エピローグ
その夜。
白蝶、ルエ・ムーの夜伽がどのように行われたのか、一切、記録はない。
わずかに、夜通し、うつくしいカナリアの歌声が聞こえていたとの証言が伝わるのみである。
『神の蝶』の長い歴史上で唯一、現役の白蝶として葬られた『光の蝶』ルエ・ムーは、柩の中、ひかりで織り上げたかがやく羽衣をまとっていたと言われている。
そして、ルエ・ムーが『狂信者』の銃弾に倒れた日からちょうど三十年後の大祭にて、四代のちの白蝶、ニーニャが誕生した。
『奇跡の蝶』とよばれた金髪、碧眼、隻腕のニーニャは、自身の大恩人として、伝説のゲルーン人医師、カーナ師と、北への布教で知られる『血絹の蝶』、ローサ・ダ・キナキナの名を挙げている。
(おわり)
最後まで読んで下さってありがとうございました。
上のような文章で締めとなったのはまったく意図したものではなく、原稿用紙100枚という規定の中で書き、かつ数行の余裕があったからだったと記憶してますが。
最後の一文を書いたとき、この『もみの蝶』という作品の主人公がなぜローサだったのかを、わたしも電撃のように悟りました(投稿先が少女小説だったので少女を主人公にしただけだと…)。ずっと、『もみの蝶』とは血に染まって死ぬルエのことだとおもってたのです。
ルエのキャラ、カーナのセリフだけでなく、このラストまで、何かに書かされた作品だと感じています。




