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社会的に殺す

 

 カナンが悪巧み魔法を作成していたら、夜中を過ぎて外は薄明かり。案の定徹夜していた。


「出来たー……あ、やべ。寝なきゃ…………よし、一分寝た」


 睡眠とも言えない一瞬の仮眠を経て、眠そうな顔でリビングに行くとカタリナが眠そうにぐでっとしていた。


「リナ、おはよう」

「にいちゃん、おはよう。昨日はオード兄さんと何処行ってたの? オード兄さんに会いたいって人が凄くて凄くて大変だったんだから」


 頬をぷくっと膨らまし、プンプンしている。カタリナがカナン以外の事でプンプンするのは珍しく、相当大変だった事が伺える。


「兄さんに用事あってな、ちょっと出掛けてたんだ」


 カタリナのぴょんと寝癖の付いた頭を撫でる。またぴょんと寝癖が立ったので、何回も頭を撫でるとカタリナの機嫌が直って来た。


「ぬふふ。まぁ、みんな兄さんに好意的な人達だったから良かったけどねー」

「良かった。行ってきます」


 家を出て、学校までの道のりを歩いていると、周りから聞こえて来る声は剣技大会の話で持ち切りだった。


『剣技大会の話聞いた?』『聞いた聞いた! 権力で勝つなんて貴族は本当に許せないな!』


 至る所で剣技大会の話。もちろん貴族の悪評に繋がる話になっている。

 娯楽の少ない世界なので、直ぐに話が広まっている。


「良い感じに浸透してるねぇ…これでやりやすい。くっくっく…」



 悪い笑顔を隠さずに学校に到着。


「おはよう、カナン」

「おはよう、モリー」


「いつになく眠そうだねー。なんか作ってたの?」

「ふふふ、魔法の開発だよ」

「悪い顔だね。メガネで陰気に笑うとか、ヤバい奴にしか見えないよ」


「まあ、否定はしない。今日は魔道具科があるから、先に帰って良いからな」

「わかったよ。そうだ、剣技大会の話聞いたよー。災難だったね。貴族は正々堂々戦った結果と言い張ってるけど、みんな噂してる」


「あー、それな。兄さんは気にしてないぞ。むしろ騎士団の誘いに対して断り文句に出来るって喜んでるくらいさ」


「へーそうなんだ。バレたらその貴族どうなるのかな?」

「さぁな。知ったこっちゃ無いが、俺は場を荒らすくらいなら出来るからな」

「無茶しちゃダメだよ。カナンなら何かやってくれそうだから期待してる」

「おう、期待しててくれ」


「「じゃ、また」」



 モリーと別れ魔導具科へ。妖精の様なイケメンがいつもの席に座ってムスッとした雰囲気。周りの女子はその雰囲気のお蔭で話し掛けられない様子。


「よう、クリス」

「あっ、カナン君。…ごめんなさい。力及ばず……お兄さん負けちゃって」

「まあ、気にすんな。オード兄さんは気にして無いよ。」

「それなら良いんだけど…」


 しゅんとする王女だが、カナンは兄が喜んでいる旨を伝える。それでも王女は不機嫌な様子だった。


「それより、あの後どうなった? 俺は帰ったからさ」

「私も帰ったよ! 無いよあんなの!」


 頬を膨らませプンプンするイケメン。仕草が一々女子なので、イケメンにはかなり似合っていない。


「その顔でプンプンするな。まぁ、あいつらには罪を精算してもらわなきゃな…くっくっく」


「ふふふ、悪い顔だね。なんかやるの?」

「ちょっとなー」


「やったら教えてね。なんか楽しそうだし」

「ああ、分かったよ」



「あ、あの!」


 王女と話していると、近くの女子が話しかけてきた。

 とても緊張している様子で、周りの女子も声援を送っている。


「ん? なんだ?」

(あれ? この子って前に公園に居た……)


