イケメンと話す
授業が終わり、どっと気疲れしたカナンは、肩を回しながら嬉しそうにしているイケメン王女を見る。彼女も少し緊張で疲れた様子で、気が抜けてメガネを取ろうとしていたが、慌ててカナンが止めていた。
「とりあえず今日の夜行くから…」
「やった! お待ちしていますね!」
「しっかしイケメンだなー…旧式タイプでそれは反則だぞ」
「これで旧式なんですね。なんだか変身してるみたいで楽しくて…」
「あーわかる。俺もよく反転してるから」
「えっ、見たいです!」
「夜な…あっ、今度兄さんの美貌を拝ませてやるよ、あれは一生に一度見ておいた方が良い」
「ほうほう、それは楽しみです!」
ニコニコとイケメン王女が笑う度に、周りの女子が悶死している。もう注目の的なのだが、王女は気にせずカナンだけを見ているので、カナンはこの先大丈夫かなぁ…と、不安になっていた。
「とりあえず反転ブレスレットやるよ。解析無効だし、メガネ取ってもイケメンのままだ」
「わあー、ありがとうございます!」
「もう行くんだろ? 護衛の人来てるぞ。可愛いお姉さんだな…」
「あ、そうですね。じゃあまた夜にお待ちしてますね」
イケメンは立ち上がり、パチリとウインク。
胸を抑えて倒れる女子達。カナンは鼻血を気にせずヤバい顔をしている女子達に呆れていた。
「お疲れ、モリー」
「お疲れ、カナン。なんかすごいイケメンが魔道具科に現れたって噂になってるけど?」
「あーそれな。知り合いだったよ」
「えっそうなの? 貴族なんじゃないの?」
「まあそんなもんだが、害は無いから安心してくれ」
「意外だね、カナン貴族嫌いでしょ?」
「貴族は嫌いだが、たまたま縁があっただけだよ。そいつだけだし」
「そうなんだねー。あっ、そろそろ帰ろうか」
「そだな」
______
夜になり、カナンは反転メガネを付けて王城に向かう。
そのまま寄り道せずに王女の部屋へ。
「よう王女」
「いらっしゃいカナン…ちゃん? 可愛い…」
「ふふふどうだ、最新式は声も反転するぞ」
「可愛いです…一緒に出歩きたい…」
「男ならだめだけど、この姿なら護衛も安心なのか?」
「はい! カナンちゃんとデート…」
「いや、ちゃんはやめろよ」
ここには月一で来るようになった。
カナンが作った魔法効果の無いアクセサリーは、王女に着けてもらって広告塔になって貰っている。
これで貸しはチャラという事でおさまった。
なので店の女性コーナーは大盛況。王女と妹の二大広告塔の効果は凄かった。毎日完売…生産が追い付かない。
「王女、結構無理したんじゃね?」
「ふふふ、そうなんですよー。頑張ったんですから!」
「あ、うん。王女って、俺と一緒で友達少ないもんな」
「いや、痛い所突かないで下さい…パーティーやらお茶会で精神ガリガリやられているんですから、大変なんですよ?」
「そりゃ大変だなー。そうだ、これが反転メガネマークXだ。これは声の反転、解析無効と認識阻害のオンオフ、イケメン度アップ出来るから」
「最新式ですね!ありがとうございます!」
そう言って反転メガネを着ける王女は、昼間とは比にならないイケメンになった。キラキラとエフェクトが舞っているような錯覚に陥る程に。
「すげぇ…イケメンだ!」
「なんかイケメンイケメン褒められると複雑ですね」
「ははは、イケメン過ぎだからな」
それからイケメン談義に華を咲かせ、髪の色を変えたりして遊んだ。反転ブスメガネという、ブスになるメガネは絶対に掛けてくれなかったが…
『アキ』
「アイ、どした?」
『イケメン同士の絡み…フフフ』
「…大丈夫か?」
『もちろん大丈夫。最近アキ楽しそうだから…ついね』
「そうだなー。充実してるよ」
『夜のデート、明日はカフェデート』
「ほんと大丈夫か?」




