紅の領域
『なんだと…赤龍まで通じぬのか』
「まあ俺の包丁技って基本は魔法を斬る為に開発したからなー」
「魔法斬れるって強いよね。ダサいけど」
「それは言うな。オード兄さん見てると自己嫌悪に陥るんだよ」
紅の魔王は驚愕し、アイはダサッと呟き、カナンな遠い目で笑う。
神殿は既に半壊。
外の景色が見えるが、神殿を中心にドーナツ状の人の壁が出来ていた。
「あいつら逃げねえのかな?」
「これ以上は自己責任ね」
「そうだな」
野次馬や状況を把握出来ない者、見届けようという者が並ぶ。
逃げないのであれば、助ける義理は無い。
野次馬から視線を外し、紅の魔王を見据える。
『……面白い』
紅の魔王はニヤリと笑い、鷹のように鋭い眼を細め、深紅の髪をかき上げる。
色っぽい…というかエロっぽい…アイがボソッと呟いた。
ズンッ!__
赤色の立体魔方陣が現れる。
「立体魔方陣__大技か!」
カナンも魔力を練り攻撃に備える。
『名を…訊こう』
赤い眼を真っ直ぐ向けて問い掛ける。
名前を訊く程に興味を持ってくれたのかと、カナンとアイは笑顔を見せた。
赤い立体魔方陣が回転していく。
「俺はカナン」
「アイでーす!」
『我は…紅羽だ』
立体魔方陣が輝く。
『こんなに楽しいのは、封印された時以来か……ふん、行くぞ!灼熱の世界!』
赤色の魔力が高く高く立ち登る。
白い炎の巨大な玉が…いや、白く燃える灼熱の太陽が大地を照りつけた。
「えっ…まじ…」
周囲の温度が急激に上昇していく。
これは、人が生きていける環境を超えている。
カナンは即座に街を守る事を選択した。
「うへぇ!環境魔法かよ!__イグニース・エリアガード!」
街を覆う様に防御魔法を発動。
発動したが、この魔法で守りきれるか不安になってきた。
「ぐっ…これで熱なら大丈夫だが…攻撃されたらキツいな」
やはりというか、どんどん気温は上昇。
『ふん、精々足掻くがいい』
赤色の魔力が吹き荒れ、巨大な魔方陣が現れる。
「アイ、街が熔ける前に一気に行くぞ!」
「りょーかい」
アイとカナンが手を繋ぎ魔法を発動。
青銀色の巨大な魔方陣を展開する
魔方陣が形を変えていき、立体に変化。
青銀色の立体魔方陣が回転する。
赤色の魔方陣が輝き、
紅羽の魔法が完成する。
『__天道!』
ゴオオ!__
白く燃え盛る太陽が墜ちてくる。
赤い太陽を超えた白熱の太陽。
カナンの防御魔法を溶かしていく。
青銀色の立体魔方陣が輝く。
「「__白銀の星!」」
白銀に凍りついた星を召喚。
高気温でも溶けず、ピキピキと凍り続ける絶氷の星。
ドオオオオオ!__
白い太陽と白銀の星が衝突。
赤い白と青い白がぶつかり合い拮抗する。
『……やるな!もっと力を!』
紅羽は赤色の魔力を増大。
すると、徐々に太陽の色が変化。
蒼色に燃え盛る太陽へと変化していく。
それに比例して熱量が急上昇。
白銀の星が押されはじめる。
「アキ、ブースト」
「はいよ」
カナンがストレージから取り出した精霊石。
それをアイに渡し、
アイは精霊石を飲み込んだ。
ギュィィィ!__
アイの身体から溢れ出る力の奔流。
精霊石を飲み込む事によるドーピング。
青色の魔力が急激に増大。
それにより、力を増した白銀の星が倍加。
蒼い太陽を押し返す。
ピキピキ__
蒼い太陽が凍りついていく。
『な…んだと!この気配は!我と同じ!』
ドオオオオオ!__
紅羽は押し負け、
白銀の星に呑まれた。
『ああぁぁぁぁ!』
神殿は影も形もなく瓦礫になっている。
熱さと寒さで歪んだ地形が続いていた。
そして灼熱の世界は消え去り、静寂が訪れる。
「「……」」
「流石魔王ね」
「ああ、強いな」
ガラッ_
瓦礫の中から這い出る影。
『ぐっ…はぁ…はぁ』
フラリと立ち上がる紅の魔王。
少年と手を繋ぐ少女を見る。
藍色の少女。
自分と似た存在…魔王。
『あいつが言っていたのは、こういう事か…我にも…ああやって人と手を取り合う未来があったのかもな…ふん』
紅羽は一人呟き、地面に落ちていた槍を見る。
神殿騎士が手放した槍。
それを手に取った。
『あいつの技を使うのは癪だが』
「なんだ?槍なんて拾っても意味なんて…」
『……蒼炎』
ゴオオ!__
蒼い炎が噴き上がる。
その炎は、紅羽にまとわりついていった。
「うわ、あれも使えるのか…ん?なるほど、通りで魔王を封印出来た訳だ」
「どうしたの?」
蒼い炎が鎧の形を取り始める。
女性らしい緩やかな曲線の、全身を守る鎧。
「いや、紅羽を封印したやつだよ」
「聖女?」
少し制御が甘いのだろう…
炎がチリチリと鎧から噴き出すが、力で抑え込んでいる。
初めて行うであろう魔法だが、抜群の魔法センスで補っているのは流石と言ってしまう。
「ああ、時代の節目に現れると言われる伝説の存在さ」
「強いの?」
槍が蒼い炎の槍に変化。
やがて鎧は完成し、蒼い炎の軽鎧が出来上がる。
兜はフルフェイスでは無く、頭を覆うタイプの兜に蒼い羽飾り。
『これは、何と言う技だったかな…』
ゴゴゴ!__
美しい1対の蒼い炎の翼が生える。
「ああ、1人で魔王に勝つくらいだからな。確か深華の魔女」
「名前は?」
「知らない」
その姿はまるで蒼く燃え盛る天使の様で…
『ああ、思い出した。魔装だ…名は…』
「オード兄さんの魔装の型は防御特化のナイト。それに対して聖女が得意とした型は超起動攻撃特化…」
『「__戦乙女」』
蒼い翼が広がる。
白銀の星~青、銀色複合合体魔法、主人公とアイの合体魔法、白銀に凍りついた星を対象に衝突させる、現在試行錯誤している未完成魔法




