実は…
家へと帰宅。
オードが筋トレする様子を見ると、腕立て伏せなのだが足が浮いている。本物の腕立て伏せを目の当たりにし…呆れた目をオードに向けた。
「ただいまオード兄さん。来週、本戦なの?」
「おう、おかえりカナン。来週だなー。今年も優勝目指すぞ!」
「兄さんなら優勝出来るよ。来週は応援しに行くね」
「おう! 頼んだ!」
部屋へと戻り、50カラット程のダイヤモンドを一つ取り出す。
「前に見たダイヤと少し違うなー。一度オリジンと同化したせいかな?」
魔力を流してみると、流した属性によって変化。赤、青、黄色と変化させて少し遊んでみた。
「おっ、色が変わった。属性によって色が変わるのか……不思議だな……じゃあ、全部だと」
虹色に輝くダイヤモンド…レインボーダイヤモンドに変化した。この世界には存在しない全属性を含んだダイヤモンド。価値は…王族でも貯金しないと買えない値段になりそうだ。
「うわー綺麗だな。レインボーダイヤってやつか……」
『アキ、それで結婚指輪作ってね』
「……普通の指輪なら良いぞ」
『ウフフ』
「そうだ、アイの魔力入れたら藍色になるんじゃないか?」
『やってみるね』
にゅっと石から右手が出て、ダイヤモンドに触れる。魔力を流している様子だが、弾かれていた。
『……色、変わらないよ』
「あれ? ……ってことは吸収したオリジンの能力?」
『大儲けだね』
「いや…そうなんだが、この能力? 他に使い道無いかなー」
『形は変えれるの?』
「そうだな、モデル・カット」
形が変化。ラウンドブリリアントカットになった。輝きが増し、石からうっとりするような雰囲気が漏れている。
『ウフフ、綺麗ね』
「もうちょい行けるかな? モデル・カット」
144面のラウンドブリリアントカットに形を変える。
先程よりも、キラキラと虹色の輝きがすごい。
『わぁ! 綺麗ねー!』
「他には…繋ぎ合わせられる。沢山あるし、武器と防具でも作るかな」
『私も欲しい』
「どんなの欲しい?」
『メリケンサック』
「……殴るの?」
『うん』
「恐いから、せめて手甲にして」
『可愛いのにしてね』
「はいはい」
『アキって武器要るの?』
「一応使ってたぞ、包丁にフォークにナイフに麺棒とか」
『お料理グッズ』
「当時は武器なんて支給されなくてなー。でも包丁に超振動の効果を付けたら、勇者の聖剣より切れたぞ」
『アキらしいね。じゃあ包丁作るの?』
「んー…そうだな。使いなれてるし、料理も出来るし」
『剣とか作るのかな。と思った』
「あんまり長いと、魔法使いにはちょっと邪魔なんだよ。別に氷とか炎で刀身なんて長く出来るし」
ダイヤモンドを二掴み程取り出す。
「モデル・ナイフ」
ダイヤが結合し形を変える。
虹色に輝く三徳包丁になった。
『贅沢な包丁ね』
「魔力の通りも良いから、ダイヤモンドも切れる包丁だなー」
再びダイヤモンドを出して、ミスリルも取り出す。
「アイ、ネックレス作るけど…形どうする?」
『ハート』
「はいよ」
ダイヤをハート型にして、ミスリルでチェーンと台座を作り取り付ける。
石から手が出てきたので、ほいっと渡す。
『ウフフ、ありがとう。確かにアキから愛を受け取ったわ。今すぐ教会で祝福受けよ?』
「………」
この世界は教会で二人が同意し、一緒に祝福を受けたら結婚という扱い。離婚などは二人が教会へ行き、解除する。死別は自動的に解除。重婚も可能だ。契約魔法の一種である。
極端な話、祝福さえ受ければどんな者とでも結婚出来る。同性、動物、魔物だろうが結婚出来る事になる。
実はカナンもその祝福が使える。
祝福の魔法の名前は、光と闇の複合魔法…エンゲージ。
お互いの居場所が何となく分かったりする契約魔法。
一般的には祝福と言っているので、魔法名を知っているのは少ない。
(契約魔法だからなー。エンゲージの事を言ったらどうなるか……)
アイに掛けている契約魔法…コンファインメント・エンゲージ。同意により閉じ込める魔法。
エンゲージよりも強力な契約だ。
カナンは強くなって世界を回る時、その契約を解除するつもりだとアイには伝えている。
アイも石から出られ、カナンと並び立って旅が出来るので一応同意している。
だが、カナンは最近嫌な予感がして、密かに祝福について調べてしまった。
そして重大な事に気付き…驚愕する。
(実は祝福を受けて結婚しているなんて言えねえよ。バレたら絶対契約解除させてくれない……監禁魔法で結婚とかハイレベル過ぎる……するなら普通が良いし)
今のところは秘密にするらしい。




