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藍と紅

 黒い太陽が照り付ける煉獄の大地。

 全てを燃やす黒い太陽は、人々の絶望を象徴する様な黒。

 ジリジリと温度が上がり、水など一瞬で蒸発してしまう。

 こことは違う死の星に来てしまった様な、人が生きていけない環境。


 そんな地獄の様な場所で対峙するは…


 漆黒の槍を持ち、漆黒の鎧を身に纏う、深紅の薔薇の様に美しい燃える様な赤色の女性。


 青い刀を持ち、パーカーにホットパンツ。

 少しヒールのあるモンクシューズを履いた、ラフな格好深い海の様な藍色の女の子。


 見詰め合う二人。

 紅羽が笑う。

 この闘いを楽しむ様に…やっと解放された喜びを爆発させる様に…そして、自分と同じ存在に出逢えた喜びを表現する様に。



 紅羽が空高く飛翔。

 バサッと黒い翼を広げ、少しの停滞。

 黒い太陽を眺め、ニヤリと笑う。


『__黒翔天駆…』


 黒い翼が燃え上がり、肥大する。

 そのままアイに向かって急降下。

 炎を燃やし推進力が増加。

 超加速の急降下となり、


『…下り龍!__』


 黒龍が鋭い爪を振り下ろす様な剛槍。

 アイの脳天目掛けた一撃必殺。


「…氷華流昇斬」


 アイはその剛槍に合わせる。

 氷を纏った刀を振り上げた…青色の軌跡。


 ガキィィン!__

『なに!』


 剛槍は異とも簡単に受け止められた。

 紅羽が驚く所は…アイが片手であった事。


 紅羽が驚愕している瞬間。

 アイはフッと力を抜き一歩下がる。

 刀を両手に持ち替え。


「__氷華流点衝」


 氷を纏った渾身の一突き。

 紅羽の腹部を狙う。


 ギンッ!__


 紅羽は槍を回転。

 なんとか槍で受けたが分が悪い。

 付け焼き刃の紅羽とは違い…アイは力、速度、技量が違う。


『_ぐっ…黒爆』

 ボンッ__

 不利を悟った紅羽。

 自分を巻き込む黒い爆発を放つ。

 多少のダメージを負ったが問題では無い。

 両者吹っ飛び、距離が開いた。


 仕切り直しだ。


『くっくっく』

「ウフフ」


 黒い太陽が照り付ける環境で、楽しそうに紅羽は笑い。


 アイはそれにつられる様に微笑む。



 ______




 絶界の端で戦闘を眺めるカナン。


「さて、天才様の闘いでも拝みますかね」


 最前列での観戦を楽しんでいると、誰かが近付いてきた。


『あの、貴殿は一体』

「ん?神官さんか、俺はただの魔法使いさ」


 水弾で吹っ飛ばされた神官が、驚愕の表情でカナンの隣に立つ。


『では、あの魔王と対等に闘う少女は…』

「んー、まあ、神官さん達から見たら…魔王と闘う、青の女神様かなー」

『…女神様。私達は魔王を崇めていたなんて…』

「まあ…人間から見たら、あの楽しそうな二人は災害だよな」


 カナンは少し寂しそうに笑いを向ける。



 ______



 紅羽とアイは吹き飛ばされた場所から、互いに近付いていく。

 先程と同じ笑顔のまま。


『やはり我と同じ、力を求めたか…』

「もちろん」

『何故、闘う?』

「アキの為、アキが強くなるなら私も強く。アキの敵なら私の敵…」

『ふっ、そうか。全く…お前が羨ましいよ』


 紅羽から黒い炎が噴き出し、翼が肥大。

 本当に、心の底からの羨望。

 誰かを愛し、誰かの為に戦う事は無かった。

 封印前…人間からの一方的な攻撃。

 それにより、紅羽は人間と戦う事を決めていた。


 頭では解り始めていた。

 大切な者が居れば、こんなにも強くなれるものなのかと…



