イケメンと話す。2
「おはよう姉さん」
「カナンおはよう。眠そうね」
「ちょっと新作をねー」
「無理しちゃだめよ。でもこの前貰ったネックレスだけど…凄く綺麗ね。宝石の部分が4色に光るんだもの」
精霊の依頼の報酬…精霊石をよく貰う。姉の為に作ってみたのだが、姉はまだその価値を解っていなかった。
「その石は特別だから、非売品だよ」
「そうなの? なんか自分だけ持っていると嬉しいわね」
「魔法が使いやすくなる宝石なんだ。あんまり外に出しちゃダメだよ」
「へぇ、凄いわね。これ売ったら高いんじゃない?」
「そうだね。黒金貨十枚は軽くするんじゃない?」
「……えっ?黒…」
「大事にしてねー」
「え…ええ」
カナンのプレゼントがいつも高価な物のせいで、姉の事が好きな男達のハードルが、かなり高くなっていた。
黒金貨十枚は、大体一億円。気軽にプレゼントするカナンがおかしい。
「あれ?姉さんの婚期が遅れそうなのは、俺も原因ある?」
それでも、自覚はあるので一応気付く。
「顔でもお金でも靡かない、残るは性格…いやオード兄さんやブライト兄さんほど良い性格の人居るか? あれ? 姉さん詰んでる?」
姉の将来が不安になってきた。
「うん、学校行こう」
______
今日は魔道具科がある日なので、早めに来て席を取る。
実は魔道具の世界は女性が中心だ。それは聖女が魔道具研究をしていた事に起因し、憧れる女性が増えた為。
だからこのクラスは大半が女性。
(隅っこゲットー)
本を広げて読んでいると、隣に誰かが座る。カナンは解っているので座った時に本を閉じて隣を見ると、以前よりも妖精度が増しているイケメンが居た。
「おはよう、カナン君」
「おう…クリスおはよう」
周りの女子は既に鼻血が出ている。反転メガネの効果が恐ろしく作用しているので、クラス外からの女子も覗いている。
「なあクリス、その顔は刺激が強いらしいぞ」
「そうかな? でも私はカナン君に見てもらえれば良いから」
カナンは王女の気持ちは知っている。しかし、そもそも身分が違うので、お互いビジネスパートナーとしての理解を深めている最中だ。今後の事は分からないが…
「いやぁ…清々しい程イケメンだなー」
「カナン君もイケメンでしょ? えいっ!」
「あっ…」
メガネを盗られ、カナンの顔が解るようになってしまった。これでもう収集は付かなくなりそう…
『キャー!』『イケメンの絡み!』『私もうダメ!』『ハァハァハァ』
「うわ…このクラスどうなってんだよ…返して」
「だーめ。この時間は普通のメガネにして!」
「まあ、いいけど。とりあえずそれ返して」
普通のメガネを装着し、阻害メガネを返して貰う。最近押しが強くなってきている王女は、今が攻め時と思っている。
「カナン君カッコいいねー。ふふふ…」
「おい、その顔で頬を染めるな」
『もう…駄目…』『あぁ…』
バタッバタッバタッ__
魔道具科目は50人程、女子は40人。
百合派の1人を除いて、全員保健室に運ばれてしまった。
魔道具科に居る二人の王子…そのロマンスを見れなかった者達は血の涙を流したという…
「そういや週末暇か?」
「デートの誘いならもちろんだよ!」
「ちげえよ、週末店番だから暇だったら来るか? 兄さんを拝ませてやるよ」
「店番なんだね。時間は分からないけど行けると思うよ。住所は後で教えてね」
「はいよ。後これやるよ、要件ある時…お前の家に行かなきゃいけないから」
イヤリング型の通信魔道具を渡す。
「これは? イヤリング?」
「通信の魔道具だよ。これに魔力流すと相手に伝わって、相手が魔力を受け取れば会話が出来る」
「凄い魔道具だね。ってことは…いつでもお話出来るの?」
「俺が受け取ればな、あまり長時間話すと魔力切れで倒れるから注意な」
「ありがとう…宝物にするね」
キラキラした表情で、魔道具を眺めては嬉しそうにしている。
(渡さない方が良かったか? でも不便だからなー)
「護衛の綺麗なお姉さん来てるぞ。名前何て言うの?」
「だっだめだよ! 教えないよ! もう! 夜連絡するからね!」
王女は帰って行き、魔道具科を見渡すと、もう誰も居なかった。
「さて、帰るかー」
魔道具科がある日は、モリーは先に帰っているので、そのまま帰宅。
「ただいま。リナ」
「にいちゃんおかえり」
カタリナはそう言って、嬉しそうに抱き付いてくる。
くんかくんか…
「にいちゃん…良い匂いがする。…身分の高い匂い……っ!」
「ど、どうしたリナ…」
「まさか…そんな…」
カタリナはふらふらと去っていった。
「該当するのは…妖精王女…間違いない…最大の敵が出た…」
何かぶつぶつと呟いている。
「リナ大丈夫かな?」
部屋に戻り、新しい魔道具開発をしようと思った所で通信が入った。
ヴヴヴ__「王女か? どした?」
≪カナン君!ホントに話せる!≫
「あー、お試しね。魔力の減りどうだ? 辛いなら俺から掛けるぞー」
≪大丈夫っ。こんな凄い魔道具ありがとう!≫
(最近口調もくだけて来たよなー。これが素なのかな?)
「おー、出れない時もあるからな」
≪私以外の人も…これ持ってるのかな?≫
「ん? 二人目かな」
≪そ…そっか。…女の子?≫
「あっ…冗談冗談。王女が最初さ」
(もう、いないもんな)
≪ホントに?だったら嬉しいなー≫
「そうだな。こんぐらいにしとけよ」
≪うん、おやすみなさい≫
「おやすみ」
「……さて、収納の魔道具でも作るかね」




