剣技大会を観に行こう
週末になり、カナンはオードの剣技大会の本戦を観に行く。
会場は中央区にある国技館。
「おはよう、リナ」
「にいちゃん…おはよう」
最近元気の無いカタリナは、寝起きでボーッとしながら朝食を食べていた。ムッチャムッチャと素パンを食べながら、虚空を見詰めている。
「リナ、一緒にお出かけしないか?」
「にいちゃんと? …デート?」
両親とブライトは店番、姉は魔法大会の予選で、カナンだけしか観戦に行けない。
「そうだな、デートかな。オード兄さんの剣技大会を観に行くんだよ」
「……観戦デートだ。行く!」
「じゃあ準備してきな、待ってるから」
「うん!」
タタタッと部屋に戻って行った。嬉しそうに走るカタリナを見て、最近落ち込んでいた事を心配していたので少しの安堵。
お茶飲みながら待つ事にした。
「……」
もうそろそろ出ないといけないが…
「……まだかな」
コンコン__
「リナー、何かあったか?」
「……にいちゃん」
「はいるぞー」
「えへへ、アクセサリー決まらなくて。ごめんね」
白いワンピースを着て、髪は二つに結っているカタリナが、黄色、緑色のネックレスを持って悩んでいた。
「うん、まだ時間あるからな。ネックレスか…これ着けるか?」
ストレージから、オレンジ色の少し細長いマーキーズカットのダイヤのネックレスを出して渡す。
「わあー綺麗…これにする! にいちゃんありがとう!」
ダイヤモンドを眺めて、本物の宝石だぁ…と、ニヤニヤしている。
「じゃ、決まったら行くかー」
「うん!
「それじゃあ中央区の国技館に行くぞ。時間はあるけど、路線馬車で行くか?」
「時間があるなら、歩こう?」
「わかった、この大通りを真っ直ぐだから」
久しぶりにカタリナと出掛けるので、カナンはカタリナの手を繋ぐと、カタリナがニヤニヤしている。
「にいちゃん、週末いつも居ないから…つまんない」
「あー…なんか予定を入れちゃうんだよな」
「にいちゃんとデートしたいのに…」
「時間があったらな」
「絶対だよ。今日はメガネしないの?」
「学校じゃないからな」
「えへへ、にいちゃん格好良いなー」
雑談しながら国技館へ到着した。剣技の大会は、基本的にこの国技館で行う。室内なので、雨が降っても大丈夫で収容人数が多いのが特徴。
ざわざわと、観客が入ってくる。
「中等部の試合だからそんなに居ないと思ったけど、結構人居るなー」
円形に客席があり、中央にステージがあるタイプの国技館。
大体一万人くらい入る大規模な施設。
「迷子にならないように、にいちゃんにひっつくね!」
「とりあえず見やすい所、あっ…そこにしよう」
ちょうど正面から観れるところに、座れる場所があった。
そこに二人で座る。カタリナはカナンにべったりで、カタリナと同年代の男子が悔しがっている。
「えーっと、トーナメントで勝ち抜きなんだな。ルールは魔法無しで剣技のみの戦い…オード兄さんはシードで二回戦から…二回戦に勝ったら次が準決勝かぁ…」
「オード兄さんは強いから、優勝間違い無しだね」
「そうだな。でも応援しないと兄さん寂しがるぞ?」
「ふふっ、そうだねー」
「ん? 貴族席に座ってる人がこっち見てるよ」
「何処だ? 遠いからわかんねえなー。顔が向いてるだけじゃないか?」
貴族席は上の階から個室で試合を観れる席。国が主宰する剣技大会なので、貴族は当然居る。
「んー、気のせいかなー(あれは……たぶん妖精王女)」
カタリナがドヤ顔しながら、カナンの腕を組んでひっついている。そして、グリグリと頭を肩に押し付けていた。
貴族席の人が立ち上がっている。
「リナ、どした?」
「少し寒くなっただけ(ふふっ、慌ててる)」
小さな争いが始まった。
しばらく待っていると、オードの出番が来た。
ざわざわ…
『キャー』『オード君頑張って!』
「おっ兄さんだ。兄さんがんばれー!」
オードがカナンの方をを向き、手を振ると…キャー! という黄色い声援が飛び交った。自分に振ってくれたと喜ぶ女子達。
「うえっ、この距離から聞こえるのか。すげーな兄さん」
「兄さん野性的だね。人気が凄い」
ファンクラブらしき集団が、オードの名前が書かれた看板を持ち応援している。
『開始!』
試合が開始され、オードがスッと相手とすれ違う。
そして、相手選手が崩れ落ちた。
『キャー』『格好いい!』
「うわー、兄さん張り切ってんな」
「良く見えなかった」
「すれ違い様に相手のみぞおちに柄を食い込ませたんだよ」
「痛そう」
相手選手が運ばれていく様子を眺めるオードは、その場を離れない。
そのまま直ぐに決勝が始まるようだ。
「兄さんがんばれー!」
「兄さんがんばー」
オードが余裕の表情で、カナンに手を振る。
カナンは振り返すが、女子達が前に飛び出し両手を振ってカナンの妨害。カナンは苦笑しながら手を振るのを辞めた。
「相手は、ん? 聖騎士の子孫らしいぞ」
「へー、にいちゃんが昔読んでた本に出てきた人でしょ?」
「そうそう、聖騎士」
「強いの?」
「さあなー、勇者の御守り役さんだったから、実力は確かなはず」
「御守りとか勇者って問題児みたいだね」
「そうだぞ、問題児だ。勇者というのは風呂を覗こうとして、バレたから他人に罪を着せる様な奴だからな」
(アレは許さん)
「あっ、始まるねー」
『開始!』
「子孫ねえ…聖騎士の実力に届くくらいなら、兄さんは負けるだろうなぁ」




