東へ
帝都の東にボッシュという商業に発展した街がある。その街の東に古代遺跡があり、最近新しい発見があったらしい。
「まずはボッシュに向かって、冒険者ギルドに行ってみるかー」
シュタッと空から路地裏に降り立ち、ギルドがありそうな場所へ向かう。
商業が盛んなこの街は帝都から来る客も絶えず、常に露店が賑わっている。
「いいねーこの街、品物が豊富だ。なんか買ってこー」
ウキウキしながら、珍しい物を買おうと物色。帝都では直ぐ売り切れるような物も、ここには多数あるのでカナンはご機嫌だ。
「お嬢ちゃんお嬢ちゃん! 護身用にこのナイフどうだい?」
「おー、デザインがいいねー。儀礼用かな? おっちゃんこの宝石は?」
柄の部分に宝石が付いた30センチ程のナイフ。宝石というより、ガラスに近い。
「これはただの装飾だよ。金貨二枚でどうだい?」
「んー…じゃあお土産に買おうかなー。ん? これは?」
横に変な置物が置いてある。変な人形というか、ブスなゴーレム。
「これはこの土地に伝わる神様で、商売用の御守りさ、商売安全のね。まあお嬢ちゃんからみたら変な置物だよな。はっはっは!」
「へえー、そうなんだ」
(ムキムキのゴーレムみたいなジャイアント種? いやタイタン種みたいだなー)
「まいど」
「じゃあねー」
ひらひらと手を振り他の店へ。何処の露店も、変な人形を置いていた。
「変な神様も居るんだなー。おっ見慣れないフルーツがある。リーリアに買ってってやろっと。おばちゃんこれちょーだい」
「はいよ、可愛らしい嬢ちゃんだねえ。最近冒険者が増えているから気を付けなさいよ」
「はーい、ありがとー。冒険者って遺跡調査の?」
「そうさねえ、帝国挙げての調査らしいよ。なんでも変な物が見つかってから魔物が遺跡に寄ってくるらしいのよ。それで冒険者を募集してるんだって」
「へえー、そうなんだ。おばちゃんありがとー」
(ギルドに行く手間省けたかな? 後は、本屋と魔法関係でも見よう)
本屋を見つけて入ってみる。
少しこじんまりしていて、カナンが好きな雰囲気の店。
「いらっしゃい」
「見させてもらうね」
(大体読んでる系統かなー、この薬草学の本は知らんな、買ってくか)
「これちょーだい」
「はいよ、金貨1枚ね」
「はい、ありがとー」
(なんかこの地域は魔力が淀んでるな、なんかあるのか?)
魔法書と魔道具が一緒に売られている店に入ってみた。店員のお姉さんが可愛いので、カナンはウンウン頷きながら店内を物色。
「いらっしゃいませー」
「こんにちは」
「何かお探しですか?」
「んー、とりあえず見に来ただけだよ」
(帝国も品揃えいいよなー。あっ魔法剣理論の新刊だ。買ってくか。ん? なんだこれ、魔法銃? こんなのあんだな、蓋の付いたメガホンみたい。なんか微妙…それにしても銃なんて概念があったんだな、転移者か転生者かな?)
一応秋と同じく迷い人として転移者などは多数居るが、魔物も居るし、環境や生活に耐えきれないのが大半。誰かに保護されるか、力に目覚めるかしない限り、あまり長生きは出来ない。
(転移者かぁ…俺も最初はスラムで過ごしたし。言葉分かるけど字は読めねえし、身分証も無いし金も無い。ショボい魔法でなんとかしてたな……チビ達は、長生き出来たかな……俺が逃げ出さないように孤児院に騎士団置きやがって…あのクソ王族)
空間魔法に適性がある事を知られ、逃げようとした。しかしスラムで世話になった孤児院を盾に、秋を無理矢理召集。その後は拷問や悲劇が待っていた。ふと思い出すと、機嫌が悪くなる。
(嫌な事を思い出したな、ん? なんだこれボールペン? いや魔道ペンか。魔力でインクを作るのか…面白い。みんなにお土産だ)
ちょうどボールペンの大きさの魔道ペンを見つけ、知り合いの分…それと余分に購入。
(あとなんかあるかな、ここにも謎の置物あるな、信仰深いねー。おっ可愛いランプだ、母さんに買ってくか…)
「ありがとうございました」
「また来ますねー」
良い店を発見出来、嬉しそうに再び散策。そうして時間が過ぎ…
「あっ…買い物に夢中で夕方になっちゃうな、こりゃ」
『ウフフ、アキって女の子みたいよ』
「あー…成りきっちゃうと、こうなるのか。まぁ、明日来るかな」
日が傾いて来たので、女装を解除して帰宅。
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「ただいまー。今日は露店で良いものあったからあげるね」
「ありがとうねカナン」「「ありがとうカナン」」「にいちゃん…リナも行きたかった…ありがとう」「「ありがとう」」
部屋に戻り、購入した者を整理していく。
「モリーとか王女にはラッピングしとくか…あっ、通信の魔道具作ってみるかな…」