「誰が本命なんですか!?」

「はっ?」


「いや、あの、この前、公園で……一緒に居た……」


 女子がチラリと王女を見る。王女が続きを言えと威圧を掛けていた。


「あの美人さんは彼女ですか?」


 バッと王女が振り向く。


「か、か、カナン君? か、かかか彼女ってだだだ誰だい?」


 王女は激しく動揺。美人の彼女…美人の彼女と頭の中で反響していた。


「いや、彼女じゃねえぞ?」

「そっ、そうなの?」


「えっ? あんなに密着して…「なっ!」…あっごめんなさい!」


 爆弾を投下し、王女の様子に気付いた女子は逃げるように席に戻る。そして、周りの女子に囲まれて何かを報告し合っていた。


「み、密着って、公園で……うぅ」


 王女は俯き、ぶつぶつと呟いている。

 その様子を、周りの女子は興味津々で見ていた。次、何が起きるのか楽しむように…


「………」

(なんだこれ)


 そこで、思い付いたように王女はバッと顔を上げる。


「デートをしましょう!」

「何でそうなるんだよ」

「デートしてよー」

「いや、立場的に無理だろ」

「むー」

「とりあえず今度部屋に行くから」


 拗ねて泣きそうな王女をなだめるが、悪化する一方。

 爆弾を投下した女子を見ると、バッと視線を逸らされた。


「……待ってる(その時に押し倒せば……)」

「おい、聞こえてんぞ」


「私も今度お店に行くね(カタリナちゃんと会議ね)」

「……おう、わかった」


 王女がピリピリとした雰囲気を発し、女子達がびくびくする授業が終わる。


「クリス、護衛の美人なお姉さんが来てるぞ。名前は?」


 手を振ったらウインクして振り返してくれた。可愛いくてニヤけてしまう。


「うん…待ってるからね。名前は駄目…教えない」

「そうか……じゃあな」


 王女はトボトボと帰っていった。



 カナンは一人になったので、学校を出る。その表情は悪い笑顔だった。

 中央区の学校から貴族街の方へ。


 貴族街は、王城を囲む様にドーナツ状になっている。

 なので自然と王都の中心に行く形になる。

 近くの人気の無い路地裏へ行き、変装をする。


「カラーチェンジ・シルバー」


 髪を銀にし、反転メガネを掛ける。

 シーマの出来上がりだ。


「フライ」

 ふわっと飛び貴族学校の方へ。

 今日は午前中に選択授業が終わったので、カナンは自由の身。

 他の学校はまだやっているので、その様子を上空から見下ろす。


「いやー、流石貴族や有力者の学校だな。綺麗だし、キラキラしてる。なんだあれ、ダンスホールか? すげー」

『アキ、私もアキと踊りたい』

「踊り方知らんし」

『覚えよ?』

「時間あったらな。でも誰が教えてくれんだよ」

『王女ちゃん居るでしょ?』

「王女しか居ないよなー。聞いてみるか」

『ウフフ。喜ぶと思うよ。』

「まぁそうだな。さて…やるかなー」


 カナンは魔法を発動。

 白、黒、紫色の魔方陣を展開。

 目立つようにキラキラと光らせながら、魔法陣は回転している。

 次第に気付く生徒が増えてきた。


『なんだ?魔方陣?』『攻撃か?』『あの銀髪は……』


 やがてざわざわとざわめき、沢山の生徒がカナンを見ている状況が出来上がった。


「はっはっはー! 社会的に死ぬが良い! __メモリートランスファー・ザ・ビデオ!」


 上空にカナンの記憶の映像を巨大化し転写。

 剣技大会の決勝戦の映像を流す。


 _____


『特別ルールを行います! 身体強化、魔法剣など剣に関する魔法の使用を許可します!』


 そして、画面が切り替わり、オードが魔装を展開しベスタがビビっている所から始まる。


『ひっ!』

 蒼い炎がベスタに向かい…


『ひぃぃ、助けてくれー!』


 蒼い炎がカナンのシールドで消えた先…


 ベスタが気を失い、失禁している様子がアップで映る。


 _____



『あれってベスタ先輩?』『えっ? 剣技大会で優勝したんじゃないの?』『ぷっ』

「反応は上々ですなー」


 カナンはニヤニヤしている。


