表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SHADOW HUNTER  作者: 狼月
26/44

第26話【とらぶるすくらんぶる(5)】

「ねえねえ、レイとは上手くやってる? シャドーハンターの仕事には慣れた? 異世界の食事は口に合う? 新しい服だね、買ったの?」

「そんな一回で早口に訊かないで下さい。答えられません」

「それもそうだね」


 会うこと数分。ミランダ節は炸裂し、質問の嵐が将人を見舞った。路地の一角に座り込んで話しをする一幕。


「はぁ……。ミランダさんの相手をすると疲れます」

「そう? よく言われるよ♪」

「楽しそうに言うのもどうかと」


 将人の基準でもワルツの基準でも、ミランダは美人だ。毎年行われる、都市の美女を決めるコンテスト、『ミス・ワルツ』で入選するほど、美貌は広く他人に認められている。また、若くして市長になるほど能力もある。才色兼備を絵に描いたような人間だ。


「レイと上手くやってるか、でしたね。それなりに仲良くしてますよ。結構、面倒見が良いやつだから、付き合い易いです」

「足手まといにはなってない?」

「まぁ、多分」

「命懸けの仕事だからね。生き延びてれば帳尻が付いてるって証拠。斡旋した身としては生きていてくれてよかったよ」


 すっくとミランダは立ち上がる。長袖のTシャツにデニムの短いパンツという軽装。それに対称的に腰まで伸ばした髪に見え隠れする、鈍く光る拳銃。腰でクロスするように携帯された二丁と、右大腿部のホルスターに女性には大型過ぎる一丁、左大腿部にハンディサイズのものが一丁と、さりげなく重装備だ。


「ミランダさん、それは?」

「ん? ああ、私もハンターでさ。これは商売道具ってやつ」


 不似合いで不気味な笑みを浮かべて、交差させた拳銃を将人に向ける。その目は獲物を狙う目。残忍で狡猾な狼が持ち得る、獣の瞳。牙を向けられて何も感じない程、将人は間抜けていなかった。ここのところ、シャドーと修羅場が続いていたため嫌でも危機察知能力が上がったらしい。


「……怖いですよ」

「こうやって初対面のクナと睨み合ったものだ。あいつも怖いとか言ってた」

「ミランダさんはこちら基準でもかなりの美人です。そんなサディスティックな目で見られたら、知り合いが狂喜乱舞します」


 将人の言う知り合いとは、明るくて馬鹿な彰のことだ。大道芸人志望の野口とは上手くいっているだろうかと、将人はふと思った。


「知り合いは良い趣味してるね」

「ええ、まぁ。見ているのは飽きない人です。そういえば、クナって誰ですか?」

「クナハト=ギンガーよ。この前、会ったでしょ。あれあれ、ワードラゴン。走竜族とか言うらしいけど」


 将人は息を撫で下ろした。他人のことを考える余裕が生まれたのは、拳銃が下ろされたから。

 どちらともなく歩きだす。もしかしたらキョーコが立ち上がったから、一行は進む気になったのかもしれない。

 キョーコは相変わらず口を挟まないが、空気に合わせてリアクションはある。将人が銃口を向けられた時は、人知れず緊張していた。彼女が物を口に運ぶ以外に口を開くのはまた別の話。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