東へ3
ポカン…と惚ける男達。反転メガネの効果で、スーパー美少女と化しているシーマ……に扮したカナンに向ける視線は様々。キラキラとした視線を向けるムサイ男達から、やがて歓声が生まれ…
『『『『うおー!すげー!』』』』
『シーマちゃあああん!』『可愛い』『ダメだ俺惚れちまった』『俺もだ』『俺も』『シーマさん…あなたは一体』『好きだー!』
ムサイ男達がシーマに賛辞を送る。
カナンは腰に手を当て、仁王立ちで仰け反っている。どうやどうやという顔を向け、人差し指を天に向けた。
「私にかかればこんなもんさー! はっはっはー!」
ポンッポンッと花火を打ち上げて、私は凄いぞアピールをする。
今まで活躍する場面があまり無かったカナンは、とても調子に乗っていた。
『アキ』
「ん?」
『まだ終わっていないよ』
「ああそうか、後片付けしないと…ん?」
アイの声で、少しだけ我に返ったカナンが見た物は、打ち洩らした魔物が岩の方へ集まっていく光景。ざっと見ただけでも軽く千体は居る。
(なんだ?助けようとしてるのか?)
カナンが岩を見ている様子に、冒険者達が気付き始める。
『なんか集まってるな』『まだ何かあるのか?』『あいつら共食いしてないか?』
岩の方に集まった数千体の魔物は、お互いを食べ始めた。
そして、共食いで生き残った魔物達は、徐々に身体を大きくしていく。
カナンは魔物の様子が気になり、話し掛ける冒険者やアベルを無視して、ジーっと眺めていた。
(肉を食べて大きくなる? 魔物の生態でそんなのあったか?)
カナンが考え込んでいる間、大きい個体が増えていく。十メートル、二十メートルと…
『おい、アレやばくないか?』『シーマちゃん、なんとかしてー!』『まだでかくなるのか?』
(おめえらが頑張れよ。って、まだ個体はいるなー…量より質で勝負か?)
今まで人と同じくらいの大きさだったのが、五十メートル級の個体が十体になった。
「いやー、でかいなー」
遠目でも、その大きさが分かる巨体。
その時、アベルが寄って来たので、カナンはスススッと離れるが、距離を詰められてしまった。
「シーマさん、この魔物は一体…ジャイアント種よりも大きい…」
「大きさと形は、タイタン種かな。でも肉を食べて大きくなる性質ないから、人工魔物か」
大きく強くはなるが、短命のホムンクルスに特徴が似ている。しかし、こんなにも大きくはならない。
さらに共食いを始めた。
そして、一体のみが残る。
最後の一体は、全高五百メートル以上の筋肉の塊。見上げる程の高さに、冒険者達が怯える中、カナンは少し楽しそうに眺めている。
「ひゃー、でけーな。怪獣映画の気分だわ」
『なんだあれ!?』『逃げるぞ!』『あれば無理だ!』
カナンが楽しそうに眺めている様子を、呆然としているように見えたのか、冒険者達や傭兵が逃げ出していく。
騎士団もつられて撤退し始めた。
「人間には、こんな奴はキツいよな。アイ」
『そうね、大きいもの』
「なぁ…いつも思うんだけど…精霊の依頼って難易度高くないか? この前も王種だったぞ」
『そりゃ、理から外れた強い奴がメインですもの。報酬が良いから辞めないわよ』
「そうだよな。それに、これは敵じゃないし」
『ウフフ、そうね』
「アイ、お前やるか?」
『まかせてがってん』
「いやだから、そんな言葉を何処で覚えてくるんだよ」
『ウフフ』
雑談しながら巨大な魔物に向かっていく姿は軽やかで。
ちょっとそこに出かけるように歩くカナンを、周りの者は魔物のあまりにも大きな巨体に圧倒され、声を掛ける事が出来ない。
カナンは冒険者達から少し離れた場所に立った。
「アイ、出ておいで」
その言葉と共に、藍色の魔法陣が出現。
魔法陣が輝いた後に立つ、1人の少女。
男達に背を向け、シーマと同じ色の髪を靡かせ立つ姿は、男達が出会った全てとも違う。
圧倒的に格が違う、存在感、風格、魅力。
とても深い何かを感じさせるオーラを放ち、全てを釘付けにした。
「やりすぎんなよー」
「ウフフ」




