表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SHADOW HUNTER  作者: 狼月
3/44

第3話【夜は明けて】

 スパークするたびに視界が白んでいく。瞬きは明度を増していき、辺りの質感はどんどん希薄になる。体内時制は緩やかに減速、密に――外の一秒は内の一分に匹敵する。

 全身の電気信号は意識を活かし、背中の焼き鏝じみた切り傷は心を殺す。


 霞む視界にぼんやり人影が映った。

 駄目だ。来ちゃいけない。あんな化け物、手に負えるはずがない。


「バクジョウ“フーカ”」


 折れかけた心に凛と鈴の音が波打つ。

 廾げな淡い緑の光が揺らいだ気がして、灯はふっと消えた。それと同時に白んだ視界はブツッと断線した。



   ◇◇◇


 再び光が目に映った。肌に付く感触は柔らかいベット。


「……なんだ。夢か」


 やけに強張る体を起こしつつ、まだ残る緊張の余韻に浸る。周囲はやけに暗い。昨日はカーテンを閉めきったのだろうか。記憶が曖昧だ。


「ご機嫌よう」


「―――!」


 居るはずのない人間の存在に言葉も出ない。オレの部屋…で?


 陰湿な声は隣からした。そこには足を組み、マグカップを手にした少年の姿があった。

墨を流したような綺麗な黒髪をテキトーにまとめている。洒落っ気の無さが暗い印象を与えた。


「落ち着け。誰も君を贄にしようなんて思わない」


 彼は挙動不振に陥ったオレ目掛けて冷めた声を浴びせる。冷水じみた口調と贄なんて物騒な詞は思いの外 効いた。


「ふう……。いろいろと訊きたい事がある。答えてくれ」


 訊かれた事は名前とか、年齢とか、懸賞に応募するときに必要そうな個人情報だった。


「……住所不定の士官学校生か」


「住所不定? さっき答えただろ」


「さっきの地名はこの国には無い。なら住所不定と大差ないだろう。君をしかるべき場所に連れていくから準備をしてくれ」


 そう言って彼は薄暗い室内から退室していった。


「勝手な奴……」


「早くしろ」


 思わず「はい」と、上擦った声が喉を締めた。ホント勝手な奴。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