お花屋さんへ
時間は昼過ぎ。カナンは路地裏に行き変装をする。
「ふっふっふ、シーマだと雰囲気で俺だとバレるからな」
取り出したるそれはブレスレット。
「反転ブレスレット・モード・クリスティーナ……これは特定の顔に寄せる事が出来る。妖精王女バージョン!」
ニヤニヤと呟くカナンは、妖精王女ブレスレットを装着。
「カラーチェンジ・シルバー」
銀髪の妖精の様な女子に変身した。
「くっくっく、完璧だ」
路地裏から出ると、一気に注目を集めた。これは少し予想外。ここまで注目されるとは思わなかった。
『なんだあの美少女は!』『か、可愛い』『あんた何見とれてんのよ!』
『そこのお嬢さん、暇なら俺とご飯行かない?』
ナンパされるがもちろん無視。
スルスルと障害物をすり抜けていく。
「目立ち過ぎたかな。そうだよな、妖精王女に似てる女子って目立つよな」
王女は金髪なので王女に間違われる事は無いが、似ていると噂が立ちそうだ。
「まあいいや、今度王女に見せよっと」
家の裏手にある通りに到着。
「ウルカさん居るかなー、おっ、いたいた」
赤茶色の髪をした綺麗なお姉さんを発見。
少し垂れ目のおっとりとした雰囲気の女性だ。
「さて、普段の雰囲気見ないと…どんなプレゼントが良いか分からないからなー」
実際カナンのまま会うとかなり警戒される。
普段の行いがブライトから筒抜けだからだ。
どんな行いかは伏せるとして、全てはブライトの為の変装。
いつものお節介だ。
「いらっしゃいま…せ」
花屋に入ると、ウルカは振り返り、目を見開く。
そこには妖精の様な銀髪の美少女。
お店の綺麗な花が霞むほどに綺麗な少女だった。
「こんにちは、お花を見てもいいですか?」
「え、ええ。どうぞ」
チラチラと見られるが、とりあえずカナンは店内を見る。
昼過ぎにも関わらず新鮮な花が飾られているのは、花への愛が感じられた。
「相変わらず良い店だな」
「あの、前にもいらした事あるんですか?」
一人言を拾われる。
「ん? そうですよ?」
「そうでしたか…(こんな子見たこと無いなぁ)ここら辺には良く来るんですか?」
「ええ、隣の通りにある雑貨屋さんによく行くんですよ」
(まあ、家の店だからな)
「そ、そうでしたか…あの…いえ…何でも無いです」
「どうかしました? あの雑貨屋さん…凄い人気ですよね。お姉さんも良く行くんですか?」
「え、ええ。良く行きますよ…あの…会員の方ですか?」
(会員? ファンクラブか?)
「いいえ? でもお店の店員さん格好いいですよね」
(ウルカさんとこんなに会話続くの初めてだなー)
他にお客は居ないので二人きり。変装している手前、少し気まずいが会話が続く事に驚いた。
「そ、そうでしたか……(こんな可愛い子がブライトのお店に来てるなんて…)」
少しずつウルカの元気が無くなっていく。
「ん?お姉さん大丈夫ですか?何か悩みでも?」
(おうおう、恋の悩みか? こんちくしょう)
「いえ、あの……(ブライトの事だなんて言えない)」
涙目で顔を赤くしている。恋の悩みは重症な様子で、カナンは心の中でため息を付いた。
(さて、切り込むか)
「あの雑貨屋さんの店員さんの事ですか?」
「うっ……(何?この逆らえない空気)」
「好きなんですか?」
「う…あ……はい」
(おっ、口を割ったな)
「お付き合いされてるんですか?」
「いえ……ただの片想いです」
儚く笑うウルカは、とても寂しそうにしていた。
(兄さん…片想いって何やってんだよ)
「ふ、ふふ。そうですか……お姉さん?」
「あ、はい…何でしょう(いや! 目が怖いわ!)」
「告白しましょう!」
「へ? 無理無理無理! ブライトモテるし私なんか相手にしてくれない!」
(確かにモテるもんなー)
「良いんですか? 誰かにとられても」
「嫌…です。でも……駄目だったら、もうお店に来てくれない…」
(似た者同士か!)
「はあ……そうですか。告白しないなら、私が告白しますよ?」
(ふふふ、どう出るウルカさん)
「だっ! 駄目です! 貴女はだめですよぉ……うぅ」
ポロポロと涙が溢れている。接客中なのに泣くほど好きなのか…と、再度ため息が漏れた。
(ごめん、泣かすつもりは無かったんだ。でもこのままじゃ二人は告白しない)
「じゃあ告白しますか?」
「……はい」
「約束ですよ?」
「…分かりました」
(兄さんにはお仕置きが必要だねえ、ウルカさん泣かせて)
泣かせたのはカナンだがもう忘れている。
(ん?ブライト兄さんの気配だ)
「おっ噂をすれば、邪魔者は退散しますねー」
済ました顔で退店。
途中ブライトとすれ違うが、カナンだと気付いていない様だった。
______
「い、いらっしゃい…ブライト」
「やぁ、ウルカ」
顔の赤いウルカが出迎え、ブライトはいつもの爽やかな笑顔。
「「……」」
向かい合い、見つめ合いながら少しの沈黙。
「「あの」」
「「……」」
また沈黙が起きたが、真っ赤な決意の表情でウルカが告げる。
「あのね、ブライト。聞いて欲しい事があって……(あの子は勇気をくれた)」
「どうしたんだい?」
「……貴方が好きです」
「えっ…ウルカ」
「私じゃ…駄目…かな?」
「あ、う、お、俺で、良ければ」
(んだよその返事はヘタレめ)
透明になり気配を消したカナンが、ブライトの後ろでイライラしている。
「えっ? 私で……良いの?」
「う、うん…ウルカが良い」
(はよ抱きしめい! そいや!)
後ろからブライトをグイッと押す。「うお!」
ブライトが押され、ウルカを抱き締める形になった。
「ウ…ウルカ、俺も好きだよ」
「ブライト!」
抱き締め合う二人。カナンはそれを見届けて再び店を出る。
「おめでとう。ウルカ姉さん」
やり遂げた顔で家に帰った。
______
やり遂げたカナンは家で一息。ティータイムをする。
「いやー、良かった良かった」
『恋のキューピット?』
「俺にキューピットは似合わんよ」
『ウフフ、アキ』
「ん?」
『好き』
「…ありがとな」
『ヘタレめ』
「くっ…兄さんに八つ当たりしてやる!」
『ウフフ、返事はいつでも良いのよ? はいかオーケーかイエスで選択してね』
「全部ゴールは一緒じゃねえか」
そろそろバトル行きますかねー




