JAD-103「本当に怖いのは……」
「思ったより中は空洞部分が多いんですね」
「中に入れるものが出来上がってないだけじゃないかしらね……」
甲板の昇降口から内部への侵入を果たした私たち。
天井まで、まだ5メートルはあるだろう。
小型のJAMなら、普通に移動できるだけの余裕がある。
設計上、それを想定しているかは別なのだけど……。
あちこちに、妙な空間というか、空きがある。
「動力はどっちかしらね。楽園型空母のデータがほぼないのね」
「スキャンしながらいくしかないですね。大体、一番丈夫な場所でしょうけど」
もっともな話だ。外部からの攻撃でダメージを受けるような場所にはおそらく、ない。
機体を中心部に向けたところで、通路の先に動く影。
「さすがにいるわよね!」
わずかに横に動いて、来るであろう相手の攻撃を回避する。
丈夫ではなさそうな、船内の壁が火花をあげた。
「自分で自分たちの船を壊すつもりかしら? まあ、反撃しないってわけにもいかないけど」
「必死な感じですね。歩兵というか、重機ですよあれ」
そう、反撃に放った光弾に沈黙したのは、武装はしているけどJAM未満の何か。
歩兵よりはまし、という感じだ。
戦力の多くは外に出しているんだろうか?
「残されたのか、中身のために残っているのか……」
なんとも判断に困るところだ。
警戒はしつつ、どんどんと奥へと進む。
道中、散発的な攻撃をさばきつつ、進むことしばらく。
感じる何かの力、その圧が増した気がした。
「この先に何か……おおう」
「何ですか、これ」
これまでの光景は、機械的なものである意味、整ったものばかりだった。
その分、視界に入ってきたものの異質さが際立つ。
もともとは何か施設を収めるためだろう空間に、不思議な光景が広がっていた。
無数のパイプ、そして透明な水槽のような中に拘束された形の……異形。
大きな体は引き裂かれ、中にあったであろう核部分が半ばずれるように取り出されている。
それにつながったあれこれからは、明らかに石の力が……。
「警報! ようやくですか」
「一度下がるわっ!」
周囲から、ようやくというべきか相手の戦力が顔を出す。
有人のもあれば、おそらく無人のものも。
とっさに下がった場所に、無数の弾丸が着弾した。
『侵入者を生かして返すな!』
「お約束ねえ……通信先を絞るのを忘れるぐらいには混乱してるようね」
相手を通路へと引っ張りつつ、どうするか少し考える。
下手にあの囚われたミュータントを解放や仕留めても、暴走しそうな気配がある。
一番は、元に戻した状態で倒すことだろうけど……。
「レーテっ! そこの隔壁に何か……」
「うそ、もうあいつら来たの!?」
慌てて壁から離れたところで、予想とは違う場所の隔壁が、大きく膨らむのだった。
ミュータントが、外から侵入を試みようとしているのだ。
「すぐ浸水するわね……作戦変更! 突撃してミュータントの親玉を先に対処する!」
「了解っ!」
武器を構えなおし、改めてミュータントのいた場所へ突撃する。
こちらに迫る攻撃は、左右に揺れることで回避する。
もっとも、そう広くない通路なのでいくらかは当たってしまう。
が、船内ではそこまで大火力は使えないのは相手のほうだ。
被害は無視できるぐらいでしかない。
「まずは電源っ!」
空間に飛び込み、拘束具につながる電源を射撃、切断。
次に力を引き出している配管も、近寄ってブレードで切断。
こうなれば、まだ生きているのなら……!
「核の移動を確認!」
「触手に力が集まってるわ! 後退して物陰に!」
周囲の機材を壊しながら、機体をコンテナの陰に滑り込ませる。
ぎりぎりのところで、空間にまるで無数の雷が落ちたかのような光が満ちる。
「この力……結構石も強力ね」
「分析してる場合ですかね? どうします?」
「どうもこうも、そのまま海に返すわけにもいかないでしょう」
放っておけば、水槽内で暴れてそのうち出てきてしまう。
そのあと、海に戻るまでにどれだけ暴れることか。
私にできるのは、どちらにもやれることをやるだけ。
結局、ミュータントと共存は難しい。
生き残るためには、違う場所で過ごすか、仕留めるしかない。
たとえ、人間のほうが怖いなと思うようなことをしていたのだとしても。
一発でしとめるべく、相手の様子を確認しながら、そんなことを思うのだった。




