幻だったのだろうか? それとも、攻撃が効かなかった?
「水槽の中に……あっ、あったわっ!」
「これは、核ですか? 確かに砕いたはずですよね」
残骸の中に、明らかに自然の物だろう核だったものがある。
その中に、力を感じる石も。
つまり、大クラゲは2つ以上の石を抱えており、核を再生か何かできるのだ。
「ミュータントのこと、私たちは何も知らないものね」
「ええ、確かに。気を付けて追いかけますか」
文明崩壊前後に目撃されるようになった、謎の生物たち。
一部は、人間の闇が生み出したものがベースらしいけど、そうでないのもいる。
空想でしかなかったような存在が、あちこちにいたりするのだ。
「さっきの穴から外にっと……そう来たかぁ……」
「反応が重なって……あれ、どうなってるんでしょうね」
船の外に出て、甲板に飛び上がった私が見たのは、大型のクラゲなミュータント。
ただし、そのサイズは数倍に膨れ上がっている……今もなお。
「なんだっけ、生き物には集まって大きく見せるやつがいるけど、あれとは違うわね」
「どう見ても1つの生き物になってますよ!?」
そう、最初は集団といった感じだったものが、だんだん境界がわからなくなっていく。
そして、大型のミュータントが誕生した。
「サブもダイヤに切り替え! チャージ開始! 一発当てて撤退させる!」
「了解!」
ぼんやりしてる場合ではなかった。
明らかにおかしい相手に、周囲から砲撃が着弾するが、あまり効いていない。
今はまだ、合体を優先してるだけだろうと判断し、強く当たることにした。
「恨みつらみはわかるけど、引いた方がお互いに得よ? ダイヤの閃光……ジェーマレイ!」
両手に持たせた二丁のライフル、背面武装やそのほかの砲塔。
既製品を調整しただけだろうそれが、明らかに悲鳴を上げる。
注がれた力に、耐えきれなくなっているのだ。
(この一回、もてばいい!)
覚悟を決めて、力を解放。
先ほど相手が放ったような、閃光がモニターを染め上げる。
純粋な力の光が大クラゲにぶつかり、その半身を消滅させた。
できれば仕留めるつもりだったのだけど、相手の張った力場的なものにそらされたのだ。
「さあ……どうする?」
幸い、まだ武装は壊れていない。
もう少しなら戦えるけど……。
「敵、後退を始めました」
「ふぅ……こちらフェアリー。あとは任せるわ」
『了解した。こちらも指揮官を制圧したところだ』
返ってきた返事に、うなずきながら機体を甲板を移動させる。
これだけのものを、修復したのか、新造したのか、どちらだろうと思いながら。




