宝石を回収
「アイ、とりあえず戻っとけ。腕、再生させるだろ?」
「ウフフ、そうね」
アイは石に戻っていった。
カナンは、ふぅ…と一息。ダイヤモンドの小山をボーッと眺める。こんなにも大量の宝石なんて見た事は無い。魔石の山なら見た事があるが、こんなに綺麗では無かった。
「…すげー量だな」
『いくらくらいになるの?』
「想像つかないな。国家予算の十倍は軽く越えるだろ。まぁ、異世界のダイヤモンドだし、売らなくても何か活用法はあるさ」
リーリアに連絡を取る。依頼を完了した報告の為。
「リーリア」
≪アキー、おっ? 以外と早く終わったようだね≫
「お陰さまでな。精霊達には、頼むからちゃんと言うように言っといてくれ」
≪はーい、反省してるみたいだよ。人間はオリジンに勝てない…断られるかもしれないからって言えなかったんだって≫
「あー、まあ気持ちは分かるよ。あんなの破壊兵器だもんな」
≪報酬は今度持ってくるって、じゃぁ気を付けて帰ってねー≫
「わかった。また後でな」
通信を切る。
「さて…」
周囲を見ると、辺り一面に冷えた溶岩になっており、高温によるガラス化やダイヤ以外の宝石も見え隠れし、キラキラしている。
「ん? あれ?」
『どうしたの?』
「ここって山だったよな」
『ウフフ、無くなっちゃったね』
山は既に無くなっており、平地になっていた。霊山が無くなった事による、大地の変化はあるだろうが、暴君のオリジンが居なくなった事の方が安心だ。
「あの山って、多分オリジンが眠って…地盤が隆起した場所だったんだろうな」
『他の宝石持っていかないの?』
「ん? あー……時間かかるぞ?」
『がんばれ』
「ははっ、わかったよ」
歩き回り、冷えたマグマから顔を出している宝石を回収していく。
「あいつ色々溜め込んでたのかな? あっアイ、アクアマリンみたいな宝石があるぞ」
藍色の宝石を手に取る。海の様に煌めき、アイによく似合いそうな宝石。
『アクアマリン?』
「海の水の様な宝石だよ。確か、石言葉は…幸せに満ちるだったかな」
『幸せに満ちる…私とアキの事ね。それでアクセサリー作って』
「はいよ」
『ウフフ』
様々な色の宝石を回収していく。異世界の宝石なので、名前は違うがルビーやサファイア、エメラルドなど様々だ。
「流石に溶岩の中までは見ないからな」
『ウフフ、充分よ』
「そいじや、帰るかー」
荒れ果てた大地を飛び立ち、精霊の森を目指す。
『アキ』
「ん?どした?」
『頭痛いの大丈夫?』
「ああ…さっきまで痛かったけど、今はなんか調子良いんだよな」
『よかった』
「ありがとな」
カナンは山脈を越えた所で、自分の中の異変を感じていた。
「んー?」
『どうしたの?』
「やっぱり赤色の適性が上がってるな」
『さっきまで溶岩の中に居たからね』
「それもあるけど、崩壊使った時に力を吸収したみたいだぞ」
『凄いのね、あんな魔法もすぐ作れるし』
「まあ固有能力みたいなモノだからな」
『アキのオリジナル魔法って…少しこの世界の魔法とちょっと違うわよね』
「そうそう。オリジナルの魔法を作る時に、地球の法則や常識を引っ張って来れるんだ」
『ずるい能力』
「アイもすげーの持ってるだろ?」
『ウフフ』
雑談をしながら、精霊の森に帰るとリーリアがくるくる回りながら飛んで来た。お疲れ様ーと言うように、矢印もふよふよとやってくる。
『アキー、アイーおかえり!』
「『ただいま』」
「そうだ、オリジンについて詳しく教えてくれないか?」
『んー…そんなに活動しない奴だからなー。確か海と空にも居るよー。場所はわからないけどね』
「後の奴は、害は無いのか?」
『どうだろうね。今の所は空は寝ながら漂ってるだけで、海は泳いでるだけだと思う』
「流石にもう戦いたく無いからな。どんな奴なんだ?」
『空は普段透明だから姿は分からないけど…精霊が穏やかだって。海は大きい魚? こちらも穏やかだって』
「空を飛ぶ時、気を付けようかな…魚は鯨かな? 害が無さそうで良かったよ」
『疲れたでしょ? ゆっくり休んで』
「ああ、そうするよ。またな」
『じゃあねー』
「『バイバイ』」
カナンは笑顔でリーリアに手を振り、王都へと帰っていった。
『あれ? なんか言い忘れたかな? ……んー……まあいっか!』




