適正検査
「おはよー、モリー」
「カナン、おはよう」
中等部になって授業内容の変化から、最初は説明の授業が多い。詳しい学科の説明や、部活動など。
「今日は適正検査、魔力測定と体力測定、あとは実技だね」
「うえっ、昨日夜更かししたから眠いんだよなー」
「カナンはいつも夜更かししてんじゃん。いつも通りでしょ」
「ははっ、違いねえ」
モリーとは同じクラス、これでクラスは3年固定。これでボッチは回避出来たとは思うが…
ぞろぞろとクラスのみんなと混じり、二人でトボトボ修連場に向かう。
「うわー並んでんなー」
「まあのんびりしようよ」
一年生は測定だけで1日かかる。
だいたい500人くらいで、大体は待ち時間。カナンとモリーは雑談しながら時間を潰して順番を待っていた。
「最初は魔力測定と属性の検査だって」
「へぇー、検査ねえー」
「ちゃんと掲示板見なよ」
「いや、モリーが見てくれると思ってさ」
「全くもう」
カナンは全属性使えるが、魔力測定と属性に関しては抜かり無い。魔力を封印する指輪を装備しているので、漏れるのは青色の属性だけ。
アイと一緒に居るせいか、青色の属性がずば抜けているので、封印を重ねてなんとか平均値まで下げている。
『おおー!』『すげー! 三色だ!』
「なんかすげー奴いたんかな?」
「そうみたいだねー。カナンも封印しなかったらすごいんじゃない?」
「だらだらと過ごしたいからごめんだねー」
モリーには魔法が得意と言ってある。どれだけ得意かなんて、言っても解らないので冒険者に勝ったエピソードを話していた。
「順番来たねー」「そうだな」
測定魔導具は、水晶の様な魔道具。水晶に手を置き、魔力を流す事で魔力の大きさと適性を判断する。
カナンが手を置くと、青色に光った。光の大きさは平凡な明るさ。係りの教員が、カナンの魔力指数を事務的に記載していく。
(予想通り…か、モリーは緑色だな)
適正と言っても修練すれば他の属性も使えるので、あくまで伸びやすい基準。
大体の魔法使いはこれで将来を決める。光が強ければ魔力が高いという具合に。
ちなみに姉のエレンは、元々青色と白色。しかしカナンの魔改造のせいで後に赤色、緑色、黄色、が増えた。五色の適性を持つ姉はかなりの逸材で、将来は決まったも同然。
「すぐ終わったねー」
「だな。複数の適正があると科目の見直しとかあるから、良かったな」
「カナンは青色だったね」
「今のところ、青色がなぁ…。モリーは緑色だろ。今度教えるよ」
「やったー、ありがとう!」
「良いんだよ、友達だからな」
モリーは家系にエルフが居るので、緑色の適性になりやすいという。
「体力測定だねー。走るのと、軽い模擬戦だって」
「走るのかー…」
「まあ良いじゃない、いつも走ってるんだし」
モリーと一緒に、休日の朝に走る事が多い。
その時メガネはしていないので、朝のランニングカップルとして腐の方々から有名だが、カナンとモリーの耳には届いていない。
時間測定の道具をもらい、外周を回る。
「ねえカナン、週末空いてる?」
「ん? 大丈夫だぞ」
「北区に本屋のカフェ出来るんだって」
「おお! いくいく!」
「じゃあ週末ランニング終わったら行こうね」
「おうわかった」
後で走っていた女子は二人の会話を聞いていた。
えっ…こいつら付き合ってんの? と、腐の女子に報告。
この後は腐の女子から熱いまなざしを受けるが、カナンとモリーは首を傾げるばかり。
「この後は模擬戦だってさ、なんか冒険者の人が相手するらしいよ」
「ふーん、まっ適当に負けるかー」
「倒しちゃって良いんじゃない? 昔Bランクの人ぶっ飛ばしたんでしょ?」
「あー…あれは仕方なくだよ」
冒険者と生徒が向かい合い、模擬戦をしている。
騎士を目指していない生徒は簡単に降参。大体はやる気が無いので、冒険者も流れ作業になっている。
(命のやり取りが無いって幸せだねえー)
