魔道具科
「おはよう、ブライト兄さん」
「おはようカナン。適正検査は、どうだったんだ?」
「平均値目指したけど…駄目だった」
「平均値って…悪かったのか?」
「いや…魔法の実技で満点だったんだよ…失敗した…」
「すごいじゃないか。魔法得意だから当然か?」
「いや、なんか的が曲がったり破壊されたら満点らしいよ…手加減したのに…」
「えっ? あれって、中位魔法でもびくともしないやつじゃないか? 何処の学校も同じヤツ使ってるはずだからな。満点じゃ不満か?」
「不満だよ。絶対みんなの前で魔法やらされる。詠唱知らないのに馬鹿にされるよー…」
「ははは…まあ頑張れ、カナンならなんとかなるから」
「無責任な事を…ふっふっふ、良いんだよ兄さん。また反転メガネマークXの実験台になってもらうから」
「いやまじであれは勘弁してくれ! 男に口説かれるとか辛すぎる!」
「兄さん…俺に魔道具の事なら協力してくれるって約束したよねー…男の、や、く、そ、く」
「それだけはご勘弁を!」
「大丈夫だよ兄さん。俺も一緒に反転メガネかけるから。一緒に店番しようよ!」
ブライトは鬼気迫る表情で逃げ出した。
「あっ、逃げたな…ふっふっふ反転シリーズはメガネだけじゃないんだよ…」
ブライトは反転メガネをかけると、超絶美人になる。そのお蔭で店の売上が2倍は軽く超える始末。
カナンは母を味方に付け、月に一回ブライトを女装させる…最近の趣味。
「さっ学校行くか」
今日は魔道具科の授業がある。
専攻授業の場合は、魔道具科の様に他の学校には無い学科の場合、他校から来る場合もあり…
「さてと、端っこの席ゲット」
席は自由なので、後ろの端を陣取る。だいたい五十人くらいが受けるので、早い者勝ち。早く来て、本を読みながら時間を潰す。
徐々に生徒が集まり、ざわざわと、少しずつグループが出来はじめ、自己紹介などを進めている。
(元気のある年代だよなー。他校の生徒とすぐ仲良くなって…)
ざわざわ……
(急に静かになったな。先生か?)
カナンは本から目線を上げると、静かになった原因が解った。
(おー、超イケメンじゃん。メガネが決まってるねぇー)
教室に入って来たのは、一言で言うと妖精の王子様。男でも見惚れるようなイケメンが入ってきていた。
(みんな釘付けだねー……ん?)
イケメンはキョロキョロして、寂しそうな顔をした後、真ん中の方に座った。
(いや…まさか…気のせいだと思いたい…俺は何も見なかった…そうしよう)
クラスのみんなはイケメン過ぎて声をかけれない。オーラが凄い。服装は地味だが、一目で貴族と解る。服の生地もランクが違う。
寂しそうに入って来る者を見ては、視線を落としていた。
カナンは、仕方ねぇ…と呟きながら席を立ち、イケメンに話しかける。
「おい、そこのイケメン…こっち来い」
イケメンはカナンを見て、ジーッと見て、食い入るように見て、ハッという顔をして笑顔になった。
その笑顔を直視した女子が鼻血を出しているが、見なかった事にして手招き。
「うん、わかったよ」
イケメンが嬉しそうにカナンの元にやって来て、隣に座った。
(何やってんだよ王女…)
(カナン君と一緒に授業受けたかったんですよ! 苦労したんですよ!)
(アホか! やめろその顔で近付くな!)
イケメンがグイッとカナンに迫る。カナンは仰け反り、凄く嫌そうにあっち行けよとジェスチャー。
むぅ…と唇を尖らせ、可愛い仕草をするが…顔が男なのでカナンはうへぇ…という顔になる。
「名前は?」
「クリスですよ」
「みんなに見られてんぞ」
「ふふっ、見せつけてあげましょうよ」
「その顔で言うなや」
魔道具科の授業は退屈しなさそうだ。
このメガネとイケメンのやり取りは、すぐさま腐の女子に伝えられ、メガネ(受け)が浮気したと戦慄が走る。