 _____



『あっ! 勝者…』『__待てい!』


 でっぷりとし、ゴテゴテの装飾をしたマルゼンが舞台に上がる。


『大会本部長の私が宣言する! 今のは剣に関した魔法では無い! オードの反則負けだ! よって勝者はベスタ様だ!』


 _____



『えっ?』『ベスタ負けたのに』『あれはマルゼン家の』


「ふっふっふっ、これでも食らえ。テロップ」


 その言葉と共に、映像に文字が浮かぶ。


≪ベスタ選手の対戦相手が使用したのは、かの勇者が切り札とした魔法剣・派生、魔装です。尚、ベスタ選手は試合開始から身体強化魔法を使用。反則行為を行っていました。≫


 ざわざわとざわめく声がカナンの居る上空まで聞こえてきた。


『魔法剣ならベスタの負けじゃないの』『勇者の魔法?』『俺知ってる!』『ベスタ先輩反則してたの?』


「くっくっく。とどめだ! リピート!」


 リピートの言葉で映像が繰り返される。

 再び最初から映像が始まった。


『ウフフ、悪い女ね』

「アイがリピートしようとか言ったんじゃねえか」


 良い反応を貰い、結果に満足したので次の場所へ。


 それを東西南北の区で行い…


「ここで最後だな。メモリートランスファー・ザ・ビデオ! リピート!」


 最後は王城の上空で締めくくる。

 王城の尖塔の屋根に降り立ち、休憩する事に。


「良い汗かいたなー」


 晴れやかな顔で王女に通信をする。


≪カナン君、どうしたの?≫

「外見てみ?」

≪うわ! これって剣技大会の……ぷっ、凄いねこれ≫

「だろ? 頑張って作ったんだよ。この後こいつらがどうなったか教えてくれ」

≪ふふふ、良いよ。聞いてみる。でもこの魔法作ったの? 凄いねーカナン君は≫

「おう、褒めろ褒めろ。俺を敵に回したのが運の尽きさ。おっ? 王女、今尖塔の上だぞー」


 丁度近くの窓から王女が空を見上げていた。


≪あっ、カナン…ちゃん?≫


 通信を切り、王女の近くまでふわりと向かう。


「よっ、今はシーマだよ」

「シーマ? やっぱりみんなが噂してるのってカナン君だったんだね」


 会えて嬉しそうに王女が言うと、カナンは無い胸を張ってどや顔をしていた。


「そうそう俺…私は有名人だぞ」



「ふふふ、なんか秘密を教えて貰ったみたいで嬉しいな。そういえば帝国の件はカナン君なの?」

「たぶんな。噂がどうか知らんが良い迷惑だよ」


 ため息をしながら愚痴っていると、美人のメイドがやって来た。


「メイドさん来てるぞ。これは美人さんだな……」

「あっ見ちゃ駄目だよ! もう! 今度お話聞かせてね!」


 王女はメイドを隠すように廊下へ行ってしまった。


「美人メイドさん、あのお風呂使うのかな?」


 新たな計画が浮上する。


『アキ、駄目よ』

「誰も俺を止められない」

『外に出るよ?』

「ごめんなさい」


 終わったので帰宅。


「ただいまー、リナ」

「おかえりにいちゃん…(王女に会ったな)」


 ムスッとしているカタリナの頭を撫で、部屋に行く。


「兄さんただいまー」

「おう、おかえり。なあ、あれってカナンの仕業か?」


 上空にある映像を指差す。まだ映像は流れていた。


「そうだよ、あと少しで消えるからねー」


「すげー魔法だな。昨日ボソボソ何かしてたと思ったらあの魔法を作ってたのか?」

「そうそう、苦労したんだよー。これでベスタとマルゼンに嫌がらせ出来たかな」

「嫌がらせってか、あれじゃ引きこもるレベルだぞ」

「民の怒りを代弁したのだよ。ふっふっふ」


「あ、うん。そうか」


 嬉しそうに笑う弟を見てオードは思う。


「あー、楽しかったー」


 こいつは絶対、敵に回してはいけない。





メモリートランスファー・ザ・ビデオ~主人公オリジナル、光、闇、空間複合超位魔法、記憶の映像を転写し流す、古い記憶程魔力を使う。主人公は過去の覗き映像を転写しようとしたがアイの妨害により断念する事になる

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