魔法書店
おはようございます
ブライトとエレンには喜んで貰え、カナンは少しホッとした気持ちで過ごした。
ブライト11歳、現在初等部6年。来年カナンが初等部に入学したら、中等部へ行ってしまう。カナンは少し残念な気持ちだが、格好良い兄と比べられると思ったら少しだけ安心している自分が居て少しの葛藤。
今度はオード兄さんに何か作ってあげるかなー、筋トレグッズだな…と呟きながら少し曇った空を見上げる。
今カナンは西区へ来ている、図書館には行っていない。今日は司書のおねーさんが休みだからだ。シフトは頭に全て入っている。少し自慢げな表情から察するに抜かりは無い様だ。
図書館の前を通りすぎて、てくてく歩く。そろそろ料理するかなーと呟きながら、八百屋や魚屋を冷やかしながら通り、奥まった路地の奥の怪しげな家に到着。
「ごめんくださーい」
「いらっしゃい、おつかいかい?」
「うん、見させてもらうねー」
魔法書店だ。中央区の魔法書店は有名でメインストリートにある大きな店。国中から魔法使いがやってきては、理論を話し合ったり、交流の場がある賑やかな場所。
対してこの魔法書店は奥まった路地にあり、地元の人も知らない様な店。
カナンはこのマニアックな雰囲気が好きでたまに来ている。
「さいきん何か新しいの入った?」
平積みにされた本が多い。在庫が溜まっているのか売れていないのか、カナンは宝探しと呼んでいる。
「変な魔法書は入ったよ、っとこれだな、ほれ」
この国の魔法書は1冊で1~5個の魔法が載っている。ピンキリでほとんどは役に立たないか同じような魔法の言い回しを変えて書いてあるものや、掘り出し物が結構あったりする。
基本は同人誌くらいの薄さ。
大きいものは魔法大全や魔法辞典なんて呼ばれたりする、平民じゃ手は届かない値段だ。
「…これどこで手に入ったの?」
「それは行商人の伝だね」
「いくら?」
「金貨5枚」
「買うよ」
金貨5枚を取り出し渡した。見覚えのある本。魔法書では無い。日本語で書いてある本だ。
「まいど」
「本当に掘り出し物だなー、こんなところで見つかるなんて」
店を出て開いてみる。本の内容は前世のレシピ本だ。世には出してはいけないものがズラリと記載されている。禁薬、英雄の薬も載っている。
(多分失われたレシピだから凄い価値があるんだよなー)
「ストレージ」
空間魔法でしまう。
(死んだときにぶちまけられたのかな?)
「だとしたら日記も…読まれたら恥ずかしいな」
空間魔法でしまった荷物等は、死んだらしばらくして異空間から排出される。
(なんにせよあって良かった)
禁薬といっても人を助ける薬もある。
(当時は強くなるために必死だったからな、色々な国の宝物殿に忍び込んだっけ)
前世で国宝などの盗みはしていない。某RPGにあるようなステータスを上げるものや、ドーピング薬を探していた。
そして帝国の宝物殿で禁薬のレシピを見つけ、書き写した物が大半。
「副作用の無い英雄の薬でも研究するかな…」
「なんにせよ、これは絶対に保管だな…特に妹には絶対に見せられない…」
ストレージ~空間属性中位魔法、物を仕舞うことが出来る空間を作り出す。死亡したらしばらくして周囲1キロにポンポン排出される。