紅の魔王
『では、楽しませて貰うぞ?』
紅の魔王から赤色の魔力が噴き出す。
攻撃的な炎の力。
赤色の魔方陣が出現。
詠唱も言わずに、簡単に魔方陣を出す紅は、流石魔王と言うべきか。
カナンも魔法を発動。
赤、灰、銀色の魔方陣を展開。
「アイ、人の避難よろしく」
「りょーかい。流れろー」
ザアァァ!__
アイはパーカーのポケットに手を突っ込みながら、人々を水で流して外に出していく。
『うわー!』『ごぼっ!』『ぬわー!』
(雑だな!)
流される人を気にせず、紅の魔王が魔法を放つ。
『__炎の槍』
カナンの魔方陣が輝き、防御魔法を発動する。
「イグニース・ガード!」
1メートル程の炎の槍が放たれる。
カナンはそれを正面から片手で受け止め、
グシャッ__
握り潰した。
炎が四散し、周囲に熱風が吹き荒れる。
「そんな炎じゃ俺は燃やせないぜ?」
『ほう、中々やるな。並の人間なら灰になっているぞ』
『こ、これが魔王の力…あの少年は一体…』
「ん?」
後ろを振り返ると、神官がまだ入口に居た。
どうやら服が引っ掛かって流されてなかったようだ
「あれ?まだ居た。水弾」
隣に立っていたアイが振り返り、水の弾を放ち神官を直撃。
『__ぐぼらっ!』
神官は外に吹っ飛んで行った。
(アイさん?)
「終わったよー」
褒めて褒めてと言わんばかりの笑顔を向ける。アイにとって、誰も死なずに外に出せたのは、かなりの上出来。
自画自讃するレベル。
「あ、うん、ありがとう」
(死んでないから良いか)
『もうよいのか?わざわざ待ってやったのだ。二人纏めてかかって来い。楽しませて貰うぞ。』
「えっ?良いの?じゃあお言葉に甘えて」
カナンとアイは魔法を発動。
黒色の魔方陣が多数出現し、
藍色の大きな魔方陣が現れる。
『人間にしてはやるようだが、所詮人間だ。我には効かぬよ』
魔方陣を見て動じないのは、己の力に自信を持っているか、気を抜いているか。
その間に、魔法が完成。
「じゃあ受けてみろよ。__デスペリア・グラビトン!」
「_絶海・深」
『__なっ!』
魔王が超重力に縛られギシギシと圧縮。
深海に溺れ水圧にて圧縮。
身動き取れない程の重圧。
普通の魔物なら、一瞬でペシャンコになる超位の魔法。
『ぬっ、ぐっ!』
さらに魔法を発動。
カナンとアイで、青色の魔方陣を多数展開。
意気揚々と魔法を放つ。
「ブリザード・ストライク!連発ー!」
「絶氷・零」
吹雪が連続して叩き付けられる。
そして絶対零度の凍気で瞬時に凍らす。
『……』
綺麗な魔王の氷像が出来上がった。
「やったか」
「アイ、やめろ。それは言ってはいけない」
「ウフフ」
ピシピシ__氷が割れていく。
『…な…なめるな!』
ゴオオ!__
炎が噴き出す。
火柱が天まで届くように神殿の天井を突き破った。
怒りを示す真っ赤な炎。
アイは綺麗ねー、と眺めていた。
「ほら、やっぱり復活した」
「これくらいじゃ死なないって知ってたくせに」
「ははっ、そうだな」
『くっ…なんて奴等だ。……くっくっく、我もなまっているな、油断したようだ』
心底楽しそうな笑みで見下ろし、赤色のオーラが増す。
魔力切れが無いかの様に、大きな魔力が流れていく。
赤色の大きな魔方陣が出現。
『灼熱の巨人』
ボオオオ!__
大きな炎の玉が現れ、
5メートル程の人の形…灼熱の巨人が現れた。
灼熱の巨人は神殿内で暴れだす。
「おー、ゴーレムか。あれが街で暴れたらやっかいだな」
「どっち相手する?」
「俺が魔王の相手するよ」
「じゃあ、大きいのと遊んで来るねー。絶海・流」
灼熱の巨人を水で外まで吹き飛ばす。
そしてアイも神殿の外へ飛び出した。
「おし!じゃあやるか!」
ダイヤモンドの三徳包丁を取り出し、包丁に魔力を込める。
『ふん、先程までとは違うぞ?』
「こっちの台詞さ」
赤色の魔力が溢れ、魔方陣が多数出現。
一つ一つが大きな魔力を秘めている。
『炎の鉄鎚!』
大きな炎のハンマーが叩き付けられる。
カナンは包丁を振るう…
「__角切り」
炎の鉄鎚を縦横に切断。
サイコロ状になり四散した。
『珍妙な技を!__炎の鳥!』
炎で出来た巨大な鳥がカナンを襲う。
「__千切り」
いくつもの包丁の軌跡…
炎の鳥がバラバラなり消えた。
『ふっふっふ、紅虎!』
『__ガァッ!』
炎の虎がカナンに飛び掛かる。
「みじん切り」
炎の虎は細切れに…
その時アイが灼熱の巨人を倒して戻って来た。
「終わったよー」
「おっ、早いなー」
「絶氷1発だったよ?」
「足止めにもならなかったな」
『……』
赤色の魔力が増大する。
まるで怒りに応える様に…
『なんなんだ貴様は!__赤龍!』
巨大な30メートルはあろう…
炎で出来た燃え盛る龍が出現。
『喰い殺し焼き尽くせ!』
『__グアアアアアア!』
赤龍がうねりをつけて、カナンを喰らいつこうと大顎を開ける。
カナンも魔力を増大させ一歩前へ出る
「奥義__」
赤龍に一閃…
首を跳ね、
「__三枚下ろし」
ザシュッ__
赤龍とすれ違い様にカナンの身体がブレた。
カナンは魔王を見据え、クルクルと包丁を回す。
遅れて赤龍が三枚に下ろされた。
すれ違い様に右身、左身、中骨に切り分ける絶技。
魔王はまさか赤龍が破れると思わずにポカンとしている。
その様子を見たアイは、意を決してカナンに告げる。
「技名ダサいね」
「言うな」
デスペリア・グラビトン~黒色複合超位魔法、絶望を感じる程の超重力を対象に与える




