悪巧み
「おはよう母さん」
「おはようカナン早いのね」
カナンは朝早く起きて、お茶を飲んで過ごしていた。夜更かしせず、そのまま寝たから眠気が無く清々しい朝。
両親はいつも朝が早く、遅く起きたら居ないので朝に会う事は稀。母にお茶を煎れ、少しの団欒。
「あっ、週末店番お願い出来る? 父さんと用事があるのよ。ブライトだけじゃ忙しいと思うし…」
「うん、いいよー。久々に俺も反転メガネ使って店番するよ。兄さんと一緒にね。くっくっく」
「あらいいわねー、ブライト可愛いのよ本当に。今度可愛い服買ってあげなきゃ!」
母はブライトの反転に惚れ込んでいる。それはもう一目惚れレベルで可愛がりがヤバい。
「ブライトちゃんファンクラブがあるらしいよ。そういや従業員雇わないの? パートのおばちゃんだけじゃキツくない?」
「従業員ねえ…忙しいから信用出来る人が居れば雇うつもりよ。ちなみにファンクラブ会長は私よ」
(まじかよ!どんだけ息子好きなんだよ)
「そうなんだ…兄さんも大変だね」
「あら、カナンのもあるのよ?」
「へ?」
「今から週末の宣伝しとくからね! じゃあ学校頑張ってね」
「えっ…ちょ………」
「にいちゃんおはよう」
「お、おはようリナ、早いな」
「にいちゃんのファンクラブ会長はリナだよ」
「まじかよ…あれ? オード兄さんはあるのか?」
「オード兄さんは反転していない方のファンクラブならあるよ」
「ずりぃなオード兄さん…こうなったらオード兄さんも反転して店番だな…くっくっく」
カナンはいつもの悪い笑顔で色々企み…
「はぁ…その悪い笑顔のにいちゃんも素敵…」
カタリナはカナンにうっとりしている。
いつもの日常。
ファンクラブ特典は写真の魔道具による、生写真が購入出来る。他にも色々。
「行ってきます…」
重い心のまま出発した。
『アキ、私もファンクラブに入りたい』
「…好きにしてくれ」
『ウフフ』
______
「おはよー、モリー」
「カナンおはよう」
「そうだこれやるよ」
ボッシュで購入した魔道ペンを渡す。小さな箱に入って包装されたプレゼント。
「開けていい? …わあ、魔道ペンじゃん! 帝国産で王都では手に入りにくいヤツだよ! ありがとう!」
「たまたま手に入ったからな」
「大事にするよ!お礼は何がいいかなー」
「気にすんな。あっ、週末に店番やるから来てくれよ。反転兄さんが見れるぞ」
「わかった行くよー。ブライトさん本当に綺麗だよねー。あれは目の保養になる」
ニヤニヤするカナンにウンウンと頷く事で返事をする。
モリーはブライトちゃんファンクラブ会員。
「でもカナンの家の店って、いつの間にか女性向け商品が主流だから入りにくいんだよねー」
カナンのアクセサリー商戦により大半が女性コーナーになっている
「モリーも反転する?」
「い、いや遠慮しておくよ。カナン見てると成りきれる自信が無い」
「くっくっく、気が向いたらいつでも言ってくれ」
「気は向かないよ。でもお店繁盛してるよねー、いつも行列じゃん」
「あーそうなんだよな。信用出来る従業員が居ないから忙しいんだよ」
「そっかー…休み無いんだね。家族旅行とか出来ないでしょ?」
「そういや旅行したこと無いな…なんだかんだ忙しいし」
「でもカナンの家って楽しそうだよね、みんな個性的で」
「あー、うん、自覚はあるよ」
はははっ、と笑い合いながらのんびりと授業を受けた。
学校が終わり、中央区を歩く最中、家族に何か出来ないか考えていた。
「今日は真っ直ぐ帰るか…旅行、ねぇ」
帰宅。
「ただいまー、あっオード兄さん」
「おうカナンおかえり」
「週末、店番しよー」
「剣技大会の予選あるから難しいな!」
「ちっ、仕方ない。店番で応援行けないけど頑張ってね」
「おう、予選だけだから大丈夫!」
「頼もしいね。あーこれ新しい魔法剣の理論書だから読んで」
「おうありがとう!」
机に向かい、魔道具の設計図を書き込んでいく。黒い笑顔を浮かび上がらせながら…
「さて、鍵つきの反転ブレスレット作るか…くっくっく」
悪巧みを始めるようだ。




