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帝国へ

 週末になり、「行ってきまーす」と言い家を出て、南東へ飛ぶ。

 ひたすら南東へ。山脈を2つ越えた先…エルム帝国がある。


 変装した姿で、シュタッと路地裏に降りる。

 今のカナンは身長150センチくらい…小柄な女性くらいの身長だ。髪の毛は縛れるほどに伸びているので、女装をすれば大人に見えなくもない。

 反転シリーズを装備して、髪を藍色に変化。

 藍色はアイの希望でお揃いなので、それに従っている。


 帝都は王都よりも広く、もちろん比例して治安が悪い場所も多い。女装しているので絡まれる事が多いが、直ぐに撃退しているので問題は無い。

 まずは新しい本が欲しいので、馴染みの本屋へ向かう。


「いらっしゃいませー、あらシーマちゃん!」

「こんにちはお姉さん。新刊ある?」

「うん、あるよ!」


 新刊コーナーを見せてもらい、帝国にしか無い本を探していく。


「じゃあ、これとこれとこれ買うね」

「はい! ありがとうございました! …シーマちゃん弟が会いたがってたよ?」


 にやにやと言うが、ご遠慮する。以前店番をしていた少年に気に入られてしまった。流石に夢を壊すといけないので、男だとは言っていない。


「先を急ぐので、また」


(こういう時はブライト兄さんの気持ちが分かるなー)


 大きな建物…冒険者ギルドに到着。酒場も併設してあるオーソドックスなタイプ。

 ギルドに入りトコトコ歩いて依頼ボードへ。

 冒険者達は、酒盛りをして騒いでいたが、カナンを見ると表情を変えてざわめきが増していく。


『あれってまさか』『ああ…あれが冷酷だ…』


 ギルドには本登録していない。本業で冒険者の人間だけが本登録している。カナンは副業枠で専用のカードがあり、そちらを使っている。


 冒険者はG~Sのランクがある。副業カードはランクが無い。

 ランクは冒険者のステータスのような物で、受ける事が出来る依頼はランク問わずだが、護衛や指名依頼など失敗すると違約金があるものは本登録の依頼だ。

 副業枠は採取や討伐、都の依頼がメイン。


(なんか面白そうな事無いかなー…ん? 古代の遺跡調査?)


 ふんふんと見ていると、誰かが近付いてきた。


「おいねーちゃん! 一人なら俺達とパーティー組もうぜ! 俺達が手取り足取り教えてやるよ!」


『おいやべえぞ!』『誰だあいつ!』

『誰かあいつを止めろ! いや俺は無理だ!』


「……」(調査チームに同行、泊まりかー無理だなー)

「おい! 無視か? こっち向けよ!」

「ん? あー俺…いや私になんか用?」

「俺達とパーティー組もうぜ! 損はさせねえよ!」


(男だらけ、論外)

「むり」

「んだと?俺の誘いを断るのか?」

「うん、弱いもん」


 にっこりと告げる。本当に弱いから言っているのだが、ハッキリと言われるのはプライドが許さない様子で、男に青筋が立つのは仕方無い。

「おもしれー…そういうなら見せて貰おうか?」


 男達が臨戦態勢になる。ギルドの中で喧嘩は御法度だが、男は頭に血が上り、忘れていた。


『あ、だめだ。あいつら終わったな』『ああ…10秒持つか?』


 こういう輩はしょっちゅう出るので、慣れたもんだがいつもの通り外野がうるさい。最近は半ば見世物の状態だ。

 いつもの通り、氷漬けにしようとすると、横から止めようとする男が現れた。


「やめろ! 女性に寄ってたかって恥ずかしくないのか!」


 キラキラした装飾の鎧に端正な顔立ちの青年。その表情は呆れと怒りに染まっている。


『あれ誰だ?』『あの鎧は帝国の騎士団じゃね?』

『バカだな、冷酷を庇っても意味無いのに』


(外野うるせーな、なんだよ冷酷って。俺から絡んだことねえぞ。なんかこいつ…あのバカに似てんな)


「ちっ帝国の騎士団様かよ! 正義面しやがって! お前ら行くぞ!」


 ぞろぞろと男達が去っていく。その様子を冒険者達は詰まらなさそうに眺めている。


「大丈夫でしたか?」

「ええ、ありがとうございます」


 騎士の男が爽やかな笑みでカナンに笑いかけ、カナンも鳥肌を纏いながらニッコリと笑い掛けた。

 一応カナンは美少女状態なので、騎士が目を見開き顔が赤く染まる。

(なんだこいつ…寒気がすげえな)


「…あの、私はアベルと申します。お名前を教えてもらって宜しいでしょうか?」

「シーマだけど?」

「あ、あの、シーマさんはこちらにはよくいらっしゃるのですか?」

「んー…月に1回かなー」

「何かお仕事をしてらっしゃるのですか?」


『あいつ冷酷を口説いてるぞ』『俺ダメな方にかけるわ』『俺も』『俺も』


(うるせーな…顔覚えたかんな。でも学生って言ったら舐められんな)


「薬の研究ですよ。良かったらどうぞ」


 とりあえず無難な薬…グレートポーションを渡す。

「こ、こんな高価なものを!受け取れません」

「良いんですよー余り物ですし。それじゃあ」


 無理矢理渡し、そそくさと逃げる。呼び止める声は無視。話が長くなりそうだったから。


「あー、なんだあいつ。それにしても勇者(ばか)に似てんなー…子孫かな? 今度会ったら聞いてみよー」


「まあ遺跡の場所は把握したから行ってみよっかな」

『アキ』

「アイどした?」

『あなた悪い女ね』

「いや男だし」

『ウフフ』

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