デート
カナンとアイは、学校の帰り道に魔道具店へ寄り道。
路地裏に入り、アイを呼ぶ。
「アイ、出て来れそうか?」
『うん、大丈夫』
アイが石から出て来た。
「おっ、似合ってるな」
「えへへ」
水色のシンプルなワンピースに、カーディガンを羽織り、少しヒールのあるサンダル。胸元には、カナンがプレゼントしたレインボーダイヤで出来たハート型のネックレスが輝く。
季節は春と夏の間なので、丁度良い格好。
周りの女子と格好は似ているが…
『可愛い』『うわぁー』『俺声かけに行こうかな』
「相変わらず美人だよなー」
路地裏から出ると注目が凄い。魔王感が無くても充分に目立つ存在だった。
「アキも格好良いよ」
恥ずかしそうに、はにかみながらカナンのメガネを取ると…『『『はぁー』』』
周りからため息が漏れ、幸せオーラ全開のカップルに変貌していた。
「じゃ、魔道具店に行くぞ」
「うん!」
手を繋がれ魔道具店へ。アイと一緒に魔道具店の中を回っていく。
「いらっしゃいませー」
「どんな魔道具作るの?」
「それなんだよなー…他の魔道具職人も分かる様な特許となると…理論を公開しなけりゃいけないから、性能のヤバくないヤツなんだが……まぁ…思い付かなかったら家にある魔道具でも良いんだけどさ」
家の魔道具は全てカナンが作っている。洗濯機や掃除機など、便利家電を参考にして。
カナンの実力は前世の知識のお陰で、最高峰の実力なので加減が難しい。
「こういうのは?」
アイが指差すのは、シールドが発動するアクセサリー。
「こういうのって所有者の魔力次第で強弱あるからな……俺が作るとヤバイの出来るし、子供でも大丈夫なのは……いっその事、防犯ブザーにしてみるか」
大型の警報器はあるが、個人が持つものは無い。
「魔力流すと音が鳴るの?」
「そうそう、音が鳴るだけだから、子供とかでも使えそうだろ?」
「ウフフ、そうね。アキは子供には優しいよね」
「まあな。前世は、ちび達に会う前に死んじまったからな…」
スラムで空腹で倒れそうな時に、孤児院に食べ物を分けて貰った事を思い出す。孤児院を思い出すと、悲しい記憶も同時に思い出してしまう。
「王都に孤児院は無いの?」
「あるぞ。俺が死んだ後、聖女が支援したお陰で今は教会が主導しているから、悪い環境じゃない。聖女には、本当に感謝だな」
「ふーん。アキって聖女の話するとき、優しい顔になる……好きだったの?」
「まぁ…好きだったかな。もう会う事は無いから、思い出の一つだよ」
「そう…今は私が居るからね」
アイはそう言って、ピタリとくっ付いてくる。アイの身体は冷えているので、ひんやりと気持ち良い。
「私と結婚した後なら、何人かと結婚して良いのよ? 私は子供作れないし。勿論合わない子は嫌だけど」
アイは人間とは違うので、子供は出来ない。魔力体なので、寿命が長く、子供を作る必要が無い。
「えっ? なに言ってんの?」
「ウフフ、居るじゃないの。アキの事を好きな子」
「……ん? 王女は身分違いだし、後は……誰?」
「あっ、男は駄目よ」
「いやそれは無いし、とりあえず出るか」
チラチラと見られていたので退店。市場調査が終わったので、もう用は無かった。
中央区を歩き、アイの要望で最近出来た大通りの公園に到着。空いているベンチに座った。
「公園デートね。アキはいつもモリーとしているから羨ましくて…公園デートしたかったの」
「いやモリーのはデートじゃない。あいつは男だ」
「ウフフ、そうね」
楽しそうに笑うアイに、少しだけ見惚れる。陽の光に照らされるアイは、女神が降臨したかのように美しかった。
「ん? あれは…」
「どうしたの?」
「いや、魔道具科の女子だよ。見た事あっただけだから」
「こっち見てるわね、見せつけましょ?」
アイは腕を絡めて、魔道具科の女子に視線を向ける。
魔道具科の女子は、こちらを見て目を見開き、フリーズしていた。
「ん?どうしたんだあいつ」
「きっと彼女の中で、番狂わせが起きたのね」
「何それ」
「ウフフ」
魔道具科の女子は混乱していた。
あのメガネは男も女もいけるヤツだったのかと。
あの美人な彼女は知っているのだろうか。
学校では男とイチャイチャしているメガネなのだと。
魔道具科の王子に彼女が居たという衝撃。
勿論、腐の人々が驚愕に包まれた。
東区に差し掛かる頃に、アイは疲れた顔を見せる。
「んー…そろそろ限界かも」
「そうか、また魔力溜めたら出てきたら良いさ」
「うん、またね」
シュッと石に戻っていった。
『あっ』
「どうした?」
『お別れのちゅーしてない』
「いや、しなくていい」
『ウフフ』
帰宅。
「ただいまー、リナ」
「にいちゃんおかえり」
カタカナがトコトコとカナンに近付き、抱き付いてくる。最近は日課のように匂いを嗅いでいた。
ふがふが__
「___っ! に! にいちゃん!」
「えっ? どした?」
「(広大な海の様な……それでいて深い……こんな人知らない……な……に……! 密着していた……だと!)」
妹がぶつぶつ言いながら、泣きそうになっている。
「リ、リナ? なんか学校であったのか? 大丈夫か?」
「に…にいちゃん、彼女…出来た…の?」
「ん?いや?」
(アイは彼女って言うのとは違うしなー)
「そんなはずは……じゃあ広い海の様な人って心当たりある?」
「海? そうだな。心当たりあるな」
「その人誰?」
「んー、なんて言ったら良いんだ? アイって言うんだが…じゃあ…今度紹介するよ」
「えっ? う、うん。楽しみにしてる(妖精王女なんて相手にならない最強のラスボスが存在している! どうなっているの!?)」
カタカナはフラフラと去っていった。
「大丈夫か?リナ」
『ウフフ、妹ちゃんに会うの楽しみね』
「いじめんなよ」
『大丈夫よ、きっと仲良くなれる。ウフフ』




