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アイとカタリナ2

 どれだけ泣いただろう。太陽は真上の位置にある。


 泣き腫らしたカタリナとアイは手を繋ぎ、ベンチに座りながら、砂場で遊ぶ子供達を眺める。


「本当にアキには言わないのね?」

「はい、言ったら絶対結婚してくれません。なので結婚してから言おうと思います」

「ウフフ、応援するわ」

「本当に、頼もしいです」


 にいちゃんは頑固ですから。はにかみながら笑うカタリナはとても可愛く。

 思わずアイはカタリナを抱き締める。


「アイさん?」

「あ、いや、カタリナちゃんが可愛くてつい…」


 少し恥ずかしそうに頬を染め、もじもじしているアイを見て。

(あんたの方が可愛いじゃねえか!ちくしょー!)

 カタリナはアイの底知れぬポテンシャルに戦慄する。


「ねえ、カタリナちゃん」

「どうしました?」

「お腹空かない?」


 空を見ると太陽が真上の方にある。いつもなら昼食時だ。直ぐ話が終わると思って弁当などは持っていない。


「そう、ですね。泣きすぎてお腹空きました」


 答えた後にお腹がキューと可愛い音を立て、恥ずかしい…と赤面するカタリナ。

(なんて可愛いの!この子は!)

 可愛い過ぎて石の中に持ち帰りたい!ハァハァしながら思うアイ。


「アキにお弁当届けて貰わない?」

 私が居ないとどうせ彼暇なんだしと付け加えて。


「_っ!アイさんはまた私を泣かせるんですか?」

 意地悪ですね。泣きそうな笑いで答える。


「アキの前じゃ食べられないでしょ?」

 昔を思い出すから泣くでしょ?とからかい。


「ふふっ、そうですね。ありがとうございます。」



 アイは通信石を手に取りカナンに連絡。

≪アイ、終わったのか?≫

「まだよ。だからお弁当作って持ってきて。二人分ね」

≪あー、分かった。ちょっと待っててな。≫

「よろしくー」

 通信石の魔力を切り。


「ちょっとしたら来るから待ってましょ」

「あ、はい。電話みたいですね。それ」


 カタリナは羨ましそうな眼で通信石を眺める。アイはふともう1対あるなと思い出し石の空間から取り出す。


「はい。カタリナちゃん。これがあれば私に繋がるよ」

 アキとの通信石じゃなくてごめんねと悪戯に微笑みながらカタリナに通信石を渡す。


「えっ?良いんですか?アイさんに繋がるなんて感激ですよ。ずっとお話していたいですから」

 眼をキラキラさせて、憧れの人との電話番号を交換した女の子の様に喜んだ。


「はぁ…可愛いわね…持ち帰りたい…」


 もうアイは願望が駄々漏れになっている。


「あ、そうだ。アキのファンクラブ入りたいのよ」

「ふふっ、歓迎しますよ。アイさんは特別にNo.0の会員にしますね!」

「フフフ、ありがとう」


 キャイキャイお喋りをしていると弁当を持ったカナンが現れた。


「おーお待たせー。ありゃ、手なんて繋いで仲良しさんだなー。」


 アイに弁当を渡しながら、二人が仲良く座っている光景に口角が上がる。


「ありがとー。仲良しになったのよ。」

「えへへ、にいちゃん、アイさん素敵過ぎだよ」


 アイはカナンがもう一つ弁当箱を持っているのを見つけ、一緒に食べるつもりで来たなと、カナンを追い払う為に先手を打つ。


「じゃあね。お弁当ありがとう。これから女同士で語らいがあるの。また終わったら連絡するからね。」

「そうだよ、にいちゃん。女同士で語らうの。じゃあね。」


「えっ?あっ…うん…終わったら連絡してな…」


 寂しそうなカナンの背中を見送りつつ、よく合わせてくれたわ!とアイコンタクト。うんうんと頷き合う。


「食べましょ?」

「はい、ああ…駄目ですね。開ける前から泣いてたら…」


 カタリナは弁当箱を手にポロポロと涙を流している。弁当箱の蓋を開けると、カツサンド、野菜炒め、ポテトサラダ、卵焼き。


「にいちゃんの…卵焼きだ…」


 涙を流し喜ぶカタリナを見て、アイは。


(昨日の朝、私と紅羽でかっさらわなければ卵焼き食べれたのよね…)

 罪悪感に押し潰されそうになっていた。

 きっと紅羽も罪悪感凄いんだろうなと、ずっと黙っている左目の事を思う。


「ほら、早く食べないと涙で卵焼きしょっぱくなっちゃうわよ?」

「そうですね、勿体なくて…」


 また作って貰えばいいんですけどねと苦笑しながら卵焼きを口に運ぶ。


「…にいちゃんの味だ…う…うぅ…うぐぅ…」


 流れきったと思った涙はまた溢れだし、いつも作ってくれたあの味だ。美味しいか?と訊ねる兄の姿。懐かしい記憶が甦る。


 アイはカタリナの頭を撫で、ふと気付く。左目から涙が溢れている。紅羽も貰い泣きしてるのね、そう思いながら右目の涙を拭った。



 それからなんとか弁当を食べたカタリナは、アイに感謝と尊敬の眼差しを向けて。


「にいちゃんには、果敢にアタックしてみます。頑張ってにいちゃんを落として見せます!」

「ウフフ、その意気よ。私も手助けするからね」


 通信石をキラリと見せる。


「アイさんは何処に住んでいるんですか?」


 こんな美人が居たら近所で有名だから東区は無いだろうと思い質問する。


「ん?私はアキの持っている石に住んでいるのよ」

「石に?あっ!あの青い石ですか!?」

「そうよ。いいでしょ」

「えっ?いつも一緒って事ですか!?なんて羨ましい!」

「そうよ。そういう契約でね」

「そんな契約あるんですね…契約?…あの…その契約の名前とか分かりますか?」

「ウフフ、コンファインメント・エンゲージよ?」

 あら、もしかして知ってる?というように教えるアイ


「コンファインメント・エンゲージ?…………何!エンゲージだと!」

 カタリナは、まさか、そんな、まじで、嘘だろ、ぶつぶつ呟き。アイはそれを微笑ましく眺めている。


「あ…あ…あ…アイさん?にいちゃんと…もしかして…け…け…け…」

 言葉が出ない。言いたくない。認めたくない。


「ええ、結婚してるわよ」


「ぐぼあっ!」

 カタリナは撃沈した。







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