遺跡へ
難なく魔物を倒し、後ろの男達を無視してアイは石に帰っていった。カナンはそのまま東へ飛び立つ。
呼び止める声が聞こえて来たが、聞こえない振り。目的は男達の称賛では無いから。
少し経つと、石で出来たような建造物が見えてきた。
「あれだなー。なんかの研究施設に見えるかな」
建造物の前に降り立ち、入り口にあるボロボロの看板には、『帝国直轄区域、許可無く入ることを禁ず』と、書かれている。
それを無視して侵入。
「ボロい石のデカイ家って感じか?」
とりあえずぐるっと回る。各部屋には食料等の物資が散乱している、魔物に食べられた物や荒らされた物だろう。
「やっぱり何かを起こしたんだな、馬鹿だねー」
しばらく回るが何も無かった。
「なんにも無いなー、おっ?地下か」
タイルが剥がされた後があり、地下へ続く梯子が見える。
それをカツカツ降りていくと、地下の空間に到着。
「ちょっとカビ臭いなー…血の匂いもする」
地下は広くなっており、部屋や扉が見える。
「結構広い、これ全部掘ったのかな?」
部屋には物資の他に帝国の解析書、調査書などの資料。
「んー、一応貰っとくか。何かの研究施設だと思われる…か」
調査書には推論などが多く、確定的な物は無い。
さらに各部屋を回ると本が落ちていた。
「おっ、古代文字の翻訳本だ! やった!」
古代文字の翻訳が書かれた本。これは、ずっと欲しかった物。
「儲けたなー、あれ? 壁に穴が空いてるな。これが発見された所か?」
壁に穴が空いており、奥に続いているのでその先へ行ってみると、少し広い部屋に出た。
そこには黒いカケラや血が散乱している。
「ここで何かあったんだな…これは操作パネルか? 近くに文字もある…この、眠り、覚ましては、いけない…か」
黒いカケラを手に取る。パキッと卵の殻のように割れる不思議なカケラ。
「これは、ガラスみたいなプラスチックみたいな…一応持っていくか…この丸い玉はなんだ? 黒い玉」
黒いカケラの中心辺りに落ちていた黒い玉を発見。
「なんだこれ? 黒い物質で思い当たるのはダークマターだけど…それにしては澄んでいるな。使用後? さっきの魔物はここで生まれたのなら納得か」
黒い玉を仕舞い、気になっていた機械らしき物を調べてみる。
「こんなもんかな、起動してみるか」
ブォンと魔力がパネルに入り、機械的な声が響いた。
「コウモクヲ、エランデクダサイ」
パネルに文字が浮かぶ。
「うぉ…びっくりした。項目? えーっと、封印解除、研究の報告、調査報告、分離? んー? よくわからんな。封印解除は選択出来ない。研究、調査報告は魔物の事か…分離ってなんだ?」
分離を選択してみる。
カコッと音がしてパネルが外れた。
「おおー、持ち運べるのか! すげー! タブレットみたい! じゃあ帰ってゆっくり古代の報告書を読めるのか!」
ウキウキしながらパネルを仕舞う。
「大収穫だなー、もう見るもの無さそうだから帰るか」
『アキ、森に行こ? リーリアにお土産あるでしょ?』
「あーフルーツ買ったんだった。よし、じゃあ森に帰るか!」
用は済んだので来た道を戻り、建造物から出て伸びをしてから精霊の森へ飛び立つ。
「ふう、そういえばボッシュに行ったら揉みくちゃにされそうだよな」
『そうね、アキの色んな所…触られちゃうね』
「うわっ…なんかぞわって来た」
『フフフ、なら落ち着くまで行かないでね。アキは私のなんだから』
「しばらくシーマでは行けないな。カナンで行こう」
その後帝国では探し人のチラシが貼られまくる。もちろん男達を虜にしたシーマの名前だ。
帝国では恩賞を与え、抱え込む事をしようとした。しかし本人が見付からず、国を挙げての捜索がなされたが帝国がシーマを見付ける事は出来なかったという。




