研究報告を読む
上空からボッシュへと向かう人々が見える。どうやら事後処理が終わって帰るようだ。
それを眺めてから精霊の森に向かい、到着。
女装を解除して、大きく伸びをした。
『アキー』
「リーリアにお土産だよ、はい」
『ありがとー!』
リーリアにフルーツ盛り合わせを渡すと、嬉しそうに食べ始めた。
「アイ、古代の資料見るからリーリアと一緒に行ってきな」
「うん、ほどほどにね」
アイが出てきてイスに座り、リーリアとお喋り。
主に話題はボッシュでの出来事で…
「リーリア」『アイ』
「アキが褒めてくれたの」『良かったねー』
「惚れ直したって」『ラブラブだねー』
(おい)
カナンは少し離れた所に座り、パネルに魔力を流すとパネルが起動。機械的な声が響く。
「コウモクヲ、エランデクダサイ」
研究報告を選ぶ。
「何を研究してたんだろ…人工生命体による兵器転用かー。成長する兵器、魔力と血肉を食べて成長、強制進化…か。なんか強制進化は進化の秘術に似てんな」
翻訳しながらなので時間がかかるが、カナンは楽しそうに資料を読み漁っていく。
「違う魔物を食べて成長した魔物は、多く食べればその特性を得る…か。これは凄いな、早く倒せて良かったんだな」
人間を食べて進化するような、最悪の事態は免れたようだ。
「暗黒物質のダークマターの力で成長してたんだな。ん? ダークマターは邪の眷属の核…邪神の眷属なんて居たんだな」
前世の記憶を呼び覚ます。邪神と闘った時の記憶を。
「そういや、邪神って戦う内に急に強くなったな。ダークマターの影響か。なるほど。ってか邪神って何? おっさんが邪神って言ったから邪神って呼んでいたけど」
勇者パーティーの補佐に、戦いの最後の方に加入した銀髪のおっさんの事を思い出す。
秋が連れて来て、色々騒動があったのだが、それは別の話と思考を切り換える。
「おっさん元気かなー。ケガしてんのに無理矢理連れ出した俺が言うのもアレだけど」
「アキ、おっさんって誰? 勇者の仲間?」
「勇者の仲間っていうか、前世の俺の友達…銀髪のおっさんかな」
「前世のアキの友達になるって、変人っぽいね。銀髪なんて珍しいし」
「あー変人だな。ホントに。星に愛されてんだよ、きっと」
「生きてるの? 人間?」
「恐らく生きているぞ、人間じゃねえし。龍王だかんな」
「へえ、龍王の居るパーティーって凄そうね」
「いや、強いけど俺と雑談する変なヤツって認識だったから、あのおっさんは何もしていないよ。聖女の護衛の魔法使い…ファナエルをストーキングしていたし」
「ウフフ、変人ね。今は何処にいるの?」
「魔の森の奥の奥、世界樹の近くに家があるんだ。多分そこ。昔迷い込んで、戦いになった後に友達になったんだ」
「男の友情ってやつ?」
「ははっ、そんなもんだ。その後ヤバい強い奴を一緒に倒したんだが、その時おっさんが怪我というかまぁ…怪我してさ。治りが遅いから外に連れ出したんだよ。完治する方法探すぞって」
「ふーん、だから邪神とはアキが1人で戦ったのね」
「そういうこった。邪神は出会った中で最強という訳じゃなかったけど…後ろにはアイツが居たし…格好付けたかったんだよ。多分会ったら怒られそうだ。ははは」
「そんなの私でも怒るよ?置いていかれたら」
珍しくアイがプンプンしているので、頭を撫でて宥めると直ぐに笑顔を取り戻した。
「ははっ、アイは置いてかないよ」
「ウフフ」
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「また報告書の続き読みに来るよ。じゃ、またな」
「またね、リーリア」
『ばいばーい』
精霊の森を出て飛び立つ。すっかり夕方なので、急ぎながら。
『アキ』
「なんだ?」
『もっと昔の話聞きたいな』
「おう、いいぞ」




