森に帰る
精霊の森に到着。
『アキーアイーおかえりー』
「ただいまリーリア」
「ただいま」
アイも出てきて、チラチラとカナンを見てはフフフと笑っている。先程の事を思い出している様だ。
幸せそうに笑っている姿はとても可愛らしい。
『お疲れ様ー上手くいったのかな。あれ?アイなんか可愛くなったねー!良いことあったの?』
表情豊かになったねー。と、ニヤニヤとカナンとアイを見るリーリア。やっと進展したのか…可愛い親友の事を思うリーリア。
「う、うん。アキがチューしてくれたの」
照れくさそうに頬を染め、もじもじしながら答える。自然と口角が上がり、ニヤニヤを抑えようとしているが無駄だった。
実際はアイが動けないカナンにキスをしたのだが…
「いや、逆だろ」
『良かったねーアイ!お祝いしなきゃ!』
「聞けよ」
「ウフフ、あとリーリアに新しいお友達紹介するね」
『ほんと?やったー!』
「紅羽ー」
おいでー、と言うアイの目の前に火の玉が出現し、ボッと人型を作る。
アイと同じくらいの深紅の髪の少女が現れた。
アイよりも少し背が高く、胸も将来を感じさせる大きさ。赤いワンピースにサンダルという軽い服装ながらも、気品溢れる勝ち気な雰囲気の少女。
紅羽は何故か顔を赤くしてムスッとしている。吸収されたのが嫌だったのだろうか。
「あれ?紅羽?なんで小さく」
「ちょっと事情があってね、力を吸収したの」
ポカポカなのよ。そう言うアイの左目は深紅のままだ。赤色の魔力に溢れている。
『よろしくねーリーリアだよー!あれ?この魔力は紅かな?仲良くなったんだねー』
「…紅羽だ」
『あれ?どうしたの?顔赤いけど』
「う…」
アイを睨む紅羽。
その目は、羞恥と怒りが混ざり合い、深紅の瞳がそれを強調している様に見える。
アイは目を逸らしながら、遠くを見詰める。
そしてボソッと…
「あれは事故よ」
そんな無責任な発言をするアイに怒る紅羽。
「どこが事故だよ!至近距離でラブシーン見せやがって!しかも途中から感覚共有しただろ!」
アイの悪戯により、どうやら紅羽も唇を奪われた様だった。
感覚共有で長い間キスをしていた。アイがはむはむする度に悶絶していた記憶を思い出し、更に顔が赤くなる。
そんな紅羽をからかうように、アイは舌を出して…
「つい…てへっ!」
「ついじゃねえよ!こっちはお前のせいで気持ちも共有しちまったんだぞ!」
「あら!あらあらあら!ウフフ」
やったわ!とアイは口に手を当てて笑い出す。
「結局どうなったんだ?」
カナンは見かねて、二人に問い掛ける。
アイは紅羽の様子を見てニヤニヤしている。
「あ…う…あ…うぅ」
紅羽は顔を真っ赤にしてカナンをチラチラ見る。キスを思い出し、その後に何か重大な事に気が付き混乱している様だ。これやばい…アイの奴…でも良いかも…とぶつぶつと呟き。
「えっ?大丈夫か?」
「……じゃねえか」
「ん?な、なに?」
「アイのせいでお前の事好きになっちまったじゃねえか!」
くそ!まずは手を繋ぐからじゃないのか!キスから始まる恋なのか!と膝を付き両手を地面に付けて項垂れている。意外と純情な紅羽は順番に恋をしたかった様だ。
『仲良いねー』
「えっ?何してんのアイさん?」
「ちょっとした出来心よ」
アイはカナンにウインク。カナンはスルーして項垂れている紅羽を見る。うわぁぁ!と叫んでいた。
「いや、うん…なんか可哀想になってきたぞ。アイ、何とか出来ないのか?」
笑顔のアイが近付き、耳元で囁く。その笑顔は自信満々で、悪い事した態度じゃ無いなと苦笑した。
「無理よ。それに将来はダイナマイトボディよ」
「そうか、じゃあ仕方ないな」
カナンはあっさり陥落。
ダイナマイトボディは男のロマンだ…近い将来を夢見て微笑む。
「ウフフ(アキ、ちょろいわね)」
「いや、結局どうなったか教えてくれよ」
「仕方ないわね。零の時間の中で紅羽と話したのよ。私達は女神の器らしいわ。成体になり討伐などで存在が薄くなると女神が乗っ取り顕現する。だから抗う為に紅羽を吸収したのよ」
「なんだって?じゃあ紅羽が封印されていたのは…」
「おそらく封印した聖女が紅羽を守る為ね」
「俺でも知らない事だ。…その聖女は何者なんだ?」
「…結婚してくれたら教えてあげる」
「いや、教えてよ」
「だめ」
「「……」」
睨み合いが続く。
なぜもったいぶる…と視線を向けるが、アイは何処吹く風。
結婚しないと絶対話さないぞオーラが滲み出ていた。
「くっ…(此方が圧倒的に不利だ…どうする?言うか?いや…言うなら来週か)」
「…じゃあ、また改めて聞くよ」
「ウフフ(まだ秘密よ)」
「そろそろ帰るか」
「そうね、紅羽ー帰るよー」
紅羽がフラフラと立ち上がった。どうやら少し立ち直った様子だが顔は赤い。真っ直ぐカナンを見詰めている。
「な、なあ。あ、アキ」
「なんだ?紅羽」
紅羽はトトトッとカナンに駆け寄り。
キスをした。
「__っ!」
「じゃ、じゃあ」
可愛く小さなガッツポーズをしながらアイの左目に逃げて行った。
アイとリーリアが声を揃えて可愛いー!と言っている。
『流石情熱的だねー』
「ウフフ、そうね」
カナンは呆然とした後。
「…あれ?この感覚…エンゲージが増えてる?まじ?」
繋がりが強くなり、結果嫁が増えたようだ。
悩みの種が増え、ため息を抑える様に小さく息を吐いた。




