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少年は目標を立てる

 

(ああ、ヤバい眠い)


「にいちゃんおはよう」

「おはようリナ」


 朝、寝起きでフラフラしているカタリナがやって来た。同じく徹夜してフラフラしているカナンを怪訝な表情で見据えている。


「ねむいの?」

「メガネ作っててちょっと夜更かししちゃった」

「むぅ、だめ! むりしちゃだめ!」

(怒られちゃったな)


「ごめんな、気を付けるよ」


 フーフー怒っているカタリナの頭をなで、家を出る。心配してくれる家族に悪いと思いつつ、夜更かしは辞められない。

 だらだらと歩きながら、眠気覚ましに精霊水を飲んでいく。


「あー眠い…調子こいて反転メガネマークⅡなんて作ってしまったしなあ、イケメンであればあるほど比例して美人に見える危険なメガネ…我ながら恐ろしい…くっくっくっ」



 ブライトに着けてもらおうと画策していると、前方がざわざわと騒がしい。まだ時間があるので、野次馬根性で近付いてみた。


「ん? 喧嘩? いや、朝っぱらから酔っ払いかよ」

(誰か絡まれてんのか?)



 酔っ払いの冒険者風の20代の男が2人、ガタイのいいヤツとヒョロいヤツ、中等部あたりの女子に絡み、腕を掴んでいる。

 女子は腕を捕まれて痛そうにしていた。


「いや! やめてください!」

「ちょっとだけだから相手しろよ!」

「兄貴はBランク冒険者だから抵抗は無駄だぜ! あ? お前らなに見てんだよ!」

「お姉ちゃーん!」


 早朝なのでちらほらと人がいるが、見ているだけだった。強そうな冒険者相手に朝から立ち向かう気概のある者は居ない。


「ったく何してんだよ酔っ払い、誰も助けねえのか…仕方ねえな」


 眠そうなカナンは、だらだらと騒ぎの中心へ歩く。


「おい、いい大人が朝っぱらから人に迷惑かけんなや」

「あん?なんだガキかよ、あっちいけよ。殴られてえのか?」


 ヒョロいヤツが前蹴りをしてきた。あくびをしながら躱せそうな弱い蹴り。カナンから失笑が漏れる。


 極小の魔方陣を展開し、

 前蹴りをかわしながら魔法を放つ。

「はぁ…インパクトフィスト」


 ボンッ__

 ヒョロが5メートル程吹っ飛んだ。


「はっはっはっ!なに遊んでんだよ!ん?気絶してる?なんだこのガキ!」


 魔法の音に振り向いたガタイいいヤツが殴ってきた。

 カナンはパンチを躱し、再びインパクトフィストを放つ。


 ドガッ__

 ガタイのいいヤツが5メートル程吹っ飛び、ゴロゴロと転がった。


 気絶している冒険者を眺め、カナンは少し目が覚めたのに満足してだらだらと学校に向かう。


「弱かったなぁ…ふぁ~」


「あの!待って!」

「あん? ああ姉ちゃん大丈夫か? …メガネ曇ってよく見えんな」


「え? 幽霊(ファントム)?」


 さっきの姉妹が近寄って来た。


「ありがとうね!」


 姉の方がお礼を言ってきたので、カナンはメガネをとり、布で拭きながら将来有望だなー…と呑気に考えていたが、姉の腕に捕まれた手形がついていて、ピクリと眉が上がる。


「おう、気にすんな…ったく馬鹿力で握りやがって…」


「え?う…そ…カッコいい…」


 妹の方が何か言ってるがスルー。

 極小の魔方陣を展開。


「ヒール、っとこれで大丈夫だ」

「えっ? 腕が…すごい…」

「おう、じゃあなー気を付けろよー」


 人が集まって来たので、そそくさと学校へ行く。

 教室でボーっとしながら(眠いなー)…と、虚空を見詰めていると、目の前に女子が立った。クラスの女子っぽかったが、名前は知らない。覚えていないカナンに問題があるのだが…


「あの……カナン君」

「なんだー?」

「お姉ちゃんを…助けてくれてありがとう」


「あー…さっきのお前の姉ちゃんか、別に姉ちゃんからお礼は受け取ったよ、にしてもいつも幽霊(ファントム)って言ってるのに俺の名前…知っていたんだな」


 少し嫌みを言ってみると、「うっ…ごめんなさい」と、しょんぼりしているので、大人げ無かったかなと思うが悪口を言う方が悪いので悪いとは思わなかった。


「まあ、分かればいいんだ。気にしてねえよ」


 ニコッと笑ってやると、「うん、今までごめんねカナン君」少し嬉しそうに戻って行った。


 再び虚空を見詰めていると、今度はクラスの男子がやって来た。


「カナン! お前大人を倒したんだって?」


(ん?なんで知ってんの?)

「すげーじゃん!」

「へ?」

「すごいよ!」


(なんだ?これは夢か?)

 ぞろぞろと、みんな集まって褒めてくれた。

 どうやらさっきの子が広めたらしい。


「お前強いんだな!」


 こんなに笑顔を向けられたのは…前世で過ごした孤児院が最後。久しぶりの光景に、カナンの顔に笑顔が浮かぶ。


「ははっ、ちょっとだけな」


 少しだけクラスのみんなと仲良くなれた気がした。



 ______




 週末になって精霊の森に来た。


『カナン』

「やあリーリア」

『りーリア』

『アイ』


「ほれ行っておいで」


 リーリアに藍色の石…アイを渡す。


 リーリアはアイと森を散歩するようだ。


『ウフフ』『うふふ』

「仲良いなー」


 リーリアとアイは仲が良く、森ではいつも一緒に居る。

 魔法体の身体同士、波長が合うのだろう。



「やりたい事、やらなきゃいけない事、沢山あるなー」


「まずはアイの隣に立てるだけ強くならなきゃな」


 石を持った妖精を眺める。楽しそうに笑うアイを守ってやりたい…そう思うようになっていた。


「まっ、頑張りますか!」





これで初等部編は終わる予定です


次は中等部編に行こうと思います


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