「ウフフ、いいでしょ」


 アイは紅羽に教え込む様に…どや顔する。

 完全なる自慢だが、こうやって自慢出来る相手に会うのは初めて。


 喜びを感じながら、刀の切っ先を向ける。



 先手必勝とばかりに、紅羽が一気に距離を詰める。


『__無双炎舞!』


 舞うように突きと払いの乱舞。

 アイも武技を発動。


「__霧隠れ」


 炎舞がアイを切り裂いた。

 しかし空気に溶けるようにアイが霧の中に消える。


『それなら!燃やしてやる!__焦熱!』


 激しい音を立てて炎の範囲攻撃。

 辺り一帯を炎で埋め尽くす。


 炎を出した紅羽の背後から、霧が集まる様にアイが現れる。


「__氷華絶凍擊」


 氷を纏う刃を振り抜き駆け抜ける。

 駆け抜けた地面から氷柱が勢い良く発生。

 ガガガガ!__

 氷柱が紅羽を貫く。


『__な…がっ!』

「__逆流の太刀」


 更に逆流する様に駆け抜け、

 返す刀で同じ軌跡を生む。

 今度は反対側から氷柱が発生。

 氷柱が交差。

 反対側から紅羽を貫く。


『__ぐふっ…』


 交差した氷柱。

 まるで氷で出来た大きな華は、

 炎に照らされ美しく輝く。


「美しく散れ…絶華!」


 氷柱の華が砕け散る。

 氷の花びらが舞うようにキラキラと美しい。


 再び、アイは仁王立ちでどや顔を紅羽に向けた。


「ウフフ、知ってる?水は燃えないのよ」



 片膝を付き沈黙する紅羽。

 その表情は、楽しさの中に悔しさが見える。


『……』

「貴女はどうして闘うの?」


 近付いたアイは、紅羽に生きる理由を訊く。

 ボロボロになっても闘う理由。


『…ふふっ、我に勝てたら教えよう』


 紅羽はフラフラと立ち上がり、アイに鷹の様な鋭い目を向ける。

 今は闘う理由よりも、闘いを楽しみたいと言う様に。


「そう」

『この環境では長くは持たまい』


 赤黒い立体魔方陣が出現した。

 紅羽の強い魔力が込められた魔方陣。


「…そうね」


 黒い太陽は確実にアイを蝕んでいる。

 絶対的不利な状況で、平然としている方がおかしいというもの。

 普通なら、いつ蒸発してもおかしくない。


『魔装無しにここまでやるとは大したものだ』

「…ウフフ、してるわよ」

『なに?』

「この服、魔装なの」


 青いパーカーを引っ張る。


『ばかな!そんな魔力も感じない服が魔装だと?』

「そう、でも本当の魔装じゃないんだけどね」

『本当の魔装?戯れ言を』

「ウフフ、見せてあげたかったけど、使う余裕無いのよ」


 ふぅっと黒い太陽を見上げる。

 まともな魔装を展開したら、早く魔力が尽きる。

 魔力が尽きたら待っているのは死。


 赤黒い立体魔方陣が輝く。魔法が完成した。


『さあ、終わりだ』


 赤黒い力の奔流。

 紅羽は両手を天に突き上げ、渾身の魔法を発動させた。


『__黒天道(こくてんどう)!』


 ゴオオオオ!__

 黒い巨大な太陽が出現。

 照り付ける太陽よりも強大な、

 全てを燃やし尽くす黒い太陽。


 アイはため息を付きながら、居合いの構えを取る。


「これは、ご褒美貰わなきゃね」


 黒い太陽が迫り、

 アイの目の前に到達。


 アイはギリギリまで力を溜め、

 本気の一閃。


「__極光(オーロラ)!」


 超光速の一撃。

 力と力がぶつかり合い、

 激しい衝突音を生む。


 そして、

 __斬!

 黒い太陽が真っ二つに斬られた。

 二つに別れ、アイの横を通り過ぎる黒い太陽。


「はぁ、はぁ…」


