応募
結局カナンは、楽しくなってダイヤモンドを徹夜でいじり倒した。
「おはよう、エレン姉さん」
「あらおはようカナン。ふふふ、眠そうね」
「なんか夢中になっちゃってねー。はいこれ」
新作ブレスレットを渡す。
防犯機能付きの10カラット赤色ダイヤモンドブレスレットを渡す。
「新作? ありがとう。綺麗ねー……あれ? これって……ダイヤ?」
カナンがいつも高価な物を与えているので、眼の肥えた姉には分かるようだ。
「防犯機能付きだから安心してねー。前のよりは安いよー」
「安…くないよね? いつも思うけど何処で手に入れてるのよ?」
「ちょっとした依頼の報酬だから気にしないでー。そいじゃ行ってきまーす」
「……依頼って。危険な事に手を出してないよね? 無理しちゃダメよ。でもありがとう……綺麗ねー」
赤色のダイヤモンドが良く似合う。姉の綺麗な金髪と、赤いブレスレットが姉の美貌を後押しするように輝いている。
「大丈夫大丈夫」
(姉さんも綺麗だよ)
姉は、カナンが何をやってようと、あまり気にしないで受け入れてくれている。カナンだから良いでしょ、と言われているが、それがとても助かっていた。
家を出て思考の海に潜りながら歩く。
(とりあえず今週はダイヤの研究かなー)
ふと、大通りにある掲示板を眺める。お知らせや、探し人など様々な情報が載っていた。
「探し人っと…フジは無くなったな。変わりにシーマがある。依頼人は帝国? ……ん? なんで?」
『この前の遺跡じゃない?』
「あー、そうだった。オリジンのせいで忘れてたわ。派手にやってみんな置いてきたんだっけ」
『アベルも探してるんじゃない?』
「やめろ、寒気が。鳥肌やべえじゃねえか」
勇者に似ているヤツを思い出す。爽やかな笑顔。話を聞かない自分の正義を押し付けるタイプ。
『ウフフ』
「一応気になるから先祖が誰か、今度聞きに行くか。急ぎじゃないし今度でいいか。遺跡の資料も見なきゃな。やることいっぱいだな……そうだ、アイはしたい事とかないのか?」
『私はアキと一緒に居れればいいのよ。王都や帝都を一緒に歩きたいくらいだし』
「そうか、じゃあ今から魔力溜めとけな。帰りに少し歩くくらいなら出来るだろ」
『やった、そうするね。ウフフ。』
契約で縛っているので、アイはカナンが魔力を供給しないとブーストを掛けない限り自力で魔力回復がしづらく、魔力を抑えるのが難しい。
今でも顕現出来るには出来るが、威圧感と魔王感が半端じゃなくなるので王都民がバッタバッタ倒れる未来が浮かぶので準備が必要なのだ。
なので解放した方がカナンの負担が減る。
実際信頼関係が出来ているので、今すぐ解放しても問題は無い。問題は無いが…
(説明しないといけないよなー)
解放するということは、エンゲージの解除。これを説明しないといけない。
(どう考えてもエンゲージの解除はさせてくれないな。それか、新しくエンゲージしないと嫌って言うだろうし…)
歩きながら将来の事や、エンゲージについて考える。
(一緒に生きると決めているから、別にアイと結婚は嫌じゃないんだけど、まだ12歳だしなー)
もうしているので手遅れだが…
(まだ若いし、中等部を卒業したらまた考えるか? 早い方が怒られるリスクも低いし…保留だな)
『アキ』
「ん?」
『デートだね!』
「ああ、そうだな」
『あら? 素直ね』
「うん、まあ帰りにな」
『ウフフ』
______
「おはようモリー」
「やぁ、おはようカナン。眠そうだねー」
「まっいつも通りさ」
「あはは、そうだね。そういえば前に話したシーマって人は、帝国の危機を救ったらしいね。国が探してるけど見つかったのかな?」
「見付かって無いんじゃね? まだ探し人のチラシあったぞ」
「なんか国を救ったのに、おたずね者みたいになってるよねー」
「全くだ、良い迷惑だよな」
「凄い魔法使いみたいだね、二万の軍勢を数分で倒したって」
「そりゃすげーなー」
(客観的に褒められると変な感じだなー)
「なんか伝説の魔法使いみたいだねー」
「ん? そんなのいるのか?」
「うん。なんか貴族の蔵で、200年前の勇者パーティーの誰かの手記が見付かったらしいんだ。それには勇者より強くて、凄い魔法使いが居たんだってさ。本当かどうか分からないけどね」
「そっか……案外そいつかもな」
(誰の手記だろう……王女に聞いてみるか)
「そしたらロマンがあるよねー。あっ、そういえば魔道具コンテストは出ないの?」
「なにそれ?」
「掲示板見なよ…なんか魔道具のコンテストで入賞したら魔導具職人の免許がすぐ取れるらしいよ。良い作品なら特許取れるって」
魔道具には特許があるので勝手に複製すると罰せられる。
「えっ? まじ? やるやる」
「応募締め切りは今週中だからねー」
「優勝狙うか、いや…あんまり凄いのだと危険か。モリーありがとう、早速応募してくるよ」
「ふふっどういたしまして」
授業が終わり、早速教員室で応募してきた。
「応募完了。選考基準はオリジナリティー、実用性、機能性などによる……か。提出は来月中ねえ、なーに作るかなー」
カナンの作品は基本オーバースペックなので、基準が分からない。一般の基準を調べる事にした。
「帰りに魔道具店よるかー。アイ、寄り道するぞ」
『ウフフ、良いよ』
アイはいつにも増してご機嫌な様子だ。




