神殿へ
南東へ向かい。
かつてオリジンと戦った場所を目指す。
やがて、オリジンと戦った場所に到着。
周囲を確認していく。
「まだ戦闘の名残があるな」
黒い大地の中に降り立つ。
雑草がまばらに生えているが、以前の姿になるのはまだ先の様だ。
熔岩に埋もれた大地。
「オリジン強かったけど魔王もそれくらい強いかな?」
『……オリジンの方が強いかな』
「そうなのか?会ってみないと分からないか?」
『なんとなく分かるよ。何か引き寄せられる様な感覚がある』
「なんだ?魔王同士共鳴でもあるのか?」
『……まずは行ってみよ』
(少し様子がおかしいな)
「そうだな。ここから東だっけ」
オリジンの場所を後にして飛び立ち、東に向かう。
______
「街かな?」
山脈を越え、少しすると、円形の街が見えてきた。
上空から様子を見ると一般的な街に見え、役所など様々な施設、人々が行き交う市場、そして中央には大きな白い神殿が見える。
「え?街中に神殿あるの?復活して戦闘になったらどうすんだ?」
『あの中に何か感じる』
「アイが言うなら間違いないよな、とりあえず情報収集か」
神殿近くの路地裏に降り立つ。
「まずは神殿に行ってみるか」
てくてく歩き、神殿へ向かう。周りには参拝する人々、信仰している神の赤いマークがチラチラ見える。
「でかいなー」
王城とまでは行かないが大きな神殿、本殿だけで二百メートルぐらいある。庭や神官の居住区なども入れたらテーマパークの様な広さだ。
「すげーな。儲かってるのかな?」
お布施いくらかな?と考えながら門の方へ。門は開けており自由に入れる。
植林された木々の間を通り、真っ直ぐ本殿へ向かう。
「ここらへんなら暴れても被害なさそうだなー」
『まだ復活するって決まってないよ』
「まっ、そうだよな。」
中へ入る。
赤い絨毯が真っ直ぐと伸び。
天使の像や綺麗な装飾のある壁。
神聖な雰囲気の中。
ステンドグラスが様々な色で輝いている。
その中央。
一番輝く場所。
「なあアイ、あれか?」
『あれだね』
そこには、1体の女神像。
ステンドグラスの光に当てられ。
微笑みを浮かべるその顔は聖母の様で。
純白の布を纏う姿は神々しく。
一際凄い存在感。
胸元には丸い深紅の宝石がキラキラと輝いている。
「なんか崇められてるけど」
『歴史がねじ曲げられたのかな』
「確かに帝国に封印されてるなんて、王城の書庫にあった本で見付けただけだもんな」
『どうするの?』
「近付けないんだよなー」
女神像の前には柵があり、神殿騎士が守る様に立っている。
「無理矢理調べたらここにいる全員が敵になりそうだ」
『おたずね者だね』
1人信仰心の無いカナンは、近くのベンチの様な会衆席に座る。
「アイ、ここから何か分かるか?」
『んー、引き寄せられる感覚は強くなったけど、まだ分からないわ』
「そうか、どうするかな。近くの信者に聞いてみるか」
辺りを見渡す。話をしてくれそうなおじいさんを発見。しれっと横に座る。
「すみません、この神殿は何を崇めているのですか?」
「ん?旅の方かな?ここは赤の女神を崇めているのじゃよ」
「赤の女神ですか、なるほど。ではこの地に神殿があるのは何故ですか?」
「この地に千年以上前、赤の女神が降り立ち、祝福を与え眠りについた伝説があってな、それでこの神殿が建てられたという話じゃよ」
「因みにどのようなお姿で?」
「深紅の髪の女性の姿をして、それはもう美しかったそうじゃ」
「ではこの街には無くてはならない存在なんですね?」
「もちろん、女神様のお陰でこの街が存在している」
「最近何か変わった事は?」
「最近?女神様の祝福で赤色魔力が増えたぞ。ありがたや、ありがたや」
「そうなんですね。ありがとうございました」
席を元の場所に移す。上を見上げため息を一つ。
「はぁー。面倒だなこれ」
『アキ、赤の女神って何?』
「あー、女神教っていう多神教の中の神だよ。魔法の各属性には色があるだろ?その色に対応した女神がいるんだ」
『じゃあ私は青の女神かしら?』
「ははっ、案外そうかもな」
どうするかなーと、カナンは頭を抱え。
『ウフフ、私はアキの女神だよ』
アイはご機嫌にはしゃいでいる。
その光景を。
女神像は微笑みを浮かべ。
じっと見詰めていた。




