金策2
秋達はお姉さんが淹れた紅茶を飲みながら、三人で。談笑していた。
「あの、一部と聞きましたが…他にはどんな物をお持ちなんですか?」
「あぁ…見ます?」
百カラットのレインボーダイヤモンドを出して見せると、「ひっ」ビビっていた。
「本物…うわ…あの…ウチと取引しません?」
「別に良いですよ」
「えっ…ほんとに?」
「――お待たせしました! ってなんじゃそりゃ!」
アルフ店長がスーツケースを持って現れ、レインボーダイヤモンドを見て盛大に仰け反っていた。そしてそのままグキリと腰から音が鳴る。
「ぐはぁ! 腰が! 腰が!」
「あぁ…可哀想に、ちょっと見せて下さい」
パタリと倒れてピクピクしていたアルフに近付き、腰に手を当ててヒールを掛けた。
「えっ? 痛くない…」
「祖国に伝わるおまじないです。完治ではないので安静にしてください」
「凄い…益々気に入りましたよ! あっ、こちらが五十万ポンドです」
スーツケースを開けてみると、五十ポンドの札束がギッシリ入っていた。秋はポンドの価値がよく解らなかったが、一先ず手を汚さずに済んだと安心した。
「ありがとうございました。助かりました」
「ええ、今後とも御贔屓にして戴けると嬉しいです」
「その事なんですが、一度祖国に戻って流通経路をしっかりしてからにしたいのですが良いですか?」
「はい、もちろんですよ! 出身はどの国ですか? わたくし共もサポートいたします!」
「あぁ…遠い遠い国なんですよ。そのレインボーダイヤモンドは信用の証として、預かっていて下さい。では、また来ます」
秋がパチリと指を鳴らすと、二人の姿が消えた。
アルフとお姉さんは狐に摘ままれたような顔をして、呆然とするばかり。
ハッと我に帰り、ダイヤモンドを見るとしっかりと存在しており、夢じゃないという事は解った様子。
少し困った顔を浮かべながら、虹色に輝くダイヤモンドを眺めてため息を漏らした。
「信用の証…か。一億ポンドはするんじゃないか?」
因みに一ポンドは百四十円前後。
秋は七千万円程手にした事になる。
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店の外へと転移した秋とキリエは、近くのスーパーへ行き地図を購入。日本円に換金出来る場所を探していた。
「やっぱり空港かな。空を飛ぶ乗り物がある場所なんだけど」
「空を飛ぶ乗り物…乗ってみたい!」
「乗るには身分証が必要なんだよ…俺達にとっては難関の身分証だな」
パスポートの取得は難しい。
それ以前に簡単な身分証ですら難しいのだが、直接データバンクを弄る以外に思い付かなかった。
とりあえず地図に乗っている、ロンドン西部にある国際空港を思い浮かべて転移した。
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「うわぁ…凄い人」
「本当だな…年間に、ここだけでルビアに居るゴブリンくらいの人が往き来するんだよ」
「えっ、八千万人も!?」
「ゴブリンの数を把握してんのか…」
人混みを縫うように進みながら、入り口のパンフレット通りに進んでいくと…行列の換金所。
仕方無く並ぶ事にした。
「えーっと…そこまで高額じゃないなら名前と電話番号だけで良いのか…レートが…あっ結構稼いだな」
しばらく並び、順番が来たので札束を一つ出して日本円に両替してみた。
一応名前と適当な電話番号を書き、少し待つと七十五万円が渡された。これでなんとかなるだろうと、一度砂漠へと戻った。
「なんとかなったな…後は身分証か…でもその前に…」
「その前に?」
「次元の歪みを捉えたから、行ってくるよ」
「うん、私はその場所に居たら駄目そうだから、ここで待っているね」




