不壊の勇者3
「それは…不思議な魔法だね」
「ははっ、ガス欠まで絶対に死なない魔法だ」
「なるほど…」
タケルの腕がブレた瞬間…
「くっ…速え…な」
秋の両腕が斬り落とされていた。
だがエターナル・リヴァイブの効果で瞬時に再生。元の両腕に戻るが、分が悪い戦いに苦笑した。
「早く目的を言った方が身の為だよ。ここまで力の差があるんだから」
「確かにお前は強え。今まで戦った中でもトップレベルだ…でも、俺には勝てねえよ」
秋の身体に紫色の魔法文字が刻まれ、染み込むように消えていく。自身の能力…自由で我が儘な時間を全解放。
全ての魔法に過去の結果を繋げた。
繋げたからと言って、格上相手にどこまで効果があるか解らない。半ば賭けに近い戦い…だがそれはいつもの事だった。
「応龍奥義・龍神天勝!」
「やばっ! 百連シールド!」
バキバキバキバキ…超高速でシールドが割れる音が響き渡る。
間一髪シールドを展開出来たが、防いだという結果は相殺という形に変化していた。
これは地球に居る影響なのか、タケルの力が強すぎるのかは解らないが…秋にとって不利になる事は間違い無い。
「防いだ? 馬鹿な」
「ふぃー…危ねえ。再生した分消費が激しいからな…なんだよ一秒で百連撃って。武神装ってどんだけ卑怯なんだよ」
思わず愚痴ってしまう程に、強すぎた。
キリエの武神装よりも攻撃特化な分、一瞬の判断よりも先読みを徹底させる必要があった。
「どうやら特殊能力があるみたいだね。青龍の春歌」
――ギュオオオオ!
轟く咆哮と共に青い電撃が駆け巡る。
「属性攻撃なら…なんとかなるかな。サンダーシールド」
電撃を無効化しながら、どうするか考える。
地球に居る以上打開策が限られる…
「…朱雀の夏歌」
――キュェェエエ!
巨鳥が舞い朱色の炎が辺りを包む。
「厄介なのはあの刀…フレイムシールド」
神刀の攻撃さえ防げれば、後はなんとかなると判断したが…タケルを倒すという結果は違うような気がしていた。
「…白虎の秋歌」
――グルァアアア!
斬り裂く刃がシールドを斬り刻み、新しいシールドも相殺していく。
「これだけの力…タケル自身長くは保たない筈。勝負は一瞬…超解析」
タケルに解析を掛ける。
今の魔力状態…身体の状態…タケルの種族…魂…
「何をしても無駄…玄武の冬歌」
――ゴォォォオオ!
重厚な響きが発生し、今までの力が収束していく。
「…ホムンクルス…か。魂は本物…でも、少し歪。ははっ、なんだよ…お前も絶望を味わったのか」
解析の結果は…タケルは本物だった。しかし偽りの身体に、ボロボロな魂。もっと早く解析していれば良かったと一瞬思ったが、今更か…と、引く程のタケルの力を眺める。
「死なない事を祈るよ。神精魔法・黄竜の死季」
収束した力が超エネルギーとなり、空間にヒビが発生していく。
バキバキと空間を壊しながら、秋へと降り注ぐ。
「こりゃ、防御は無意味だな。…受けるか」
秋は精霊石を吸収しながら、薄ら笑いを浮かべて避けようとしない。
それを見たタケルが焦った。
「なんで避けない! 死ぬぞ!」
「ははっ、言ったろ。死なないって…」
死なないといっても、痛いものは痛いのだが…
両腕を広げて、超エネルギーを受け止める。
この力はタケルが絶望から這い上がって手に入れた力…
元親友として、受け止めたいという想いが強かった。
そして、秋に衝突。
砂漠に超エネルギーの柱が上がった。
「あいつ…泣いて…いや、気のせいか」
タケルは涙を流しながら笑う秋を見て、懐かしいような不思議な感覚に陥っていた。
しかし頭を振り、無理矢理自身の残り時間を考えてため息を付いた。




