来世の家族
「母さんただいまー」
「おかえりなさいカナン」
家に帰ってきた。
ミラ家は7人家族だ。
父さん、母さん、長男、長女、次男、俺、妹の順。
髪の毛はカナンだけブラウン、他の皆は金髪。
商家だしそんなに不自由していない。
ちゃんと学校にも通わせてもらえる、来年初等部に入学だ。
「カナン、今日はどんな本を読んだの?」
シェリー母さんが聞く。18歳で父と結婚し、現在30歳くらい。美人なお姉さんという感じで20代前半くらいに見える。
「勇者の物語」
「あらあらまた勇者の物語?好きねえ」
当時の資料や色々文献を読んでるが、どれも似たような感じだ。勇者を美化し過ぎな物語。読む度に、カナンはあのクソ野郎が主人公とか笑えるなと思っている。
「うん、聖女の物語も好き」
「聖女が旅をするお話ね」
あの戦いの後、聖女は旅に出たという資料がちらほらある。その後は勇者や聖騎士と結ばれたり、魔道具の研究、他の世界を救う為に違う次元に行っただとか、エネルギーの研究者になったりと文献によって様々だ。新しい記述が見つかる度に何やってんだよ聖女ちゃん、と笑っている。
「カナンは本ばっかり読んで俺みたいに強くなれないぞ!」
次男のオード兄さんだ。
「オード兄さんみたいに強くならなくてもいいんだ」
(七歳にして腹筋割れてるとかやべえな)
オードは将来は少しワイルドなイケメンになるであろう、整った顔立ち。学年は2つ上、いつもフンフン身体を鍛えている。
「カナンは文官を目指してもいいんじゃないか?」
長男のブライト兄さん。
「文官はあの空気が苦手」
(文官は上司が悪いとブラックっぽいし)
ブライトは線は細いが落ち着いた雰囲気のイケメン。来年中等部に入る。かなりモテるらしいが告白は全て断っている。心に決めた人が居るのだろうか。
「じゃあ私と一緒に魔法使い目指さない?」
長女のエレン姉さん。
「魔法使い、気が進まないな…」
(実は、前世の能力は引き継いでるけど、もう召集はいやだ)
エレンは母に似て将来美人になるであろう。魔法使いを目指して魔法塾に通っている。現在の魔法の才能は少しあるぐらい。カナンは少し手助けしようかな?と密かに思っている。
「まあまだ5歳だ、ゆっくり考えればいい」
父さんのフレッド、イケオジだ。現在は店の経営と中卸をしている。母より少し年上。母と結婚する時は苦労したらしい。
「うん、なにも思いつかなかったらブライト兄さんの手伝いするよ」
ブライト兄さんは商家の跡取り、勉強三昧で大変そうだから手伝おうか迷ってる。
(幸い前世の知識があるから色々楽なんだよな)
この世界は中世ヨーロッパの様な町並みが多く、地球と違うところは魔法があったり魔道具などが普及している
(200年前と大して変わってないんだよなー)
魔道具にしても、魔法にしても、文化も大して変わってない。
(貴族とかも変わってなかったらこの国を出ることも考えなきゃ)
正直カナンはこの国は嫌いだ。
(前世は黒髪だったから目立ったし、沢山悪口言われたな…今世は大丈夫だと思うけど…王女にドブネズミって言われて拷問された時は流石にキツかったなー)
うん、いい思い出が無い、やっぱり嫌い。特に王族。
(まあまだ5歳だ、学校に行きながら様子をみるか…)