コレか?
昨日は気持ち良く眠れたので、早起きしていた。
「んあー…清々しい朝だな」
朝日が窓から差し込み、小鳥が囀ずっている。絵に書いたような気持ちの良い朝だった。
「オード兄さんは、朝練か」
カーテンが開いているので、先に起きて広場で自主練習している様子。
寝癖のままリビングへ向かった。
「おはよう、カナン。今日は早いな」
「おはよう父さん」
父は裏方の仕事が多く、朝が一番忙しいのだが、朝に会うのは稀。
「オードは気に病んでないか?」
「大丈夫だよ、元々騎士団に入るつもりも無かったからね」
「なら良いんだが、何か出来ることがあれば言ってくれな」
「ははっ、それはこっちのセリフさ。再来月の終わりから俺、夏休みなんだ。店の事はやるから、2週間くらい母さんと旅行でも行ってきなよ」
「いや、まだまだやる事があるからな」
「それは聞き飽きたよ。夏は母さん誕生日あるよね? プレゼントとか考えた?」
「うっ、まだだ」
「やっぱり……忙しいのは幸せな事だけど。家族の気持ちも考えてね」
「分かったよ。考えとく。全く、昔からカナンには敵わないな。まるで同世代と話してる気分になる」
「ははっ、疲れてるんだよ。プレゼントは安心して、俺が準備しとくよ」
「はははっ、分かった。カナンが用意するならハズレは無いからな。恩に着るよ」
「気にしないで、家族なんだから。ところで花なんて飾ってどうしたの?」
綺麗な白い花がテーブルに飾ってある。いつもは調味料が置いてあるだけなので、新鮮だった。
「ああ、ブライトが買ってきたんだ。たまたまって言ってたぞ?」
「ふーん、珍しいね。花なんていつも貰っているのに」
女装すると花束をよく貰ってるのを見る。買うという発想になるのが不思議だった。
「まあ…ブライトも男だからな。じゃあ行ってくるよ」
「ん? 行ってらっしゃい。気を付けてねー」
父を見送り、まだ家を出る時間では無いのでリビングでティータイム。
「ふうー。あっ学校の魔導具仕上げしなきゃ」
誰か起きてきた。ブライトが爽やかな笑顔を携えて爽やかに朝の挨拶。カナンには眩し過ぎた。
「おはよう、カナン。早いな」
「おはよう、ブライト兄さん」
カナンは白い花を見る。指を差してブライトを見据えた。
「兄さん、珍しいね。花を買ってくるの」
「ん? あ、うん。そ、そう、たまたまだよ」
女装以外で挙動不審なのは珍しい…「怪しいな」…その時、父の言葉を思い出した。
「そんな時もあるさ」
目を合わせない。絶対に何かあると確信。
「兄さん」
「ん?」
カナンは小指を立てる。
「コレか?」
「……どこのおっさんだよ……頼むからカナンは何もしないでくれよ」
「やだなあ兄さん。可愛い弟は優しく見守るに決まってるじゃないか!」
ニヤニヤと嗤う。カナンにとって、いつもの笑顔だった。
「やめろ! そんな濁った目で言われても信じられん!」
「大丈夫だよ兄さん。大丈夫だよ。大丈夫だよー」
「何の暗示だよ」
「くっくっく。本当に何もしないさ。兄さんの幸せを願ってるからねー。プレゼントに困ったらいつでも言いなよ」
「はあ、全く。ありがとな……」
「そいじゃ、行ってきます」
疲れた表情のブライトを見て、ウキウキしながら家を出る。
「さて、確実に家の裏にある花屋のお姉さんだな。確かに兄さんと年が一緒で美人だし、性格が良い。幼なじみってやつだ。上手く行けば良いな。あれ? 付き合ってるのか聞いて無いや。兄さんの事だからまだ付き合って無さそうだけど」
『アキ?』
「どした?」
『私の事はいつ両親に紹介してくれるの?』
「……とりあえずその話は大人になったらにしよう」
『身体は大人よ』
「何言ってんだ、まだ6歳じゃねえか」
まだアイは生まれて約6年
『まだ5歳と11ヶ月よ』
「ははっそうだな。誕生日は、また行くか?」
『もちろん』
誕生日はいつもアイと出逢った場所に行く。
何も無い場所で一日二人で過ごす事にしていた。
アイと雑談しながら学校へ到着。
「おはよう、モリー」
「おはよう、カナン。昨日のあれってカナン?」
「おう、そうだよ。傑作だろ?」
「お兄さん凄かったね。ふふっ面白かったよ。でもあの魔法何? 凄すぎてみんな口開けてたよ」
「渾身の魔法だからなー」
「いや、そういうレベルじゃないでしょ。あんなの上位魔法どころじゃないでしよ?」
「ん? たぶん超位くらいじゃね? 良い感じに作れて良かったよ」
「いや、超位魔法って……カナンが凄いのは分かった。……あれ? 確か銀髪のって……もしかしてシーマってカナン?」
「ん? あー、そうだぞ」
「はぁ……なんか世の中の秘密を知ってしまった感じだね」
「ふっふっふ、なんかあれば相談に乗るよ」
「はははっ、力が有っても傲らないのはカナンらしいね。その時は宜しく!」
「ああ、いつでもいいぜ」
授業が終わり…
「さて、お花屋さんでも行くかなっ!」
寄り道するようだ。




