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石の中

 夕方になり、帰宅。

 茜指す空を眺めながら、今日は疲れたから早く寝たいと思っているが…


『ここがアキの家か』

『そうよー兄妹もいるのよ』

『へー』

「ただいまー、ありゃ、誰も居ない?」


 ガチャ。扉の音がし、カナンは振り返る。

 丁度カタリナが帰って来た。今日は友達と買い物に行っていた様で、手提げ袋が膨らんでいる。


「ん?リナ?おかえり」

「にいちゃんただい…ま」


 目が合い、急に顔をしかめたカタリナにガシッと抱き締められた。カタリナは、いつもと違う…いつもと何が違う…この胸騒ぎは…と呟き、カナンをふがふがする。



『これが兄妹のスキンシップと言う奴か』

『そうねー。この家は少し特殊だけどそんなものよ』

(あの、二人とも音声切ってもらえます?気が散るんですけど?)

『『いや』』

(あ、そうですか…)


 広い海の匂いだ…でも海なんてここら辺には…カタリナは呟きながら何かに気付いてしまった。

「ん?上?」

 なんで?そう言ってカナンの口元を見詰める。

「リナ?どうした?」


「……うそ…やろ」

 カタリナはハニワの様になっている。何か受け入れがたい衝撃な事実が発覚した様に。


『なんか面白い顔してるな』

『この子の特殊能力が発動してるのよ』

「に、にいちゃん…もしかして…あれ?」


 再びカナンをふがふが。

 海とは違うもう一つの匂いに気付き、神経を研ぎ澄ませる。



『特殊能力って?』

『アキに関しての嗅覚が凄いのよ』

『確かに面白い魔力してるな』

『でしょ?』

(ほんと、黙ってくれません?)

『『いや』』

(…)


 カタリナはわなわなしている。

 もう一つの存在に気付いてしまった。

 自分を脅かす強大な存在。第二の刺客。


「また、新しい…真っ赤に燃える太陽の様な…でも少し暗い…」


『すごいな!我の事だろう?』

『でしょ?私も当てられたのよ』

『へー』


 カタリナは真剣な表情になる。

 このままではいけないという様な決意の表情。

 自分だけ置いていかれるのは嫌だという危機感。


「にいちゃん」

「ど、どうした?」

「アイさんには、いつ私と会える?」

「んー?来週末…かな?」

「わかった」


 決戦。

 眼光鋭くそう呟いて部屋に戻って行った。


『女の顔ね』

『女の顔だな』

『闘いね』

『闘いだな』

『頑張るわ』

『次は我か?』

『そうね』


「ホント君ら姉妹みたいだな…」


 藍の魔王と紅の魔王。反対の属性なのに、こんなにも気が合うものなのかと感心する。

 この二人の場合は、感覚共有によるものだと思うが…


「さて、何かやり忘れてる事って無いかな?」

『王女の所行ってダンス習ってよ』

『踊り?』

『アキと踊るの』

『我も覚える』

『頑張りましょう?』

『ああ』


「良いけど君ら何処で練習するのさ」

『ここにあるよ?』

「ここ?石の中?」

『凄いなー大きな画面があってソファーに座りながら外が見えるし庭もあるし、どうなってるんだ?』

「えっ?石の中って家になってるの?」

『そうよ。元々大粒の精霊石だから四大元素の力で少しずつ家を作ったの』

「意外と快適なんだな…俺も入れたりする?」

『無理よ。男は入れないの』

『アイ…凄いなこの下着』

『えっ?そこ開けちゃだめよ』


 キャイキャイはしゃぐアイと紅羽。

 とても気になる。石の中と下着。


「はぁ…楽しそうだな」


 楽しそうな会話が聞こえるカナンは重いため息。

 せめて音声を切って欲しかった。

 物凄く気が散る。鼻歌に別の鼻歌を被されている感覚。


 そんな会話を聴いていると、部屋の扉が開いた。


「おう、カナンただいま」

「あ、おかえりオード兄さん」


『アキの兄か?』

『そうよ。この前会ったのよ』

『じゃあ我も紹介してもらうか』

『そうね』


「今日は森に行ってたのか?」

「うん、それと依頼もしたよ」

「依頼?どんな奴だ?」

「うん、まぁ、強いやつ」

「カナンが強いって言うなら凄い奴だったんだな」


『アキが我の事褒めてくれたぞ!』

『私も褒めて欲しいなー』

(……)


「凄い奴だったよ。まあ、アイが頑張ったからね」

「へー、アイちゃんが頑張ったんだな」


『褒めてくれた』

『良かったな』


「あと新しい仲間が増えたから今度紹介するね」

「仲間?彼女じゃなくてか?」


 ニヤニヤするオードは核心を突く。

 間違ってはいない。

 エンゲージがされているから。

 しかしここで認めると、脳内会話が弾んでしまう。


『流石わかってるな』

『流石アキのお義兄さん』

(…)


「…仲間だよ…今は…」


『見苦しいわね』

『意地になってるのか?』

(ホント勘弁してください)


「そうなのか?あ、そうそう聞きたかったんだけど」

「どうしたの?」

「ドラゴンって俺でも勝てるかな?」

「種類にもよるけど大体は余裕じゃないかな」

「そうか、ドラゴンスレイヤーって昔からの夢でさ」

「へー、初めて聞くよ」

「へへっ、ガキっぽいかなって言わなかったんだけど、ナイトメア・グリズリーを倒してから少し自信が着いたからな」


『アキの兄も中々やるのだな』

『人間の中じゃ上位ね』

『へー』


「じゃあ、来週は予定あるから…リーリアにも聞いてみるけど再来週に行ってみるかい?」

「ほんとか?よし!早速修行だな!」

「はははっそうだね。そういえば兄さん彼女は作らないの?」


「ん?いや?カナンとアイちゃんみたいに肩を並べられる人だったらいいんだけどなー」


『お義兄さん良いこと言うわね』

『我も修行だなー』

『付き合うよ』

『おっ!じゃあ早速お願いするかな』

『いいよ』

(やっと静かになる)


「それは結構無理があるよ…でもまあ探してみるね」


「おう!頼んだ!」



 机に向かい1人考える。静かな夜だ。こういう時は、一人じゃないと出来ない事をしようと、宝石を眺める。


「来週末はアイの誕生日かー。二人は修行中だから…指輪作るか…」



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