表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SHADOW HUNTER  作者: 狼月
21/44

第21話【異世界、三日目(6)】

 ゆさゆさと揺れる。頬には固いとげとげしたなにかが当たり、背中は生ぬるいのぺっとしたもので濡れている。なんだろう、嗅ぎ覚えがある匂いだ。はっと我に帰るが、視界は暗転したままだ。


「オ? 気がついたカ」


 身じろぎすると、聞き覚えのある声が聞こえてくる。目が光を取り戻してきたら、赤い街並みが最初に浮かび上がってきた。ここはワルツの東側か。


「あれ? オレ……」

「すまない。フーカに無理をさせたら、糸が綻んでしまったようだ」


 しゃっきりとしない頭が何かを考える。依然として思考にベールがかかったようだ。糸……綻び……。たっぷり十秒経過しても事柄に結び付かない。


「……ん?」

「だから、すまないと……。はぁ、後にする」


 若干呆れたようすのレイが見えた。ごめん、オレが悪いんだろ。

 レイはフーカちゃんをおぶり、キョーコちゃんの手を引いている。まるで保父みたいで、少しおかしい。

 意識が覚醒するにつれて、疲労感と背中の痛みが重くのしかかってきた。


「なんか、背中痛いんだけど」

「だから糸が綻んでしまったと言っているだろう。それで傷が開いて……」


 レイの声がだんだんと小さくなっていったのか、オレの耳が馬鹿になっていったのか、判断がつかないが、最後の方はよく聞き取れなかった。聞き取れなくても、どうでもいい。わかったところで疲労感は変わらない。良い具合に脱力して、正直寝てしまいそうだ。背中が広い人だけど、オレをおぶってるのは誰だろう。


 そうこうするうちに、オレをおぶった人は立ち止まった。レイの家に帰ってきたらしい。今日も仕事時間を切り上げてしまったのだろうか。


「私はここまでだナ」

「ああ、ありがとう。私だけではどうしようもなくて困っていたところだ」

「それは何よりダ。ミラには伝えないでおこウ。意地が悪くて仕方ないからナ」


 意識が混濁しているオレを下ろし、レイに預けると、その人は去っていった。去り際にフードコートの大柄な姿を見て、あのワードラゴンだと判った。


 キョーコちゃんに連れられて家に入ると、一階のソファーに俯せに寝かせられた。キョーコちゃんは心配そうにこちらを覗き込む。


「ありー? ムラマサさまさまは倒れてやがんの。ざまぁ無いぜ……うごぇ」


 階段を下りてきたであろうローカが冷やかしに来た。しかし、キョーコちゃんはローカの喉にチョップを一閃し、指を口に当てる。静かにしなさいってジェスチャーだ。ナイスチョップだ、キョーコちゃん。


「けほっ。フーも倒れてんのか。手伝ってくる」


 苦しそうに喉に手を当てて、ローカは二階に上がっていった。

 キョーコちゃんが瞼に手を乗せて、目を閉じさせる。眠って良いよってか。そうさせてもらおうと思った時には意識が沈んでいっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