 力を出し切ったアイは刀を支えに片膝を付き、黒い色を失い赤くなった太陽が徐々に小さくなっていく様を見詰める。


 だが紅羽は諦めなかった。


『まだ終われない!紅焔(こうえん)!』


 ゴオォォォ!__

 太陽から紅の炎が噴出。

 太陽のプロミネンスがアイを呑み込む。


『はぁ、はぁ、我の、勝ちだ…』


 炎が晴れ、そこには倒れ伏したアイがいた。


 紅羽は止めを刺すため最後の魔力を練る。


 再び、赤黒い立体魔方陣が出現した。


「…フフ」


 アイは疲れきった身体を起こし、空を見上げる。


「ねえ…紅羽」


『なんだ?命乞いか?』


 赤黒い魔方陣が輝き、魔法が完成するその時…


 空から、何かがアイの直ぐ後ろに墜ちて来た。


 ドオオオン!と墜落するそれは、


『氷?』


 球体の氷塊。

 刻まれるは…


『まさか…ずっと魔方陣を使わなかったのはこの為か…』


 魔方陣。


 アイは武技しか使っていなかったのは。


 遥か上空で魔方陣を展開していた為。


 アイは氷塊にもたれ掛かり、微笑みを向けた。


「私の…勝ち」

『ならばそれを越えれば良いだけの事!』


 紅羽の魔法が完成。


『__大黒天道!』


 先程よりも大きな黒い太陽が出現。

 勢い良く燃え上がり、アイへと放つ。


 アイの眼前に迫るその時、


 アイの魔法が完成した。


 氷で出来た立体魔方陣が青く。そして、


 紫色に輝く。


「…零の時間(ゼロのじかん)


 ………

 ………

 ………

 ………時が


 ………凍った



 周りの全てが停止した。


 アイは立ちあがり、黒い太陽に手を伸ばす。


 触れた瞬間、黒い太陽は砕け散った。



 カツカツカツとアイの歩く音だけが響く空間。


「紅羽、貴女は強い」


 アイは指をパチンと鳴らすと、紅羽の首から上だけが動く。


『身体が…何が…起きた』

「ウフフ、時間を凍らせたのよ」


 紅羽は驚愕する。時間を操る魔王など、存在しない。


『くっくっく…それはもう、神の力だぞ』


 諦めに似た笑いでアイに笑いかける。

 アイはもう王種ではない。


「私も力を望んだのよ」


 アイはカナンと修業をした。

 加速した時間の中で。

 ずっとこの身に受けて、そして一番近い場所で見てきた時間の魔法。


 故に求めた。

 他の属性を見ずに、大好きな人が得意な魔法を。


『なら…我と同じ存在では足りない』


 魔皇とは、魔王が自分と違う属性や感情を受け続け、覚醒した存在。

 しかしそれは四大属性と光、闇に覚醒した場合だ。



「頑張ったのよ」

『……』


 紅羽の目の前に立つアイ。


 時空魔法の適性がある魔物はこの世界には存在しない。


 一握りの人間と、


 女神の様に神種と呼ばれる存在。


 故にアイは時空魔法を得て王の階段をかけ上がる。


「だから私はもう王種じゃないの」


 紅羽の耳元で囁く。


超越種(ちょうえつしゅ)極智の皇(きょくちのおう)


 紅羽は目を見開き、乾いた笑いを浮かべた。


『…はははっ、女神と同じ土俵に居るとはな』



『我の敗けだ』

「ウフフ」



零の時間~青、紫色複合神位魔法、アイオリジナル概念、時間、空間を凍らす魔法、一定の範囲を凍らせたり、溶かしたり、壊したりなどお手の物。時間は掛かるが発動さえすればスーパーアイちゃんタイムが始まる魔法



続きが気になると思って頂けたら、評価、ブックマークをして貰えると励みになりますので宜しくお願いします!

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