簡単に負けを認める生徒達を眺め、昔と照らし合わせるカナンは呑気に眺めていた。
前世…スラムで過ごしていた時は、負けは死を覚悟しなければならず、何度も何度もボコボコにされながら、必死に生きていた。よく生きていたなー…と、昔を思い出す。
「順番来たねー」
「そいじゃ行くかー」
三十分程待った後に順番が回ってきた。
二十代の男性。女子には女性が相手をする。
互いに木剣を持ち、冒険者と対峙する。もちろんカナンのやる気はゼロに等しい。
「さあ、えーっと…カナン君だね。何処からでも良いから打ち込んで良いよ」
「はい、よろしくお願いします」
とりあえずゆっくり横凪ぎに振る。
カンッ_と、音が鳴り剣で防御され、その後シュッ…と、目の前に剣先が止まった。
「参りました」
良い感じに手を抜けた事に満足したので、さっさと終わる。
「カナン、負けたの?」
「おう、負けたぜ」
「勿体無いなあ」
「自由に生きたいからなー」
「あはは、カナンらしいね」
「次は魔法科を選択した人は魔法の実技だよー」
「そうなんか、まあ魔法はそれなりに頑張りますか」
魔法の実技の場所へ行き、順番を待つ。
的に簡単な下位魔法を放つのだが、中等部一年なので、みんなへっぽこな威力と制御。
「なんか的に当てて威力と制御を見るんだね」
「ふーん壊したら取り替えるのか?」
「交換なんじゃない? 壊れてる様子無いから頑丈そうだけど」
カナンがボーッと見ていると、生徒達が15メートル先の的に魔法を当てている。
…詠唱をして。
(あれ? みんな詠唱してんぞ…魔法陣を展開してる奴がいねえ…あっ…確か最初は、詠唱するんだったか?)
「な、なあモリー…魔法陣を出してるやつ…いねえな」
「ん? 魔法陣展開なんて高等テクニック、中等部じゃ無理でしょ? 魔法学校でも出来る人少ないし、魔力で陣を描いて色の魔力を乗せなきゃいけないんだから」
(やばい…忘れてたなー…)
「魔法科を目指す人はみんな魔法塾通ってるでしょ? 詠唱なんてそこで…あれ? カナン、もしかして…」
「……詠唱知らない」
「…うわ…魔法陣を展開出来るのはすごいけど、詠唱知らないとかそれはある意味すごいね…どうするの?」
「いや、まあ魔法陣でやるしか無いよな…あっ! 詠唱教えてくれよ! 極小の魔方陣使うから」
「はぁ……まあいいけど、極小魔法陣とか宮廷魔法師でも出来る人居ないよ? …今度魔法陣展開教えてね」
「おう教える教える! 助かるわー」
「あはは、じゃあ教えるよ。ウォーターボールにしようか」
「そうだな、水のヤツで」
「はいはい。水よ、水球と成りて、敵を打て。ウォーターボール。って言いながら魔力を乗せて放つ。簡単でしょ?」
「あー…簡単だなー…多分」
詠唱は恥ずかしいから覚えないスタイルなので、カナンはいつになく緊張している。
順番が回ってきた…教員に出席番号と名前を言い、的の前に立つ。
「はい、カナン君どうぞー」
「お、お願いします。水よ、水球と成りて、敵を打てぇ…ウォーターボーりゅ」
極小の魔方陣を展開。うろ覚えのウォーターボールを放った。
ボンッ__
水球が高速回転。的に向かって真っ直ぐ直撃。曲がっているのは気のせいだと思いながら、そそくさと退散。
「ありがとうございました」
(詠唱すると制御が狂うな)
「カナン、なんかあれ曲がってない?」
「まあ、気のせいだろ…」
「中位魔法でも曲がらないらしいけど、まあ評価良くなるだけだから大丈夫でしょ」
「そうだな、まあいいかー」
測定が終わりベンチで休む。待ち時間が長かったので、普通の授業よりも疲労度が凄い。
「終わったら帰って良いのか?」
「チェックシート渡したら良いってさ」
「そいじゃ帰るか」
「そうだね」
「「ばいばい」」
モリーと別れ、カナンは憂鬱な気分で空を見上げていた。
「詠唱の勉強はやだなぁー…今更だし…はぁ…」




