闘技大会へ行こう2
勝利した後、案内に従い受付へ。紙を渡され、名前などを書いた。トーナメントや本戦で紹介の為に利用するらしい。
途中転移者とすれ違い、睨まれたが無視。傍観してから最後にあっさり勝ったのが気に入らなかった様だ。
(彼女が負けたから敵認定したか、若いねー)
『なめプしたからね』
『紙ソードは無いな』
(…前々から思ってたけどこれって念話なの?)
『心の呟きで話せるの。嬉しいでしょ?』
『いつでも話せるな』
(いや、考えが筒抜けになるから普段はやめてね)
『『いや』』
(……)
観戦席へ行き、隅で空気の様にオードを待つ。
転移者も観戦していた、対角上に座っているため関わる事は無い。猫耳が誰かを探すようにキョロキョロしている。
『アキ、猫耳が探してるわよ』
「ん?そうなの?」
『なめプしたら文句くらい言いたいよな』
「ふふふ、見つけれるものなら見つけてみろ」
認識阻害効果を最大に。目視以外も五感による感知も阻害した。
猫耳はしょんぼりしている、完全に見失った様だ。
そうこうしていると10番目辺りにオードがやってきた。闘技台に上がり真ん中の位置で集中している。オードは15歳になったばかりなのでこの15~19歳の中では一番若い。
『始め!』
「旋風斬!」
オードが円状に一閃
風が周りを押し出して行く
『おわっ!』『なにー!』『ばかな!』
一撃で全ての選手が吹き飛ばされ場外へ
闘技台に立っているのはオードだけになった。
ざわざわとざわめきが凄い。
「おっ、早く終わったなー」
やはり目立った様で、あいつは誰だ、優勝候補かなど囁かれ、オードに話し掛ける人も多く、カナンは暫く待つ事に。
『流石オードだなー。主人公っぽい』
『そうね。王道バトル系みたいね』
「それは良いんだけど、長くなりそうだなー」
人に囲まれるオードを見てげんなりと、よく見ると転移者も話し掛けに行っていた。後で聞いてみようと思いながら雑談しているとオードから通信があり、ようやく待ち合わせた。
「おつかれ、カナン」
「兄さんもおつかれー。もう人気者だねー」
「はあ、時間が掛かって困るよ。早く終わらそうとしたのが仇になった」
はははと乾いた笑いで答えるオード。今日はもう用が無いので路地裏へ行き飛び立つ。もう夕方なので寄り道せずに王都を目指す。
「そういえば兄さん、黒髪の少年に声かけられてなかった?」
「あー、確かユウトとか言ってたな。本線で闘うのを楽しみにしてるって。友好的な奴だったぞ?」
「おー主人公っぽいな。もう本線に行った気になってるなー。明日のトーナメントで当たらないかな?」
「出る杭を打とうとするなよ…」
リア充は痛めつけなきゃなーと自分の事は棚に上げ、濁った眼で嗤うカナン。オードはそれを見てまたかとため息。
やがて王都に着き、帰宅。
「にいちゃんおかえり」
「リナ、ただいま」
ぎゅっと抱き締められたので頭を撫でる。ふへっふへへっと何かおっさんみたいな声が聞こえるが気にしないでおこう。
「カタリナってほんとカナンの事好きだよなー」
「そうだよ、オード兄さん。リナはにいちゃんと結婚するから」
「そうなのか…頑張れよ。カタリナ」
頑張る。そう言ってカタリナはカナンの胸に頭を擦り付ける様にグリグリしてから部屋に戻って行った。
「…さて、明日早いから寝よう」
「明日も俺達は同じ会場で午前中だったな」
『アイ、黒炎龍がブレス吐ける様になったぞ!』
『あら、見せてー』
「ほどほどになー。おやすみ」
『『おやすみー』』
早めに寝て次の日になった。ブロックのトーナメントがあるので早めに家を出る。準備を済ませ帝都へ。
相変わらず人の賑わいが凄い。路地裏に降り立ち二人で歩いて第二闘技場を目指す。
「時間的に後少しだからそのまま入ろう」
「そうだな。じゃあまた後で」
拳を合わせそれぞれの控え室へ。
控え室は先に数人居たが特に話すこと無く時間が流れた。その後も何人か入って来る。周りを見ると転移者の彼女のエルフがこちらを見ていた。金髪で耳が尖っている可愛い少女。目が合うとこちらにきた。
「あなたがユウトが言っていた卑怯者ね。同じブロックだから私がその性根を叩き直してあげるわ」
「そりゃどうも」
「…陰気な奴ね。そのメガネ粉々にしてあげるから」
「はいはい」
無駄に敵視されているカナンは、エルフにやられるならご褒美じゃないか!と思ってしまい。
『アキ、私がご褒美あげるからね』
『我も一緒にご褒美あげるからな』
(心読まないで下さい!)
そして1人だけ呑気なトーナメントが始まる。




