1話:学院の教師です
故郷を、両親や村のみんなを奪われ、ただ復讐を望み騎士として生きてきた僕が、今では嘗て在籍し学んだ≪エデン王国騎士養成学院≫に戻り教師として過ごしている。
まだ教師となって数か月。
不慣れな事も多いが大変充実した日々だと思う。
左遷された先で子供達を相手に簡単な稽古を就けた時にも楽しさを覚えていたが、今はそれ以上だった。
そして今の僕には一つのクラスを受け持っている。
クラスの生徒の人数は8人。
本来ならもう少し多くの人数の生徒を受け持つのだが、僕が教師になって日が浅いと言う事と、受け持っている生徒たちには、階級とか偏見のない信念を持つ僕が相応しい、と言う理由だった。
僕の受け持っている生徒は皆女の子だった。
しかもただの女の子ではない。
八人の殆どが貴族の、それも世間で云えば有名所の家名を持つ者達だった。
しかも一人は王族の血を持つ子だった。
まあだからなのだろう。
僕は王族だろうと、大公家であろうと、関係ない。
僕の生徒である以上、分け隔てなく同じ対応をする。
そこに王族も貴族も一般階級だとか関係ない。
だからなのだろうか。
僕が教え子の皆に受け入れられたのだろう。
有名な名を持つと言う事はそれだけ一歩引いた対応をされることが多い。
特に王族なんて身分だ。
けど彼女達が望んでいたのは、自分達を同じ目線で接し導いてくれる存在なのだ。
身分や差別の区別なんて僕はしない。
良い事をしたら褒める。
悪い事をした叱る。
いつもの僕。自然体で接する。
それだけでいい。
そんな風に接し教えていく。
元々優秀な才能を秘めている子達だ。
僕の教えで成長していく過程を一緒に実感できるのは教師として嬉しい。
クラスの担任として過ごして一か月が過ぎた。
正直あっと言う間と言う感じだった。
それだけ充実した日々なのだと思う。
最初はぎこちない関係だった生徒達とも色々経験を得て仲の良い関係を築けていると思う。
慕われてもいるとも思う。
それは嬉しい事だろう。
教師にとっては生徒に慕われるのは何より嬉しい事だからだ。
他の先生からは色々苦労している話を聞いたりするから。
ただ……。
どうして、この子達は学院の休校日、つまりは学業がお休みの日なのに、僕が暮らす寮に来ているのだろう?