慈悲と天異界へ。
「なぁ慈悲、これからどうするんだ?」
「別に、今まで通り好きに生きるさ」
「そうか、暴れ過ぎると見習い女神様が困るからほどほどにな」
「見習いねぇ…一度会っておきたいな。連れてけ」
秋を抱えた慈悲が家から出て、天異界へ向いたいと圧力を掛ける。特に断る理由もないので、家を仕舞って天異界へと転移した。
______
「いらっしゃい。秋、慈悲」
天異界の最上階に転移してきた秋と慈悲を、キリエが出迎えた。
毒酒が隅っこで三角座りをしながらこちらを眺めているのは、触れない方が良いと判断した。
「慈悲、見習い女神のキリエだ。あと…何処かに他の皆も居ると思うから、仲良くなー」
「よろしく」
「おう…宜しく……んー?」
慈悲が秋を下ろし、キリエをまじまじと眺める。至近距離から眺め、その後はぐるりと周りながら眺めた。
キリエは表向きにはビクビクする訳にもいかないので、内心絡まないでー…と念じていた。
「…何?」
「ん? 昔、似た奴に会ったなーと思ってな。親族なのか気になったんだ」
「似た奴?」
「あぁ…銀髪で黒い槍を持った女だよ。一撃でやられたから覚えてんだ」
「……ルルって人?」
「おっ、知ってんのか? あいつ強えよなー」
ふむふむと、慈悲がキリエを眺め…キリエは少し誇らしげに笑った。
「お母さんは、凄く強いんだ」
「お母さん? ふーん、あいつ娘居たんだな」
「ねぇ…お母さんは、何処に行ったか解る?」
「んー…ルビたんに武器を売ってからは知らねえな。聞いてみたらどうだ?」
「ルビたん?」
キリエが首を傾げて、あっ…と中心にあるデスクへ行く。
そしてマイクを取り出した。
≪業務連絡ー、業務連絡ー。シルヴィ、アイ、紅羽。最上階に集合ー≫
「乙珀、おいでー」
「なーに?」
乙珀が秋から出てきて、キリエと慈悲を眺める。
キリエは乙珀に手を振り、慈悲は乙珀をヒョイっと抱えて眺めた。
「……ふむ。琥珀の魔王…ルビたんの分体か」
「そうだよー。慈悲さんは、パパのお嫁さんなの?」
「嫁? くくっ、そんな訳無い。身体だけの関係だ」
「大人の関係だねー」
「……」
慈悲と乙珀が会話を始め、キリエが秋を見詰めているとシルヴィ、アイ、紅羽がやって来た。
「キリエ、どうしたの? あら?」
「ねぇ紅羽、秋ったらまた増やしたわよ」
「そうだな。秋は慈悲をペットって言っていたから、ペットプレイか?」
「……」
「あぁ皆悪いね。ちょっと合体して欲しいの」
「私達はまだ成体じゃないから、あの金色の剣がないと合体出来ないわよ」
「金色の剣か、じゃあ俺が世界樹の所に行って来るよ!」
秋は逃げ…いや、世界樹の所に転移していった。
「ウフフ、逃げたわね」
「あぁ、逃げたな」
「逃げたねー」
______
世界樹の元へ転移してきた秋は、広場に到着。
歩いて世界樹に近付くが、途中で立ち止まった。
「あっ……やべっ、忘れていた」
秋は天を仰いだ。
前方に立ち塞がる、黒いメイド服の女性。
金髪青目の整い過ぎた顔。
両手に持った双剣を構えて、敵対的な態度だが…
よく見ると、黒い縄で亀甲縛りをしている。
「侵入者…死ね」
「…レイちゃん」




