予選会
シートと一緒に渡された、ごわごわな紙の案内を見ながら控え室に行く。カナンの控え室は4号、扉は解放されており、同じ年代の男女が50名程、緊張した面持ちで準備運動など、精神統一をしていた。メガネのカナンが入るが皆見向きもしない。
(14歳以下の本戦の枠は2名か、出られれば将来の箔が付くからそこを目指すのが大半か)
14歳以下は総数500人程、最初の予選で一度に闘うのは20名、勝ち抜けば2つのブロックに分けてトーナメント。各優勝者が本戦に行く。
(始まった様だなー。順番は23番目か…暇だ)
『結構才能ある奴居るのだなー』
『そうね、大会に挑むくらいですもの』
『転移者ってアキは仲良くならないのか?』
(そいつがどうしようも無く困っていたら手は差し伸べるさ。さっきの奴は興味無いかな)
『ふーん、なんか歪んでいそうな奴だったしな』
(急に力を手に入れたら、あの年齢ならああなるさ)
『一緒に居たのは、女騎士に貴族風の子、エルフに猫耳っ子だったわね。異世界堪能してるわねー』
(ははっ、そうだな。それぞれの生き方ってあるから良いんじゃないか?)
『我らは、極皇に魔皇、妖精王女、可愛いリナたん』
(なんでリナたん?)
『紅羽はリナたんが可愛いくて大好きなのよ。早く紹介してあげなさいよ』
(…タイミング合えばな)
紅羽が暴走して私まで被害があるのよ?と呆れながらも嬉しそうなアイは紅羽という良き友人に出会えたのだろう。
雑談しながら待つと順番が来たようだ。
『下3桁の番号読みますので、呼ばれたら来てください!』
(444…呼ばれたかー。長かったなー)
ぞろぞろと集まり向かう。
廊下を進むと開けた場所に着き、2つある闘技台の内一方に等間隔に並ばされる。50メートル程の闘技台、真ん中から少し外れた場所。この位置から始まる様だ。
『それでは始めます。場外は失格。また、敗けを認めたら闘技台から降りてください。残った1名がブロックトーナメントです』
それぞれの少年少女は緊張して、支給されたそれぞれの武器を持って睨み合っている。カナンはそこである事に気付いた。
(あれ?俺の武器…支給されて無いんだけど…)
カナンは手ぶら。アイと紅羽の雑談に混ざっている内に支給が終わっていた。更にカナンは認識阻害のメガネをしているので、職員が気付かなかった様だ。
(何か無いかなー、流石に素手はなー。…あっ!)
手に持っていたごわごわな紙を見る。くるくると巻いて細長くし、魔力を通す。ナイフ程の大きさの即席の紙ソードが完成した。
(これで良いや)
『それでは、始め!』
闘いが始まった。カナンはトコトコ歩いて端の方へ、闘いを眺める。
『やぁ!』『おりゃ!』『ま、まいった!』
少年少女の闘いを微笑ましく眺めるカナン。
徐々に数が減っていき、2名が向かい合い闘っている。
(そろそろ行くかなー。あれ?この二人って転移者の取り巻きだな。二人が被るとか運が悪かったな)
貴族風の女子と猫耳の女子が闘っている。混ぜて貰おう、そう思い近付く。
『今日こそ決着をつけるです!』『私に勝てると思って?』
「俺も混ぜてよ」
『『えっ?まだ居たの?』』
先にナイフを2つ持った猫耳が斬りかかって来る
無力化するように腕を狙ってきた
キンッキンッ
紙ソードで受ける
『なっ!』『うそ!』
「スマッシュ」
猫耳に重い斬撃
『ぐっ!』
踏ん張りきれず場外まで吹っ飛んでいった。
『まさかミーニャを一撃…本気を出さなきゃいけないよ_ぎゃ!』
喋っている途中でスマッシュを決めた。貴族風の女子も吹っ飛び場外。闘技台に立っているのはカナンのみとなり、ブロックトーナメントに進む。
『卑怯ね』
『ああ、卑怯だな』
「いや、戦略だよ…」
『普通の名前の技使ってたな、良いのか?』
「何がだよ」
『アキは意識高い系だから横文字はまともなのよ』
『オリジナルとかダサいもんな。舟盛りってなんだよ』
『唯一絶界は、まともに名付けれたから最高傑作なんて言ってるくらいだし、言葉のセンスもないわよね』
「泣くぞ」




